
汽子と紅と冬のはじまり
「おひさー、汽子っち。って、わ!?」
あら? 紅嬢のただでさえ丸い目が、さらにまあるくなってしまいました。
いったい何にそれほどびっくり
「もこもこだね、汽子っち! 毛玉みたいですっごくかわいい!」
け、毛玉。
かわいいとの評価は嬉しいのですけれど――紅嬢の価値観の中では、そうですか。
毛玉はかわいいものなのですね。
「褒めてもらえて、光栄ですわ」
ですので、お辞儀も身体をまるめて。
ただそれだけで、紅嬢は、もっとにこにこ――かわいいですわね。
「汽子……老朽化のせいでしょうか。ここ何年か、ことのほか寒さが身にしみてしまって」
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