3分で読めるレイルロオドのお話「りいこといよの残り三月」+WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第42話「過去からの絆」ネーム&字コンテ(全)
10月です。
9月後半はわたくし、めったなことでは書かないキャラの何物かを書くことに邁進しておりました。
迎えた10月はレヱル・ロマネスクサミット2024がございます。
CFをご支援くださいました(ありがとうございます!)
皆様におかれましては
「参加予定アンケート」というものが取られております様子ですので
どうぞご回答のお手数いただけますよう、謹んでお願い申しあげます。
そしてまた、10月には鉄道の日もございます。
国内最大級の鉄道イベントである「鉄道フェスティバル」――今年はお台場で行われるようで
賑やかな催しになりそうです。
また今年は東海道新幹線開業60周年イヤーということで、関連イベントもいくつも開催されました。
コロナ禍によって開催されなかったり規模を落としていたりだった鉄道イベントが、目に見えて元気を取り戻してきたこと、大変うれしく思います。
『レヱル・ロマネスク』もその波に乗れたらいいなぁ、とこころより思いますので――
ともかくこつこつ、できることをひとつひとつ頑張っていきたく存じます。
その「できること」のひとつであるWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネームと字コンテの公開、
今回までで第42話「過去からの絆」の全シーンのネームがまとまりましたので、まとめて公開させていただきます
ネームと字コンテはメンバーシップ限定コンテンツとなりますが、
それに先立つアバンタイトルはどなたにも無償でお楽しみいただけるようしておりますので、
よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
そしてこちらもどなたにも無償でお読みいただける記事となります
「3分で読めるレイルロオドのお話」の今回作は
「一年、残り1/4」をテーマに書いていきたく思います。
登場するレイルロオドは、いよとりいこ。
タイトルは
『りいこといよの残りの三月』です。
三月は「みつき」とご発声いただけましたら。
お気がむかれることございましたら、どうぞお読みください。
■いよ■
いよかん鉄道甲1形1号蒸気機関車専用レイルロオド。
大規模災害にトラウマでもあるのか、
楠海トラフ地震警戒情報が発令されて以降、どうにも調子を崩し気味。
■りいこ■
頭部鉄路5号機関車専用レイルロオド。
通称「虫愛ずるレイルロオド」。
虫さえまわりにいれば=実質いついかなるときでも調子を崩すことがないため、不安定なところで安定しているレイルロオドともいえる。
//////////////////////////////////////
『りいこといよの残りの三月』
……いよ、声、泣きそう。
こんなのりいこ、聞いたことない。
「……もう、今年はグズグズのダメダメぞね」
「ダメなんてことない」
だってりいこ、ちゃんと聞いてる。
「いよは毎日のお仕事、しっかり無事故でこなしてるんだから」
「無事故ゆーても、ヒヤリ・ハットが、いよ自身でも信じられんくらいおーいぞね」
ヒヤリ・ハット。
りいこはほとんど毎月一度は経験してる。
……ほとんどに含まれない月なんて、二度も三度も。
「そうなんだ」
でも、いわない。
りいこといよじゃプロ意識が違いすぎることはわかりきってる。
りいこのひくーい基準はいよには、なんのフォローにもならないことも。
「四國、地震でワヤになるかもしれんて情報に触れて。
それからずーっと怖くて怖くて、怖さで集中力欠いてしもーて……」
こっくり、頷く。
電話ごしだけどわかってる。いよにならちゃあんと伝わるって。
「坊っちゃんに相談しても、どがいな本を読んでも、ネットの情報あさってみても。
不安は全然消せのーて……このままじゃったら、今年どころか来年も――」
「(ガチガチガチッ)」
「!!!?」
息を飲む音。
それからゆっくり、不思議そうな声。
「何の音なん? いまのガチガチ」
「オニヤンマのモノマネ。
オニヤンマが笑うとしたら、あんな感じに顎鳴らすのかなって」
「なんでいまオニヤンマのもの真似したぞね?!」
「いよが、来年の話したから」
「???」
「来年の話をすると鬼が笑うって、マスターがよくいってるから」
「ふざけっ――!」
めちゃくちゃ珍しい、いよの怒ったみたいな声。
けど、それはすぐ、苦笑まじりの声にかわる。
「……ふざけとらんのもわかるぞね。りいこのことやき」
「うん、大真面目。
いよが来年の話ししてくれたから、オニヤンマ、ほっとして笑ったの」
「ほっとして?」
「そう。だって来年って、
三ヶ月もある今年の残りを、乗り切らなくっちゃこないから」
「!!!」
「ほとんど全ての虫は、来年なんて迎えられない。オニヤンマもそう。
成虫になったら、寿命は長くても二ヶ月もない」
「…………」
「だから、来年を迎えられるのはすごいこと。
そのすごいことを、いよも、りいこも、
いままでずっと、百回以上繰り返してる」
りいこはほとんど、鉄道のことわからない。
自分の車両と、走ってる路線、組んでるマスター。それ以外のことは知らないし、知りたいなんても思わない。
「繰り返しをただ繰り返す。それがずーっとできるって、本当にすごいことだとりいこは思う」
虫は、死んじゃう。
ほんのちょっとしたことで、死んじゃう。
「生き残ることは、すごいこと」
レイルロオドは違うってりいこ、長いこと思ってた。
けど、本当はそうじゃなかった。
大廃線で――みんな簡単にどんどん廃棄・解体された。
「ひやり・ハットがどんなに多くても、事故ってない。
それは事故の一歩手前で、いよか、いよのまわりの誰かが、踏みとどまれたってこと。
それもとっても、すごいことだって、りいこは思う」
すうって、おっきな呼気の音。
「……いまのままでもかまわんって、そー、りいこは言うてくれとるん?」
いよ、落ち着こうってがんばってる。
「……不安を、消そうとせんでもいいって言うてくれとるん?
鉄路の、毎日の安全を守れるんなら――
こん不安、抱えたままでやっていっても構わないって」
「りいこ、そこまでは言ってない。
そんなに難しいこと言えない。
りいこに言えるのは、もっと全然簡単なことだけ」
昆虫は、子孫を、卵をたくさん残せる。
だから短い寿命でも、命を次々とつないでいける。
廃棄解体されてったレイルロオドはまったく子孫を残せなくって――
けれどそれでも、つながっているものはある。
けれどそれでも、つながってこれた理由なら、ある。
「結果が全て。事故が起こってない以上、いよは大丈夫。
第一の使命を守れてる」
「……安全が――。
安全こそが、第一の使命」
ほーって、すごく長い吐気。
「不安、むりむり消そーとせんで、このまま抱えてもう少し深くつきおーてみるぞね。
第一の使命さえ守れてりゃあええ。そんくらい、スパッといったんわりきって」
「うん」
声、すごくさっぱりした。
この電話は、だからもうすぐ、きっと切れちゃう。
本当は、もう少しだけ話したいけど……
「不安、あばれちゃうときにはまた電話してね。
りいこ、聞くから」
「……りいこ」
「聞いて代わりに――フユシャクの話、たっぷり聞いてもらうから」
「りいこ!!!!???」
あ、すごい。
細かい説明するまえにもうイヤがってる。
いつのまに、いよもずいぶん、昆虫にくわしくなったんだなぁ。
「他の昆虫の話はともかく!
蛾の話とか! たっぷり聞くのはちょっと無理ぞねーーー!!」
;おしまい
//////////////////////////////////////
いかがでしょうか?
うろ覚えの知識なんですが「XXしてはダメ」みたいな否定を、人間の深層心理は理解できないと聞いたことがあるような気がします。
「XXしてはダメ」の詳細を深層心理は理解できなくて「XX」だけをキーワードとして記憶してしまう。
だから「XXしてはダメ」と思えば思うほど、「XX」を強く、無意識レベルでも認識してしまう――的な。
なので「XXしない」ではなく「◯◯をする」というふうに意識の置き換えをするのが、結果的に「XX」をしなくなるためには効果的だ……というような感じのお話だったような。
――なにがいいたいかといいますと、いよにとってりいこは、半ば無理やり「〇〇」に意識を向けさせてくれる、きっとそんな友達なんだろうなぁ、ということでした。
そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。
どなたにも無償でご確認いただける0~7話はこちらで
それ以降のまとめはメンバーシップ特典で
それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
///
【メンバーシップ限定記事のご案内】
『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』
にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。
掲示板では「3分で読めるレイルロオドのお話」の主役レイルロオドのリクエストなども可能です。
また『レイルロオド・マニアックス』の掲載時には、紹介されているレイルロオドの設定画や三面図などの資料で存在するものを公開していきたく思っております。
どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。
【製品版 WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』のご案内】
本noteでネーム連載をしております『レヱル・ロマネスク0』の完成品は、
WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』として順次リリースされております。
よろしければこちらもぜひご覧ください。