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3分で読めるレイルロオドのお話「すずしろのエッセイ」 & 字コンテに見る文書削減のポイント

わたくしの好きな言葉に

Writing is Rewriting

――書くこととは直すこと――

というものがあります。

これは推敲――文章を練って練って練り直していくことの重要性を端的に表した言葉です。

で。
リライト、推敲の基本は――「削減」です。

1:まずは書きたいように書く

2:冗長な部分、重複している要素等を削っていく

3:削ったものを読み直し、不足が生じてしまっているようなら書き足す

4:満足いくまで2&3を繰り返す

というのが、わたくしの考える「ライティングです」。

で。

いまわたくしは、webtoonの文法に沿うよう、
冗長すぎるネームを修正していく、という作業を進めております。

いきなりネームをいじるより、字コンテレベルでの修正を先に行っておいた方が楽なので、
字コンテの方を例として「リライト」「推敲」の実例をご紹介したいと思います。

まずは次に修正にとりかかる、#11のシーン1のオリジナルの字コンテをご確認ください。

基本は「削減」。
なので、削れそうな部分を探していきます。

最初に目につくのはC3です

【双鉄】僕の部屋なら布団ふたつをらくらく敷ける

【日々姫】ばってん

これは削れます。
削ってもまったく問題なくお話つながりますし、なんならテンポを落としているだけです。

ので、行ごとまるっと削ります。

次はC4&C5。
【ハチロク】 もちろんのことでございます
【ハチロク】 わたくしは、双鉄様の所有物ですので

この「もちろんのことでございます」という受けは無い方が、ハチロクが『それを当然こととと受け止めている』感じがむしろ強まります。
ので、セリフとしては「もちろんのこと」――を削り、絵としてはSDドヤ顔ハチロクを削ります。

次に目につくのがC7 or C8 です。

【日々姫】ん~~っ

【日々姫】それならそれで構わんと! ばってん

これはひとつにまとめられそうです。

絵としては

>日々姫、頭をぐしゃぐしゃかく(顔不要、頭頂部と手のみ)

>日々姫の背中+悔しそうにもどかしそうにぎゅっと握られてる右拳

となっていて、「頭をぐしゃぐしゃ」で日々姫の葛藤を示しているのですけれど。

「すぱっと物分りよく諦めて、けど本当は悔しくもどかしい気持ちを表してる」方が、日々姫のキャラ性をすっきり出せそうに思います。
ので、C7もまるっとカットします。

ついで気になるのがC11-C12 です。

「呼び捨てでよい」という日々姫の言葉に、
ハチロクは双鉄に許可を求めてから応じます。

この行動は非常にハチロクらしいのですが、反面、テンポを落としてしまってもいます。

ので
「ハチロクらしさを維持しつつ、テンポを改善する」方策を考えますと、

『双鉄のセリフをカットし、双鉄がうなずく一コマ』を挟み、そこにハチロクのセリフを被せる――という形でいけそうに思います。

で、C15の日々姫の受けもいらないですね。

ここはハチロクの「おやすみなさい」で閉めておいてまったく問題ないです。

と、そんな感じで修正した字コンテがこちらとなります。

あとは実際ネームにしてみて間とか絵の大きさとか調整してメリハリつける感じになるのですが

「推敲の基本は削ること」であるのが、なんとなくおわかりいただけるのではないでしょうか?

削ったものに付け足していくのは、めちゃくちゃ簡単でございますので。

まとめます。

「書くこととは直すこと」

「直しの基本は”削減”」

「削減すべきポイントは、『冗長(なくても意味が通じる)』『重複(ダブってる)』」

「削りすぎてニュアンス変わるようなら、ニュアンス補正できるよう直す」

という感じです。

少しでもどなたかの参考になったり、反面教師になるとこあれば幸いです。

そんな流れでございますので、短いお話の方も「推敲」をテーマにしたく存じます。

既存レイルロオドの中で執筆に一番苦しみそうなすずしろを主人公にしてみたいかと。

■すずしろ■


万岡鉄道C12 67専用レイルロオド。
女優としての立ち位置を確立しながら本業でも頑張り続ける、
日ノ本で唯一の「女優レイルロオド」。
レイルロオド界屈指の人気者であるので、コラムやエッセイの執筆なども依頼されるのだが、
演技とちがってその方面の才能は極めて乏しいため、いつでも四苦八苦させられている。

■ラン■ 


高嵜鉄道D51 840専用レイルロオド。
美形揃いのレイルロオドの中でも際立って丹精な顔立ちから「プリンス・オブ・レイルロオド」の異名を持つ。
その特質から広報関連に起用されることが極めて多い。
それが鉄道復権に役立つのなら、とランも納得した上で、華麗なる宣伝塔の務めを果たし続けている。

■「すずしろのエッセイ」■

(あらすじ)

エッセイ執筆の依頼に苦しむすずしろ。
広報誌などへの各種記事の掲載をらくらくこなしている(ようにみえる)ランへと、
執筆のコツを尋ねます。

///

こんばんわ、女優レイルロオドのすずしろです。

この雑誌――映画秘法でのエッセイ連載もなんとかかんとか3回めにたどり着きました。

第一回で、お芝居について。
第二回で、映画とTVについて。

すずしろ、がんばって書いたんですけど――
三回目でもう書くことなくなっちゃって!

いや、それはすずしろの、レイルロオドとしてのお仕事。
鉄道関係のエッセイだったら、ネタになりそうなお話結構あるんです。

でも、映画秘宝の読者さんの何%が、マニアックな鉄道ネタを理解してくれるかな……って思ったら、ちょっとやっぱり、そこには踏み込めなくって。

だから、ランさん――
ランさんはみなさん、知ってますよね?

TVだけじゃなく、銀幕にだって出てくることがある、超有名レイルロオドさんですから。

そのランさんに、すずしろ相談してみたんです。

だってランさん、結構いろんなところに記事とかエッセイとかコラム書いてて――しかも面白いから!

「エッセイとかって、どうやって書いてます?」

って聞いたらランさん。

「時代遅れと笑われてしまうかもしれないがね! 紙とペンでだ!!!」

って、あのいいお声で、自信たっぷりに!!

「いや、それはそうかもなんですけど、すずしろが聞きたいのは道具のことじゃなくってですね」

って、悩みの詳細説明したら、ランさん、惜しげもなく教えてくれちゃうんですよ。

ランさん――すずしろもですけど――旧帝鉄の出身で。

帝鉄って、巨大組織でしたからね。

広報担当にも、元新聞記者さんとか、元作家さんとか、けっこうごろごろいて。

ランさん、そういう人たちに指導うけてたんですって!

で。異口同音に教えてくれたポイントが

「書くこととは削ること」だそうで。

重複とか、冗長なとことかを削って削って。

そうして残った骨になったものが「書きたい本質」なんだから――

あとはその本質を一番輝かせるように、最低限の装飾を足してあげればそれでいい……みたいな話で。

すずしろ、もうめちゃくちゃうんうんうなずいて、
「試してみよう!」って、この原稿、そのやり方で書いてるんです。

あ!

「そのわりに、文章の無駄多くない?」

って思った鋭い人、います? 

正解です! それ、正解なんです。

あのですね。
すずしろ、感心して削ってみたら――

エッセイのね? このご依頼でいただいた「1000文字以上」の制限を、ぶっちゃけ下回っちゃったんですよ!!

だからすずしろ、削ったのまた戻してこれで――

これでようやく! 制限文字数、突破です!!!

;おしまい

///

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