3分で読めるレイルロオドのお話「ハチロクのささやかなのぞみ」&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第11話シーン4ネーム&字コンテ
現在ネーム連載中の
『レヱル・ロマネスク0』の第11話「ハチロクののぞみ」
シーン3のネーム&字コンテはこちらで
今回新規掲載のシーン4はこちらです
ハチロクが自分ののぞみを探り当て口にする――
口にできるようになるシーン。
ここのところは、ようやく(今のわたくしが理解している)
「WEBTOONらしい見せ方」が出来たのではないか、と感じております。
絵を並べ、セリフをつける、ではなく。
絵とセリフとで流れをつくる――みたいな感覚ですね。
メンバーシップ限定記事とはなってしまいますが、
もしよろしければご確認いただけますととても嬉しく存じます。
ともないましての(こちらはどなたにも無料でお楽しみいただけます)短いお話の方も
「のぞみ」をテーマにして書いてみたいと思います。
もしよろしければ、どうぞご笑覧いただけますと幸いです。
■ハチロク■
旧帝鉄8620形トップナンバー機8620専用レイルロオド。
現所属は御一夜鉄道。
マスターのためにどこまでも尽くす忠実なレイルロオドだが、自身の希望のありかをあまりよく把握できない。
■「ハチロクのささやかなのぞみ」■
(あらすじ)
珍しく菓子をつまむ双鉄。
そこから生じたなにげない会話は、
”今の”ハチロクののぞみを浮き彫りにするのです。
///
「うふふっ」
「なんだ? どうした」
「いえ、珍しいことと思いまして。
双鉄様が、お菓子を嗜まれるご様子は」
「ああ。僕は覚えていなかったのだが――」
先日の乗務後、客車内を巡回していたときに拾った切符。
改札をしているポーレットに「落とし物だ」と渡したことが、
その切符の落とし主だった少女を助けた形になったそうで……
「お礼だと言っていただいたのだ。
日々姫と真闇姉とわけあおうかと思ったのだが……」
「そういうご事情でしたら、双鉄様がお一人でお召し上がりになられるように――と?」
「!!」
驚いた。真闇姉と日々姫に口々いわれたことを、ハチロクもそのまま口にしたゆえ。
「うむ。ゆえ、一人でいただいているわけだ」
ハート型をしたチョコレートのアソート。
大した量でもないゆえに、ぽいぽい口に運べはするが――
「しかし、一人で食する菓子というのもどうも微妙に味気ない。
お前が食べられるものであれば、一緒に楽しみたいのだがな」
「まぁ、とても光栄なお誘いを、まことにありがとうございます」
少し芝居がかった一礼。
「けれどご存知のとおり、わたくしは石炭とお水しか食せませぬし」
「うむ」
「それに、例えいただけたとしても。
そうしたお礼のお品であれば、やはりご相伴に預かるのは……」
ぱくぱく、金魚が空句を求めるように、小さな口が何度か動く。
「わたくし、ご遠慮差し上げてしまうかなぁ、と」
「ふむ」
断られてしまったというのに、なぜだか少し嬉しくなって――
考えればすぐ、その理由へとたどり着く。
「随分自然に、お前ものぞみを口にできるようになったな」
「え?」
「少し前までは、なかなか言葉にできなかったではないか」
「ああ――」
ふふっ、と照れくさそうな微笑。
「ですね。『ご遠慮申し上げる』のも、たしかにわたくしののぞみですね」
頷いている。
出会った当初のハチロクであれば、僕の命令を唯唯諾諾と――
例え多少の無理があろうと、飲み込んでいたであろうから。
「ならばどうだ?
今のお前は抱いていないか? 新たなのぞみを」
「新たなのぞみ、でございますか?」
「うむ。無理なものならばどうしようもないが、
僕に叶えられるものなら――せっかく自然に望めるようになったのだ。
叶えてやりたく思ってな」
「!!!」
ハチロクの目が丸くなる。
幸せそうに微笑んで、けれどもすぐに笑顔を消して頬をはたいて。
――そうして、じっと僕を見る。
「左様ですね。新たにひとつ思い浮かびます。
ささやかな、けれどもおそらく、叶うことが難しそうかと思うのぞみが」
「面白そうだな。言ってみてくれ」
「そのお菓子」
「うむ」
「大変かわいくラッピングされ、鮮やかなリボンをかけられ――
切符を取得したお礼としては、どう見ても大げさに思えるお菓子」
「……だなぁ」
言われてみれば、もっともだ。
切符紛失のペナルティの最大運賃3倍料金――
2100円を払ったほうが、おそらく安上がりとなっているだろう。
「しかも、ハート型のチヨコレイトばかりのアソオトを、
なぜ、真闇様は、日々姫が、わたくしが、
『いただき辛い』と感じたのかを」
「ふむ」
「――双鉄様にはぜひ考えて。
叶うことならその理由を、当てていただきたく存じます」
「それがお前ののぞみというなら――」
考える。
じっくり深く、時間をかけて。
ハチロクの、日々姫の、真闇姉の普段の言動――
それらを丁寧に思い出し、ヒントがないかを探し求めて――
そしてようやく、理解する。
「――さっぱりわからん」
;おしまい
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いかがでしょうか?
双鉄様が「ハチロクのささやかなのぞみ」をいつかはきっと理解してくれるようになるかもしれないWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』
無償でご確認いただける0~7話ののネームはこちらとなります。
よろしければどうぞご笑覧ください。
(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)
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