WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第42話「過去からの絆」シーン1ネーム&3分で読めるレイルロオドのお話「不安定なしろがね」
疲労していたりコンディションが悪化したりすると、モチベーションが下がる、というのは確実にあると思います。
では、元気いっぱいで環境の良いときには、バリバリお仕事できるのか――
といわれると、「まぁそういうときもあるし、そうじゃないときもある」としか、わたくしには答えられません。
モチベーションすごく高く、コンディションもすごく整っていて!
「さぁ! やるぞ!!!!」
とお仕事に着手しようと思った瞬間に、前から気になっていたマンガの「120話まで完全無料!」的な宣伝ポストがタイムラインに流れてきてしまい。
「5話かで読んでみよう」が10話になり20話になり――気がつくとモチベーションもコンディションもガタ落ちしている状態で読了してしまっている……
というようなことが、過去に、もしかすると複数回あったりするような記憶がぼんやりと残っているような気がしないこともないからです。
ので。
お仕事をしっかりと、いかなるタイミングであれ遂行していくために大切なのは、疲労をしないことでも、コンディションを整えることでもなく。
ただただ「モチベーションをコントロールする」ことなのではないかと考え至りました。
では、どうやってモチベーションをコントロールすればいいのでしょう?
「モチベーション コントロール方法 簡単」
でググってみたところわたくしには全くピンとこなかったので
「やる気を出す方法 小学生」でググりなおして、やっとピンと来るアドバイスを見つけました。
>10. 終わりの時間や範囲を決める
これです。
締め切り間際になればがんばれる、のは100%間違いないので、それを小規模にやる。
「XX時までに書ききる。書ききれなかったら今日はそれ以上絶対に書いちゃダメ」
的に、その日の状態にあわせて、自分でルールを設定してみるのです。
この「絶対に書いちゃダメ」というのはわたくし的にはかなり焦らされるワードですので――
それをうまく使えばあるいは、モチベーションを強制的に引き出すことができるのではないでしょうか?
早速明日からこちら、試してみたいと思います!
で、こちらもモチベーション&クオリティ高く臨んでいきたい
WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネームと字コンテの方につきましては、
今回から第42話「過去からの絆」の内容を1シーンずつご紹介してまいります。
本日はシーン1となりますね。
ネーム・字コンテはメンバーシップ会員さま向けの公開となりますが、
それに先立つアバンタイトル部はどなたにも無償でお読みいただけますので、もしよろしければご笑覧いただけますと幸いです。
で、本日の短いお話は「やる気」をテーマに書いてみたいと思います。
常にやる気に満ち持ちているトップスタア、ラン。
気分は揺れがちなしろがねが、見習いたくて話を聞く――というような内容になるかと思います。
タイトルは「不安定なしろがね」
どなたにも無償でお読みいただけるお話となりますので、よろしければどうぞご笑覧ください。
■しろがね■
關門鉄道EF10 23専用レイルロオド。
海底トンネル輸送のスペシャリスト。
仕事能力は極めて高く、それゆえ自己評価が大変厳しめ。
■ラン■
高嵜鉄道D51 840専用レイルロオド。
旧帝鉄の一大看板であった「プリンス・オブ・レイルロオド」として広く知られる。
その立居振舞は、まさにスタア。
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『不安定なしろがね』
「……なにかあったのかい? レディ・しろがね」
「!」
さすが、さすがはランさんです。
電話ごしなのに、さっきまであれほど楽しく会話していたのに――
しろがねが小さな悩みを抱えてること、スパって見抜いてくれました。
「しろがね――不安定な自分を改善したいって思ってるんです」
「レディ・しろがねが不安定?」
「はい」
お仕事に対するモチベーション。
ランさんはいつだって、どんなときだって絶対めちゃくちゃ高いです。
落ち込んでる顔なんてみたことない。
ため息一つ聞いたことない。
それに比べてしろがねは……
「一週間くらいまえです。マスターと喧嘩している後輩に、しろがね、注意したんです。
『仕事に影響が出ているからなんとかしたほうがいい』って。
そうしたらその子泣きだしちゃって……」
「ああ――それは大変そうだね」
「逆にそれがきっかけで、その子とその子のマスターは仲直りしてくれたんです。
けど……その子のマスターが今度は、しろがねのマスターにクレームをいれたみたいで、マスター同士が喧嘩みたいになっちゃってて」
「おやおや」
「しろがねがマスターにご迷惑をかけちゃったって……
それがずーっと気になって、申し訳なくて――
ごめんなさいって伝えたらマスター、『しろがねは少しも悪くない』って言ってくれるんですけど、でも」
「ひっかかりを抱えてしまったから、不安定になっている感じなのかな?」
「はい。それでランさんみたいになりたいってしろがね思ってたところにちょうど電話をもらえたんです」
「なるほどね。まずレディ・しろがねはマスター氏のおっしゃるとおり、全くなにも悪くない」
「そうですか?」
「レディ・しろがねは關門鉄道の最専任にして、エースだ。
後進の指導も職務だし、その指導内容も適切だ」
「けれど――泣かせてしまって」
「それは受け取る側の問題なんだよ、レディ・しろがね」
「え?」
「後輩ちゃんは、マスターと喧嘩して、それが仕事に影響するほど深刻なものになってしまって、いっぱいいっぱいな状態だった。
コップに水を、なみなみと満たしているようにね」
「あ」
「レディ・しろがねの注意の仕方がどうあれ――そこに注ぐものが醤油であれ赤ワインであれなんであれ。コップの水は必ず溢れ出したのさ。
だからこれは、レディ・しろがねではなく受け取りる側の問題にすぎなかった、ということになるんじゃないかな?」
「――ランさん、すごいです」
しろがねの注意の仕方の問題じゃなく……強いていうなら、注意のタイミングが問題だった。
ギリギリのタイミングで声をかけちゃったから、注意が泣き出すきっかけになってしまった――
「多分、きっと、そうだったような気がします」
「納得してもらえたようで嬉しいよ。同じように、マスターさん同士が喧嘩のような状態になっているのも、マスターさん同士の問題だ」
「!」
「もともとの関係性が正常であればそもそも、レディ・しろがねのマスター氏にクレームがつけられることもなかったろうからね」
「……考えてみると、そうですね」
だって、そもそもの原因は後輩とマスターさんが仕事に支障が出るくらいに喧嘩しちゃってたこと。
注意で泣かせちゃったことだって、文句を言うならしろがねに直接――って、普通ならなるような気がする。
「わざわざしろがねのマスターにクレームを入れにいったのは、もともと折り合いが悪かった、から」
「その可能性が高いようにランも思うよ。いずれにせよきっかけは小さいことだ。
レディ・しろがねのマスター氏がその場で謝罪をするだけで、問題は綺麗に収まっただろう。
――もともとの関係性が健全なものであったのならね」
「もともとこじれかけていた関係性が、しろがねの一件がきっかけになってこじれた。
けど――それもなみなみのコップの水だったから……しろがねの一件がなくても、別のきっかけでこじれてた?」
「その可能性は極めて高く思えるね。だから、レディ・しろがねが、レディ・しろがねとマスター氏との関係性について思い悩むことに大きな意味はおそらくないよ」
「……」
多分、これもそのとおりだって思います。
だって、マスターはいつもどりに接してくれて……なのにしろがねが一人で勝手に、恐縮しちゃってる状態だから。
「だから、レディ・しろがねになすべきことがあるとしたら――
「……ごめんなさいを繰り返すんじゃなく、しろがね、マスターに聞いてみます」
「っ――。なにをだい?」
「マスターが、喧嘩しちゃってる後輩のマスターさんと、今後どういう関係になりたいのかを、しろがね、聞きます。
で、関係改善とかがもしもマスターの望みなら、しろがねは、できる範囲でそのお手伝いをしようって思います」
「素晴らしいよ! レディ・しろがね。ランが言おうとしていた以上の答えに、自らたどり着くなんて!!」
「ランさんが上手く導いてくださったおかげです」
……やっぱり、すごい。あこがれる、ランさん。
こんな面倒なお話なのに、親身になって聞いてくれて――
答え、しろがねに自分で導き出させてくれた。
だから、聞いてしまいたくなる。
一番最初、電話の前から、しろがねが思っていたことを。
「――ランさんみたいになるには、しろがね、どうしたらいいですか?」
「それはどうにもできないさ。ランは、そう作られたレイルロオドだし、
レディ・しろがねも、そう作られたレイルロオドなんだから」
「え!?」
確かに、レイルロオドは被造物です。
ランさんもしろがねも誰かに作ってもらったものですけど――
「『そう作られた』……って。そんな設計意図通りにできあがるようなものじゃない気がします。多分ですけど、レイルロオドって」
だって、りいこさ――――例えば ”昆虫大好き、鉄道はそんなでもない”、というようなレイルロオドが存在したとして。
それが設計意図通りのできあがりなのだとしたら……設計した方はあまりにも狂っているとしか結論づけられなくなってしまうから。
「ああ、省略しすぎた言い方だったか。ならば――うん! 改めようとも!」
ばっと、受話器の向こうから衣擦れの音。
ランさん、きっと素敵なポーズをとってくれてる。
「ランはそういう個体としてロールアウトしてきて、周囲にそうあることを役割付けられ、ラン自身もそのようにあることをずーっと望みつづけている。その結果が、過去の、今のランなのさ」
「望み……続けている」
現在進行形。
スターであることを命じられ、だからスターであることを望み続け、結果、スターで有り続けている。
ランさんは、ご自身をそう定義されてます。
「そうあり続けられることを、ランは決して偶然だとは思っていない。
ロールアウトしたその瞬間から、ランとランの周囲とがこころを一つに、ランを『そうあるように』と成長させていったのだから」
「――そういう意味で、『作られた?』」
「だよ。レディ・しろがねも、同じなんじゃないかな?」
……頷いてます。
共感が届く距離じゃないけど、TV電話でもないけれど、ランさんに伝わってるってわかります。
「しろがねも、しろがね自身が、マスターが、会社のみんなが望むしろがねに育っていってる」
「素晴らしい! そう、『育っていってる』だ。今もリアルタイムでね」
「はい」
「レディ・しろがねはランのこと、『安定している』って評価してくれたけれど……それは例えば、ランが汽笛。それも電気式の汽笛だというだけのことなのさ」
「電気式の?」
「ああ、常に一定の大きな音しか響かせられない。けれど、それゆえに安定している」
「……なら、不安定は――」
「例えるのならばピアノ。繊細な音から強い響きまで、望むがままに奏でられる。ランの目には、それがレディ・しろがねだと映っているよ」
「ランさん……」
不安定だから、幅を持てる、変化できる。
しろがね、いままで一度もそんなふうに考えたことありませんでした。
「……ランさんにそういってもらえると、不安定なのも長所に聞こえてきちゃいます」
「もちろん! 大いなる長所だとも!!」
「――はい」
繊細な音。それをしろがねは奏でられる。
なら、ランさんに憧れるんじゃなく。
ピアノが無理やり、汽笛に変わろうとするんじゃなくって。
「しろがねが、だったら、もっと完成度の高いピアノを目指します」
不安定なところも、考えすぎるところも
――素敵な和音を奏でるための、音の一つにできるよう。
;おしまい
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いかがでしょうか?
ランにもまぁまぁ繊細なとこはあると思うのですが、
それをマスターにしか見せない、他の誰にも決して見せないからこそ、
スターとして輝き続けられるのかもしれませんね。
そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。
どなたにも無償でご確認いただける0~7話はこちらで
それ以降のまとめはメンバーシップ特典で
それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
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【製品版 WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』のご案内】
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