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カラン、カラン。

カラン、カラン。

「おめでとうございまーす!」

そこは、いつかの旅行で歩いたレトロな商店街のようだった。

ハッピを着たお兄さんが、鐘を鳴らして叫んでいる。
商店街の福引きだろうか。
そちらに目を向けると、
これまた懐かしみのあるガラガラ抽選機が机には置かれていた。

ここはどこだろう。夢の中だろうか。

少し歩いてみると珈琲の良い香りがする。
ここ最近、ゆっくり珈琲を飲む時間もなかったなぁ。

香りにつられて歩いていくと、THE喫茶店な見た目のお店があった。
店名も【THE きっさ】。
それがなんとも面白くて、この喫茶店で珈琲を飲んでみたくて、扉を開けた。

カラン、カラン。

喫茶店らしい鈴の音が私を迎えてくれる。

「いらっしゃいませー、お好きな席へどうぞ~」

初めてくる喫茶店。
どこに座ろうか迷い歩く。

私は窓際の席を選んだ。
磨りガラスから差し込む光が
楽しめる席だ。

机に置いてあるメニューを見る。
珈琲があった。
そうだ、これが飲みたいんだ。

「いらっしゃいませー、何になさいますか?」
「珈琲ください、ホットで。」
「当店、玉子サンドがお勧めですが、そちらもご一緒にいかがですか?」
「うーん、じゃぁ、それもお願いします。」
「ありがとうございます。しばらくお待ち下さいませ。」

そういえば、お腹もすいていたんだ。

ふよふよ漂う光をみながら私は思い出していた。光はキラキラしている。

「おまたせしました~」

美味しそう。良い香り。
美味しい、美味しい。
珈琲も玉子サンドも、食べるとどこかホッとする心地になる。美味しかった。

お腹いっぱいになって、
しばらく光を見つめていると、

カラン、カラン。

氷がとけておちる音がした。
一番最初にもらったお冷やだ。

「あぁ、ずっとこうしていたいな。」

だけどもう行かなければいけない気がして、
少しだけ残っていた珈琲とコップに半分は残っていたお水を一気飲みした。

お会計を済ますと、店員さんに福引券を渡された。
「いま、商店街で福引きしてまして、良かったらご参加下さい。」

あぁ、さっきやってたやつだな。
「ありがとうございます。ごちそうさまでした。」

カラン、カラン。

入ってきた時と同じ鈴の音で送り出される。

福引きかー、いってみるか。
いまなら、一等も当たる気がする。

ハッピのお兄さんを見つけて、抽選券を渡す。
「あ、ありがとうございます!ガラガラ回しちゃって下さい!」

ガラガラガラガラ…ぽん!

でたのは白い玉。

「あー、残念、参加賞のポケットティッシュです。また、ご参加下さいね!」
「あ、ありがとうございます…」

まぁそうだよね。
白い玉でポケットティッシュ。
定番すぎる結果に苦笑する。

「あぁ、そういえば髪切りに行きたいんだった。」
ポケットティッシュにはこの商店街にあると思われるお洒落そうな美容院の広告があった。
「あ、その美容院だったらここまっすぐ行って右手にありますよ!」
私の小さな呟きに、元気なハッピのお兄さんが教えてくれる。

ちょうどいいし、美容院にも行っておこう。
お兄さんに会釈をして、まっすぐ歩きだす。
「また、福引きにきてくださいね~」
元気なお兄さんに手を振られ、送り出される。

いい人だな~

美容院に行ったらまた戻ってこよう。
今度は私もカラン、カラン。の鐘がききたい。

カラン、カラン。

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あまおと
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