
3分で読めるレイルロオドのお話「汽子の夢見るレールの未来」&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第16話シーン3ネーム&字コンテ公開
ここ最近暑い暑いしかいってないのですが、そうと理解っていてもなお他に言葉が出てこないほど暑いですね。
今日は1300頃に屋外にいたのですが、立ってるだけで体力ゲージが減っていくのを実感できる暑さでした。
この暑さの中の、コミケをはじめとするイベント群。
熱中症はもちろんのこと、体力や集中力を喪失しての事故などの発生も多くなろうかと思われますので。
どうぞできるだけ涼しくし、水分塩分しっかりとって、元気に夏をお乗り越えくださいましです。
専門家のお話
によると暑さ対策のポイントは
・前日の飲酒や睡眠不足を避ける
・冷たい水やお茶を持ち歩く
・日傘や帽子で日差しをさける
・日差しを反射できる、白っぽく、かつ熱のこもらないような服装を選ぶ
――だそうです。
「白っぽい服を選ぶ」は案外うっかりしそうなポイントなので、
黒Tでの外出をお考えの方におかれましては、どうぞあらためてご確認いただけましたらと思います。
さて。
WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネームの方は、
先日公開しました、
第16話『敷かれたレールの食い違い』のシーン2
に続きましての、シーン3を公開させていただきます。

https://note.com/railroma/n/n8c92911d7462
勾配図作成を開始した一同。
しかし日々姫がなにかに気づき――というとこでございます。
果たして日々姫が気づいた違和の正体は!
については、次回更新にご期待いただけますと幸いです。
そんなこんなで本日の短いお話は、「気づき」をテーマにしてみたいかと思います。
登場するレイルロオドは「汽子」。
タイトルは「汽子の夢見るレールの未来」でございます。
どなたにも無償でお読みいただけるコンテンツとなりますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
■汽子■
旧帝鉄ホジ6005形ホジ6016専用レイルロオド。
現所属は名児耶鉄路・樺郡線。
日ノ本に最後に残った蒸気動車のレイルロオドとして、日々を大事にがんばっている。
■「汽子の夢見るレールの未来」■
(あらすじ)
酷暑の中の乗務を丁寧にこなしていく汽子。
レールの歪みのあまりの多さに、
徐行しながら、マスターとあれこれを話します。
///
「あ、マスタア」
(キキッ)
言うより先に、減速が開始されています。
レールの歪みは、恐らく乗客のみなさまがおもていらっしゃるよりも、
ずっとよく、遠くからでも目視で認識できるものです。
とは申しましても……
「外気温が40度近くなってしまいますと、樺郡線、徐行、徐行となってしまいますわね」
わずかに10駅。路線総延長も17.6kmの、小さな小さな路線です。
名児鉄の中でももっとも廃止に近いともいわれいるだけのことはあり、
保線も後回し、後回しになってしまっているのが現状です。
「25メエトル長のレールとレールの間の隙間――遊間の長さは確か、摂氏0度で13mmと設定されているのでしたわよね」
マスタアの頷きが、思考をなめらかにしてくださいます。
「レールの温度が40度になったとき、0度のときと比し12mm膨張してしまう」
ですので、レール温度が40度になったとて、1mmの遊間が残り、安全は少しも損なわれない。
樺郡線が開業した1929年には、それで十分、安全猶予が担保された設計でしたのに――
「外気温が40度ともなれば、レール温度は60度にも達してしまいますからね」
だから、遊間が使い切られる。
遊間が零となり、なおも膨張するレールは行き場を失くし、あるいは歪み、最悪の場合は持ち上がる――
「いちいち補修をできれば一番よいのですけれど」
そんな余裕もあるはずないから、目視で歪みをみつかけたら、すぐに減速、最徐行してなんとか歪みを――
(がっとん)
「!」
――大きな揺れを感じつつ、それでもどうにか乗り越える。
この夏はもう、こんな運用ばかりになってしまっていて――
「まぁ、ダイヤが多少乱れたところで、困るお客様もほとんどいらっしゃらないのが……
不幸中の幸い、ではございますわね」
とはいえ、この輸送密度の薄さでは――
空気というより、熱気輸送が常態となっている現状では、存廃議論が”廃”側にどんどん傾いてしまいましょう。
「利用客減による収入の低下。収入の低下によっての保線の悪化。安全確保のための徐行の増加。それによりダイヤ乱れの常態化。信用度低下に伴っての利用客減」
採算に苦しむ路線が、どこでも陥る悪循環。
なんとか、どうにか、少しでも、改善のきっかけを見つけることができるのならば――
「あ」
思わず飛び出してしまった声に、マスタアが反応してくださいます。
いえ、そんな、大したことでもないのですけれど――
「汽子たちのホジは、蒸気道車――蒸気機関を使って動く機動車ではありませんか」
動輪まわりの構造はつまり、蒸気機関車と変わらないわけで。
蒸気を使って動輪をまわしている以上、シリンダア内には冷えた蒸気が水となってたまってしまっているわけで。
「徐行時、レールの歪みを越えるとき、ドレンを切ってドレン水を排水してみてはどうかなぁと汽子は、思いついたのです。
ドレン水温がレールとほとんどかわらなくとも、蒸発の際、気化熱を――」
(ぐいっ! ざばっ!!!)
「!」
論より証拠といわんばかりに、マスタアが早速ドレンを切ってくださいます。
樺郡線は単線で、この列車は折返し運転。
ドレン排水で線路が果たして縮むかどうか――数十分後には、実証試験を行えてしまうこととなります。
「ありがとうございます、マスタア。どうなっているか、楽しみですね――え?」
もしも実験がうまくいくなら、将来的には……
「うふふっ! 夢のようなお話ですね」
将来的には、気動車であれ電車であれ機関車であれ。
排障器にミストの散布装置をつけて、レールの歪みを走行毎に補正する――
「そのような未来が来るならそのときにはもう、汽子とホジとはお役御免になりましょうけれど」
それでも、夢見てしまいます。
鉄道がいつか復権し。
そんな未来が――きっと訪れてくれるようにと。
;おしまい
///
いかがでしょうか?
汽子が夢見る未来と少し形は違いますけれど、
レール側のミスト散布はすでに実現されておりますので
中野駅をご利用の際には、ぜひぜひご注目くださいましです。
そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』
どなたにも無償でご確認いただける0~7話のネームはこちらとなります。
よろしければどうぞ、あわせご笑覧ください。
(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)
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『レヱル・ロマネスクゼロ』の字コンテ掲載時には、その字コンテがネーム化されたもの、および推敲過程でボツになった未公開ネーム画像などがあるときには、そうしたものも公開していきたく思っております。
どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。