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3分で読めるレイルロオドのお話「しろがねは本当に地味なのか?」&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第18話シーン4ネーム&字コンテ
ライフイベント、という言葉があります。
生涯において経験していくことが予想される出来事――
就学、就職、結婚、子育て、親との死別、老後生活……等々です。
ライフイベントの中には、実際には経験しないものもありましょうし、経験せざるをえないものもあります。
それらに対する金銭的な備えとしては「貯蓄」「保険」などがありますが――
複数のライフイベントが同時にやってきたとき。
結構切実に差し迫ってくるのが「時間」です。
そうしたとき、どう乗り切ればいいのか?
アプローチはいくつかあるかと思います。
無理は絶対禁物でしょうが、身体をある程度作っておいて、いざというとき長時間稼働をできるように備えておけば、ある程度は、破綻回避の可能性をあげられるのではないかな、と存じます。
あるいはお金に大幅な余裕があれば「XX代行」的なあれこれをお願いすることで、稼働時間を代替してもらうこともできるようになるでしょう。
また、精神面で追い込まれないようにすることも大切ではないかと存じます。
視野が狭窄してしまうと「すぐそこにある、実際に取り得る解決法」に気づくことができなくなってもしまいましょうので。
つまるとこ。
大昔からさんざ言われまくってる『心・技・体』。
そのうちの、どれかひとつでも拠り所としておけるのならば――
そこを足場に、乗り切るためのチャレンジを重ねていけるのではないか……
と、現時点のわたくしとしては感じております。
シナリオライターであるにもかからず、現時点でのわたくしの拠り所が「体」なのは、なんだかなぁ、という感じも自分でいたしますけれど。
そんなこんなでバタつきまして更新おくれてしまいましたのですが(すみません)
WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネーム&字コンテ。
先日掲載いたしました第18話「ジェネリック・レイルロオド」のシーン3のネーム
に続きまして、本日はシーン4のネーム&字コンテを掲載いたします。
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なんというか、いまのわたくしがネーム切るなら
「もうちょっと絵的な見せ場をつくろうよ」
と思ってしまう地味~なシーンではございます。
のですがしかし、この地味さが、続くシーン5で誰かが提案する「解決案」を、より輝かせてくれるのかもしれません。
果たして誰が、どのような解決アプローチを提案してくれるものか。
どうぞご期待のほどいただけましたら嬉しいです。
ので。
本日の短いお話のテーマは「地味」でいきたいと存じます。
自分のことを「地味」と思っていそうなレイルロオドの最右翼は「しろがね」のようですので、しろがね主役で。
ラン――ではなく、今回はご近所の「むむむ」を相方に、書いてみたいと思います。
タイトルは「しろがねは本当に地味なのか?」
どなたにでも無料でお読みいただけるお話となりますので、よろしければどうぞ、ご笑覧いただけますと幸いです。
■しろがね■
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關門鉄道EF10 23専用レイルロオド。
海底トンネル輸送のスペシャリスト。
高嵜鉄道のランとは、強い絆で結ばれている。
■むむむ■
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くろがね鉄道D60 66専用レイルロオド。
石炭輸送のスペシャリスト。
しろがねとは門次港駅でちょくちょく顔をあわせる。
■「しろがねは本当に地味なのか?」■
(あらすじ)
門司港の片隅でため息をついているしろがね。
それを見かけたむむむは
「お悩みですかな?」と声をかけます。
///
「……お悩みですかな?」
「あ、むむむさん」
くろがね鉄道のむむむさん。
しろがねに貨車を渡してくれたり、しろがねの運んできた貨車を受け取ってくれたり。
わりと頻繁に顔をあわせるレイルロオドさんです。
「――いえ、とくに悩みというわけではありません」
「とくに悩みというわけではない。
けれども深いため息が出てしまう。となると――むむむむむ」
あ、さっきのため息。むむむさんに聞かれていたんですね。
しろがね、油断してました。
こんなの、だってどうしようもない――
「悩みというより、諦めですかな?」
「!」
「解決不能としろがね氏が認識している類の問題。
それが、しろがね氏の心労となっている」
「すごい……です」
むむむさん、名探偵だって聞いてましたけど――
実際、自分が言い当てられると、ちょっとおっかないみたいな気持ちもしてきちゃいます。
「もしよろしければ、このむむむに聞かせてくれませんかな?
その心労がいかなる箇所から来ているものかを」
「むむむさんに……ですか」
「左様。しろがね氏とは単なる顔見知り。
お互い深く知り合っているわけではない。
解決不能な問題であるならむしろ、そのような相手に聞かせるほうが気楽なものかもしれませんぞ?」
「……確かに、かもです」
むむむさん、鉄道警察からすごく熱心なスカウトを受け続けてるって聞いてます。
それはつまり、能力と同じくらいに「信頼できる」って評価を受けてるってことなんだろうと思います。
「むちろん、聞いた話はむむむの記憶域にだけしまっておきますとも」
「別に、言いふらされても大丈夫なことなんです」
だって、それ。みんなが知ってることだから。
「と、おっしゃいますと?」
「しろがね。地味じゃないですか」
「ふぅむ」
「地味で、真面目で、面白みがない。
だけどお仕事はちゃんと務めきれてますから――それでしろがね、問題ないって思ってたんです」
「なるほど?」
「けど――ランさんと仲良くしてもらって。
ランさん、いつもしろがねに、面白いお話をしてくれたり、素敵な場所につれてってくれたり、珍しい体験をさせてくれたりするから」
「ええ」
「そのときの嬉しい気持ちとか感動とかを、しろがね、もっと上手に表現できるようになりたいなぁって。
ランさんと一緒に、もっと思い切り笑えたり大きな声をだせたりしたら、もっと楽しくなれるんじゃないかなぁって――そう思って」
「――けれど、できない?」
「無理です、そんなの、しろがねには。やろうとしたら――無理やり作ったみたいになっちゃう」
「なるほどなるほど。それでついつい、ため息を」
「……出ちゃいましたね、ため息」
「しろがね氏が、もっと上手に感情表現できるようになりたいのは――
つまり、ご自身と――そうして、ラン氏のため、でよろしいですかな?」
「あ」
そうなんだ、って言われてはっきりしてきます。
ランさんと一緒にいる時間、ランさんにもっと楽しいって思ってほしくて――だから、しろがねはもっと上手に伝えたいんだって。
「そうみたいです――ううん、そうです」
「しかし、ラン氏の立場にたてば――ふむ。今のしろがね氏。しろがね氏自身が『地味で、感情表現が下手』と思っているしろがね氏といる時間は、ですな」
「はい」
「『自分の話を面白がって聞いてもらえて』
『連れていった場所を素敵と感じてもらえて』
『体験を珍しいと喜んでもらえる』――時間ではありませんかな?」
「……」
「でなければ。『いつも』というほどしろがね氏と過ごすことはありえないでしょう。
高嵜と門次港――決して近くはないのですし」
「……かも、です。っていうか、そうなら嬉しい。すごく、嬉しい」
「その上ですな? しろがね氏はご自身で思っておられるより、よほど感情表現がお上手ですとも」
「!? そんなこと」
「あるのですよ。ほら、ご覧ください」
「!!!?」
これ、スマホ――動画、いつの間に!?
っていうか……わ……はうっ……
「ラン氏のことを語るとき、しろがね氏の表情ときたら」
「わ、わかりました。これ――えと――恥ずかしい……」
けど、嬉しい。
ランさんのことお話してるだけでこれなら、ランさんと一緒にいるときは、しろがね――
笑顔で、キラキラ、嬉しさいっぱいの表情で『楽しい』って全力で、伝えられてるんだ。
「から――動画、あの」
「ご理解いただけたようですな? もちろん、すぐに消しましょうとも」
スマホ操作。
見えるように動画――ゴミ箱からも削除してくれる。
「いまの笑顔は、一番最初のお約束通り――
むむむの記憶域だけにしまっておきますとも」
;おしまい
///
レイルロオド同士の、描かれてはいない接点についても描いていければいいなというWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』。
無償でご確認いただける0~7話ののネームはこちらとなります。
よろしければどうぞご笑覧ください。
(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)
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『レヱル・ロマネスクゼロ』の字コンテ掲載時には、その字コンテがネーム化されたもの、および推敲過程でボツになった未公開ネーム画像などがあるときには、そうしたものも公開していきたく思っております。
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