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ぼくたちの冒険をはじめよう。【オリジナルストーリー】

どこへ行こうか

どこへ向かえばいいのか

流されるままに

進んできたこの船は

目的地を見失い

針路をとる力も尽きた


ただただ漂い

広大な海に包まれて

浮かんでいた


そうしてどれくらい経ったか

何度、夜明けが来て

日が沈んだか

お日さまの陽にあてられて

月の光に照らされて

それでも漂いつづけ

流れに任せるうちに

ようやく見知った島を見つけた


そうだ

わたしは知ってるぞ

ここには前も来たことがある


そうか

わたしはようやく戻ってきたのだ

己の路を見失うくらい

懸命に周りを見てきた

そしていつしか

己がどこにいるかも

分からなくなり

疲れたのだ


ただただ浮かび

漂い続ける静寂のなか

そっと己の内に問いかけた


本当はどこへ行きたいのか


そうして浮かんでいるうちに

ぼくは満たされた

周りが見渡せるようになった


そして思い出す


ぼちぼちでええんよ

間合いをまちがえなきゃそれでいい


そう言った船長の言葉を


そうだった

疲れるまでやってはいけないのだ

くたびれるくらいがちょうどいい


ぼちぼちで

ちょいとがんばって

くたびれたら休んで

またちょいとがんばって

それでいいんだ


俺もやっと船長の言葉が

沁みるようになってきた


見知ったその島は

かつて船長が連れてってくれた島だ

ぼくがぼくを

最初に取り戻した

思い出の島だ


ここまで長い旅路だった

決して楽ではなかった

けど楽しいときもあったんだ

ありがとう、船長

あなたとの思い出が

道標になった


己に問い続ける暗闇の中で

小さな静かな声に

耳を傾けて

灯る明かりを標に

ここに戻ってこられた


この〈ぼく〉という島に

自ら戻ってこられたから

わたしはやっと俺という船を

操舵できる


わたしは

俺に乗って

己というコンパスとともに

やっとぼくになれる


わたしは悟った

船長はわたしを導いてくれたが

この船を操る主は

ぼくだった

船長、ここまでガイドをありがとう

これからはぼくが船長だ

まかせてくれ


さぁ、船出の時だ

ぼくたちの冒険をはじめよう






素人の思いつき物語ですので、
緻密さには至らない部分があるかと思います。
悪しからず。
ファンタジーとしてお楽しみください。




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