稀咲の匂い
「あははっ、確かに」
僕の指摘に、稀咲は笑顔の同意を見せる。
「噛み合うね、話。ちょっとおもしろくなっちゃうくらいに」
「やはり稀咲もそう感じるか」
もらった同意も心地よく――
その心地よさがさらに疑問をふくまらせてくる。
「なんでだろうな。僕らは全く立場を違えるものであるのに」
「そう、だね」
稀咲の指がくるくる動く。
指揮者のように――いいやあるいは、実際にそうして思考を整頓しているのだろうか?
「……立場を違えているというのはつまり、
同じ対象に興味を抱いていることでもあるよね?」
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