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3分で読めるレイルロオドのお話「機関士たちの熱中症対策」&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第16話シーン2ネーム&字コンテ公開


暑かったり、雨や雷がひどかったりで、なかなかの酷暑であるかと存じます。
大雨、台風等の脅威にさらされている地域のみなさまにおかれましては、被害の少なからんこと、こころより願うばかりです。

さて。

WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネームの方は、

先日公開しました、
第16話『敷かれたレールの食い違い』のシーン1

に続きましての、シーン2を公開させていただきます。


いざ勾配図を作成に! というところでございますね。

こうしてシーン毎にくぐってみますと、なかなか地味な繋ぎのシーンとなってしまっておりますが、
ここからの展開どうぞ、ご期待いただけましたらと願うばかりでございます。

現実社会もネーム中でも暑いばかりでございますので、本日の短いお話は
「熱中症対策」をテーマに書いてみたいと思います。

登場するレイルロオドは、ハチロク。
タイトルは「機関士たちの熱中症対策」でございます。

どなたにも無償でお読みいただけるコンテンツとなりますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。

■ハチロク■


旧帝鉄8620形蒸気機関車トップナンバー機、8620専用レイルロオド。
現所属は御一夜鉄道。
50年前の夏も100年前の夏も経験している。

■「機関士達の熱中症対策」■

(あらすじ)
レイルロオドで暑さに強いハチロクが「暑い」と零す今年の夏。
苦しめられている双鉄、日々姫は、
ハチロクに、過去の機関士達の熱中症対策について尋ねます。

///

「さすがに暑ぅございますね」

「うむっ!?」

ハチロクはレイルロオド。
しかも蒸機のレイルロオドだ。

「暑さに強く作られている……という話ではなかったか?」

「もちろん左様でございますけれど」

ぱたぱたと、ハチロクが左手をうちわにその首元を仰いでいる。

「わたくしがロオルアウトした大詔3年。1914年の8月の平均気温は、
確か26.4度でした」

「なんと! いまより10度も低いのか」

「はい。外気温+罐からの照り返しが機関室内の温度でございますから――」

「当時は余裕で耐えられたものであったとて……
なるほど、10度変わればその余裕も消えてしまうか」

「と、いうことになるようですね」

「ね、ハチロク」

ここより絶気だ。
投炭の手を止めた日々姫が、炭で汚れた顔を上げる。

「当時のハチロクの機関士さんとか機関助士さんとかって、
どぎゃん暑さ対策しとったと?」

「まずはなにより手ぬぐいですね」

言われてすぐに、自分の首元に手が伸びる。
たっぷり濡らしておいたはずだが、もうカラカラに乾ききってる。

「昔も今も変わらんか」

「昔の方が駅数が多うございましたからね、むしろ給水――人の給水は頻繁でした」

駅にとまるたび水筒に麦茶を足してもらい、
手ぬぐいを絞りなおさせてもらう――

長距離、多駅の運転はもちろん苦労も多かろうが、
聞いてるだけなら、実にうらやましい環境だ。

「それから、梅干し」

「塩分接種か」

「はい。はちみつ梅にされている方もいらっしゃいました」

「いまでゆー塩飴の代わりとね」

「と、いうこととなりましょうね」

日々姫の声はからころしている。
いまのうち、僕も一粒含むとしよう。

「あとは普段からの体調管理がとても大事とも伺いました」

「あ"あ"」

日々姫の深い――深く重い同意の呻きが聞こえてくる。

「寝不足の乗務とか、それだけでもうヤバさ3倍増するけんね」

「の、ようでございますね」

ハチロクが大きくうなずく。

「ので、乗務前日にはよく眠ることがとても大事とお伺いしました。
清美機関士はお酒を好まれなかったのですが」

どこか懐かしむような遠い眼差し。

「男性の機関助士さんたちは、それを言い訳に前夜にたくさんお酒を飲まれることも
珍しくなかったようですね」

「それは――」

思わず声が出てしまう。

僕は酒に弱い――御一夜・クマの基準では下戸と見なされてしまうレベル。
ツーフィンガーに薄めなければ、米焼酎の五合瓶も干せないような男であるので。

「翌朝がむしろ厳しくならないか?
酒が残ってしまったなら、喉が余計に乾くだろうに」

「あ……ええと」

懐かしんでいたような視線が突如、宙を泳ぐ。

「そうした場合もございまして――
ですので当然、より頻繁に水分補給を」

「より頻繁? 機関車乗りの水分補給よりも、さらに頻度を増してだと――」

日々姫が赤くなってしまう。
やはり思い当たるのだろう。水分補給が多くなるなら、その分当然――

「長距離・多駅となってくると、駅間が長い場合も多かっただろうと思うのだけれど」

「はい、左様でございます。
けれども当時は、いまよりいろいろ……大変緩うございましたので」

「ふむ?」

「その――乗務しながら、男性の機関助士さんは。
本当にやむを得ないときには、清美機関士にワンスコで頭を叩かれることを覚悟で……あの――ええと――」

空気を求める金魚のように。ぱくぱく。
無言で唇だけが動く。

「――ドレンコックを……その――非常解放、されて」

「ああ!」

なるほど、現代ではとてもできぬが、
大詔当時は、それも許されたのだろう。

「つまりは立ちショ」
「にぃに!!!」
(ばちこーーーーんっ!!)
「ああ!」

目から火が出るとはこのことか――
突如の衝撃にぐわんぐわんとする耳に、どこか嬉しげなハチロクの声が流れ込んでくる。

「清美機関士のワンスコさばきも、まさにこのようなものでございました」

;おしまい

///

いかがでしょうか?

大昔は客車トイレの排泄物は、そのまま空中散布され堆肥となっていたそうです。
時代はどんどん、変化していくものですね。

そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』

どなたにも無償でご確認いただける0~7話のネームはこちらとなります。

よろしければどうぞ、あわせご笑覧ください。

(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)

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