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3分で読めるレイルロオドのお話「みくろの影の記憶」&WEBTOON作品 レヱル・ロマネスク0 第30話「体験! レストラン列車」シーン3ネーム&字コンテ
みなさんは、自分が「自分の影」の存在に、いつ気づいたかを覚えてらっしゃいますでしょうか?
わたくしは乳児期の記憶をかなりはっきり持っておりますので――
と書ければ話は早かったのですが、残念ながらさっぱり覚えておりませんので。
うちの赤ちゃんをよっく観察し、いつごろ影を発見するのか、楽しみに見守りたく思っております。
――そういうことを考えていたら、ふっと疑問が湧いてきました。
「成人同等の知能と、職務関連に限定された知識とをもってロールアウトしてくるレイルロオドは、 はたして”影の発見”を、いかにクリアしていくのか――と。
ここ、本日「3分で読めるレイルロオドのお話」で書いてみますので、
もしよろしければご笑覧いただけましたら幸いです。
で、WEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』のネーム&字コンテの方は、
前回更新の
第30話「体験! レストラン列車」のシーン2
に引き続きましての、シーン3
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の更新となります。
双鉄に悩みを相談する日々姫。
ふたりの話の内容が気になって仕方ないハチロク――
そこから生まれる現状打破の一手とは、
といった感じのお話です。
よろしければこちらもぜひご確認ください。
ということで、短いお話。
タイトルは
「みくろの影の記憶」です。
■みくろ■
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旧帝鉄8620形38696号蒸気機関車専用レイルロオド。
姉であるハチロク&8620の修理のために部品提供をし、
いまは雄武田市動物園の職員として働いている。
■ハチロク■
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旧帝鉄8620形トップナンバー機 8620専用レイルロオド。
みくろをとても大事にかわいがっていて、
ちょくちょく電話で話している。
/////////
『みくろと影とハチロクと』
「そうしましたらね? まゆちゃんが――」
うふふっ、ハチロクお姉様、
まゆちゃんとひさしぶりに会えて、とっても嬉しかったんですね。
「もうゲップのお手伝いをする必要がないとまゆちゃんのお母様からお聞きして、そこはさみしく思ったのですが――そんなさみしさを吹き飛ばす大事件があったのです」
「大事件――なんですか? お姉様」
「まゆちゃんが、今日。 わたくしの眼の前で、わたくしが見守っているその瞬間に――”影の発見”をしたのです!」
「わ!」
影の発見――
みくろもはっきり覚えてます。
「とっても素敵なことですね!」
「ええ、もう本当に! まゆちゃんはあちこちふしぎそうに動き回って、
影が自分についてくることをやがて完全に理解したのか――
怒ってしまって、影をぺしっと叩いたのです!」
「叩いた!? ふわわ」
「それで手が痛かったのか、叩いても影が消えも痛がりもしないことにいらだったのか……
ぐずって泣いて、お母様のお胸に戻ってしまわれましたが――
なんとも尊い一瞬でした」
「怒るの……すごいですね、人間さんの赤ちゃん。みくろと全然違います」
「!? みくろは覚えているのですか?
自分が影を発見したときのこころの動きを」
「え? 逆にお姉様は――」
「記憶にない、ということは――」
とんとん。指先で受話を叩いてる音がします。
「……覚えているほど衝撃的な、あるいは有意と思われる体験ではなかったのでしょうね、おそらくは。
影を見つけて、恐らくすぐに光源との関係を理解して、納得して消化たのでしょう」
「……おねえさま賢い」
「というか、それが標準的なレイルロオドの反応なのでは?」
「じゃ、みくろ――標準よりちょっと理解力が劣ってるのかもですね」
「そんなことはありませんよ。そこは断言できます」
「それなら、影に関してだけは。です。
みくろは影、かなりびっくりしちゃったんです」
「でしたらみくろは、わたくしたちよりずうっと感受性が豊かなのですよ」
「そうなんですかね――だってみくろ、フリーズするほど驚いたんです。
そんなものが存在するなんて知識、初期状態ではもってませんでしたから」
「ええ」
「だから……黒いのが何をやってもみくろのことを真似するのをみて、
最初はなにかのバグで、みくろの行動をトレースする……
もう一体のみくろみたいなのがついてきちゃったのかと思っちゃって」
「それは独特な解釈でしたね」
「で、どうしよう。誰かに報告しなくっちゃって歩きだしたら、
段差のところで、影がその段差に沿った形になったのを見て、
『あ、これ、質量を持つ存在じゃないぞ』って認識を修正して」
「素晴らしいことです」
「そこでようやく、周囲を観察することをはじめて――
光源からの光を、みくろの身体が遮ったときに、
遮られて光が当たらない部分が影になるんだな、ってわかって」
「はい」
「それでみくろ。とーーーーっても嬉しくなったんですよ」
「嬉しく……ですか? それはなぜ」
「だって、バグとかなら消さないといけないですけど――
影は消さなくてもいい、光さえあればみくろとずーっと、
いつまでも一緒にいてくれる存在じゃないですか」
「……左様ですね」
「だからみくろ、絶対に絶対にぜーーーーったいに
ひとりぼっちにはならないんだなって思って。
それで、すごく嬉しくなったんです」
「大丈夫ですよ、みくろ」
わ、うれしい。
ハチロクおねえさま――
声でみくろを、優しく抱きしめてくれてます。
「例え闇の中にあっても、影さえ存在できないときも。
みくろには、わたくしが――わたくしたち姉妹がついてますから」
「はい! みくろもう、ひとりぼっちじゃないってちゃあんと知ってます」
例え姉妹が、この先どんどん減ってだぁれもいなくなっちゃったって。
そのときにだってだってハチロクおねえさまが、8620が!
いつでも眩しく輝きつづけてくれるって、みくろはちゃあんと、わかってますから!
;おしまい
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いかがでしょうか?
書いてて思ったのですが、
多分ハチロクは、闇に対して不安を感じる部分が強くて。
一方みくろは、闇の中にもやすらぎがあることを感じ取る能力が強いのでしょうね。
陰キャ、陽キャなどという分類の根本はもしかして、
その辺の”闇に対する感覚の違い”にあるのかもなとも思いましたです。
そんなこんななで、みくろも結構活躍予定のWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』の過去話。
どなたにも無償でご確認いただける0~7話はこちらで
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それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
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