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レイルロオド・マニアックス~紅葉(電車姫~&3分で読めるレイルロオドのお話「あきのもみじ」
こんばんわです。
明日の夜からわたくし人吉入りでございますので、本日まことにバタバタしておりますが、なんとかnote更新の時間を設けることができました。
と、いうわけで本日のnoteは「レイルロオド・マニアックス 紅葉(電車姫)」です。
レイルロオド・マニアックスがどんなものかについては過去記事ご確認いただけましたら。
一番評判いいのは多分「紅」なので、その辺からよろしければどうぞです。
さてさて、以下、紅葉です。
「電車姫」の異名で知られる毛利安芸様と、知られざるレイルロオド「紅葉」との関係がつまびらかにされる今回のレイルロオド・マニアックス。
よろしければどうぞ、ご確認ください。
「紅葉のプロフィール」
個体名称:紅葉
製造時名称:廣島毛利電鉄100形電車101号専用レイルロオド
製造年:1912
製造社:帝都・天之工場
発注社:廣島毛利電鉄
現所属:廃棄済
所属歴:廣島毛利電鉄→廃棄・解体
性格:
活発、快活。乗客と親しく交流し、要望を拾い上げては接客や運用の改善のための意見を提案していた。
トップナンバーレイルロオドらしい気品にこそやや欠けるが、目立たぬところや弱いところへの目配りに大変すぐれ、50機にも及ぶ直系の妹たちを、40年以上の長きにわたり、誰一人脱落させずに第一線で活躍させ続けた。
市電、路面電車をこよなく愛し、各地の市電レイルロオドとも活発に交流していた。
エアクラ自動車隆盛期にも「どれほど低コストいうても、維持できんもんは絶対おるけぇ」と、市電網の維持の必要性を、レイルロオドの身でありながら盛んにPRし続けた。
その結果、「日ノ本の路面電車を代表する存在」として、鉄道業界全体で一目おかれる存在にまで成長した。
長所:
ものすごいおしゃれ。木造車体であった廣電101号の赤色塗装部に、特別なリクエストとして同系色での紅葉模様をあしらわせた。
また、制服も同じ特別仕様とし、車体、レイルロオドとも「廣電の看板」として、大いに市民に愛され、市の誇りと扱われた。
大変に献身的でもあり、なにかトラブルがあったときなどには、救援車として飛び出していくことも珍しくなかった。
言葉よりも行動で範を示すタイプであり、その仕事量は他の追随を許さなかった。
廣電のレジェンド――と人に呼ばれるにふさわしい、まさに傑出した存在だった。
短所:
労を惜しまず、目配りを怠らずというのが染み付いている行動原理であったがために、かつては自らのメンテナンスを軽視する悪癖がみられた。
それを問題視した毛利安芸――当時の廣島毛利電鉄のオーナー(=創業者)である毛利芳就(よしなり)の孫娘――が四方八方手をつくし、メンテナンスの重要性……というか「面白さ」を伝授してくれるレイルロオドを、むりくりに廣電へと短期招聘した。
そのレイルロオドこそが不死鳥博士――ひよこである。
その後、ひよこ、紅葉はともに激動の生涯を歩むこととなるのだが、両者の友情は――紅葉が廃棄・解体されて数十年が経過した今日まで――まったく変わることなく深められ続けている。
紅葉の最後:
大詔三十五年、世界大戦敗戦の直前に廣島に投下された新型爆弾を被爆したことにより、廣電100形101号は、車両・レイルロオドともども全損。ほどなく廃棄・解体されてしまった。
この報に触れた当時の廣島市民の中には――
「101は投下のとき身舎島口(みやじまぐち)を走っていた。そもそも被爆していない」
「101に連れ帰ってもらって廣島入りをした。紅葉に御礼を言いまくったので、間違えるはずもない」
「救援車として休まず走りまくっている101号を見た。あの独特の紅葉模様の鮮やかさに勇気づけられた」
――などの異論を口にするものも少なかった。
が、それらの異論は、廣電関係者から全店的に否定され、「被害甚大な状況下での情報の混乱」であったと扱われている。
「毛利安芸のプロフィール」
6月18日産まれ。
廣島毛利電鉄創業者、毛利芳就(よしなり)の初孫が毛利安芸。
3歳のときに初めて廣電に乗って以来の熱心な鉄道ファン。
偶然にも、廣島毛利電鉄の創業日は明智43年の6月18日であったため、幼いころから『毛利の姫様は廣電の姫様』と、沿線住民の人気を博していた。
性格は活発、社交的、貴族的。
一般市民ともわけへだてなく接し、
かといって毛利の一員であるという立場を見失うこともない、
まさしく理想的な『お姫様』だった。
が、昭和元年。
安芸9歳の夏――つまりは被爆直後に奇病を患い、身体的な成長が完全に停止してしまった。
(公式には奇病であるとされているが、新型爆弾の影響であるという者もいる)
それ以来、大好きな列車旅行をすることもやめ、
ほぼ完全に引きこもった療養生活を送っている。
それにより性格が歪む、などということも一切なく、
毛利の姫、鉄道界の大物としての責務を能く果たし続けている。
毛利安芸は、いわゆる”まいてつ”システムの提唱者としても広く知られている。
「エアクラ車のコストがどれほど下がっても、
所有できない貧困者層は必ずいる。
そうしたものたちの足が奪われてはならぬ」
との思いが発案につながったとも言われている。
好物はもみじ饅頭。
紅葉の柄と杢目の美しい木造品とを好む。飲酒はしない。
何が苦手、何が嫌い、的なことは一切公言しない。
現在、齢80を超えているはずだが、
外見には一切の変化が見られていないとも伝えられている。
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――いかがでしょうか?
メンバーシップ特典記事としては「毛利安芸の真実」をご用意いたしましたので
もしご興味おありの方がいらっしゃいましたら、ご確認いただけますと幸いです。
そんなこんなで本日の短いお話は、もちろん電車姫を主役に描きたく思います。
タイトルは「あきのもみじ」
どなたにも無償でお読みいただけるものとなりますので、もしよろしければご笑覧ください。
■紅葉
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廣島毛利電鉄100形101号電車専用レイルロオド。
廣島電鉄開業時のオリジナル車輌、100形電車のトップナンバーレイルロオド。大詔元年製造。
廣電の創業機の一機として、さまざまな形で廣電を――今日に至るまで支え続けている。
『あきのもみじ』
「くふふっ、久しいの」
――無論、返事のあろうはずもない。
巨大で豪華な、「毛利家先祖代々の墓」。
声をかけている相手の名前は、そこに刻まれてさえおらぬのじゃから。
「ようやく、日が短くなってきたの」
水を飲ませる。
たっぷり、たっぷり。幾度も、幾度も。
あの夏。あの日。
安芸は紅葉に、水をねだろうとしなかったから。
『水を飲めば死ぬぞ!』
――その身をどろどろに溶かしてしまった軍人たちが、いまわの際まであげつづけてくれた、警告の声。
耳にしてなお乾きに負けて水を飲み、バタバタと倒れていく市民たちの中……安芸はただの一滴も、水を飲もうとはしなかったから。
ガラガラに枯れてしまった声で、言葉を、紡ぎ続けていたから。
『紅葉は、安芸に。安芸になって――』
震えながらわらわの手を掴んだ安芸の手を。
パンパンに腫れていた手の力強さを……わらわは今でも、まざまざと思い出すことができる。
「風も随分涼しくなった。
夏には夏の良さもあろうが……わらわはやはり、秋が好きじゃの」
いつの間に傾き始めた夕陽が墓石を茜に染める。
幼いころに、安芸が好んで歌った歌を思い出す。
秋の夕日に 照る山紅葉
濃いも薄いも 数ある中に
松をいろどる 楓や蔦は
山のふもとの 裾模様
「……この裾模様も、安芸が特にと望んだものじゃった」
いまの時代では決して織れない、最上の桑の葉でぶきぶきに太ったお蚕さんの糸をつかった、正真正銘の正絹。
赤と朱とで織りなされた紅葉吹雪は、今日もなお、わずかたりとも色褪せはせぬ。
「安芸の望んでくれた安芸に――わらわは、成れておるのかの」
『安芸になって――毛利を、この国の鉄路を支えて』
……最後の言葉を、震えるあの手を、忘れるなどできようはずもない。
ゆえに、尽くした。懸命に。
毛利に。廣島毛利電鉄に。この国のすべての鉄路に――”まいてつ”達に。
「復興しておる。安芸の愛したこの街も、安芸の愛したこの国の鉄路も」
前者は、まこと鮮やかに。
後者は、亀の歩みの如くに。
「安芸の残してくれた種を、わらわは、広く、広く広くと撒いたつもりじゃ」
その役割も、まもなく、終わる。
毛利グループが立ち上がり、廣電はその持株会社となって――毛利安芸は、相談役へと退いていく。
「……ようやく、じゃ」
思い出す。
はじめて廣電――紅葉の101に乗車してくれたときの、わずか3つであった安芸を。
電車に、車に、踏切に――
見るものすべて、聞く音すべてに興奮し、真っ赤になって鼻血を出してしまった安芸を。
『もみじは、あきのレイルロオド!』 と宣言し、名実ともに世界最初の”まいてつ”となった――紅葉の大事な、たったひとりのマスターを。
「ようやく、散るべき秋(とき)を得たのじゃ」
悔いなど、ほんのわずかもない。
あるのはひたすら深い安堵と――それより深い喜びだけじゃ。
「毛利の安芸は退いて――」
ふわっと、自然な笑みが浮く。
ああ、今きっと、本物の安芸とそっくりの笑顔だろうと、思ってしまう。
「――紅葉はようやく、元の紅葉に。あきのもみじに戻るのじゃ」
;おしまい
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いかがでしょうか?
毛利安芸こと「電車姫」。
その偉業はおそらく、退任後も長きに渡って、語り継がれていくことでしょう。
そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。
どなたにも無償でご確認いただける0~7話はこちらで
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それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
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