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夏夜鉄道4号蒸気機関車専用レイルロオド『かよ』のショートストーリー&3分で読めるレイルロオドのお話「りいこといよと鉄道虫」

加悦鉄道4号機関車の加悦SL広場(京都府)からポッポの丘(千葉県)までの移送費用を賄うためのクラウドファンディング。

そのご応援をするために生まれたレイルロオドが「夏夜鉄道4号蒸気機関車専用レイルロオド かよ」です。


かよのご紹介は過去記事などでも行っておりますが

この度、わたくしが執筆いたしました「かよ」のショートストーリーが、クラウドファンディングの「活動報告」ページにて公開されました

上記でお読みいただくことが理想的なのですが、そちら、環境によっては「文字が右カラムまで溢れてしまう」という現象に襲われてしまうようですので、
こちらでもご紹介させていただきます。

タイトルは

『かよの旅路』 でございます。

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『かよの旅路』

見慣れた景色。

廃棄解体の瞬間まで、ここでずーっと過ごすんだって思い込んでた、いつもの景色。
”ずーっと”なんてありえないこと、今まで何度も、何度も何度も思い知らされてきたはずなのに。

「それでも――っきゃっ!?」

衝撃。
軽いものだけど背中からだからびっくりした。

振り返るとぺこぺこ何度も下がる頭。
初めて見る顔。

「問題ありません。少しびっくりしただけで。それより……あなたは、観光客さんですか?」

――言ってしまってすぐ思う。
そんなわけもなかったな、と。

だってここ。
夏夜SL広場。
閉園しちゃって、もう何年も経ってるんだから。

「……ああ、クラウドファンディングでの支援を検討くださってる方なんですね」

それでかよを――かよのSL、夏夜鉄道4号蒸気機関車をわざわざ見学に来てくれた。
ありがたい話、とても。

そうだ、ぼーっと郷愁にふけってる場合じゃなかった。

新天地"ポッポの丘"での新生活をはじめるためには、移送のためのクラウドファンディング、絶対に成功させなきゃなんだし……
そのためには少しでも多くの方にご支援いただくことが必須。
ご支援の輪を広げるためには……そう。

「それならかよのこと、かよの4号機関車のこと、少し自己紹介させてください」

――知ってもらうこと。それがなにより一番大事。
良かったことも、良くなかったことも、全部残らず、正直に。

「かよが製造されたのは、1921年のことです。
河崎造船所の兵後工場でのことです。かよの機関車がロールアウトした、その1日後にレイルロオドであるかよもロールアウトしました」

当時は、かよはかよじゃなかった。
かよの4号蒸気機関車も、4号蒸気機関車じゃなかった。

川東(かとう)鉄道――1920年に開業して、1922年6月に長乃県の屋城-須阪間を開通させて営業運転開始した、千馬川の東岸を走り抜けていた鉄道の、
創業期をささえるべく発注された蒸気機関車一両――川東鉄道三号蒸気機関車と、そのレイルロオド……個体名称も与えられない"3号機関車レイルロオド"だった。

川東鉄道は、沿線のみんなが望んで敷設された鉄道。
いまでは珍しくない上下分離方式のさきがけ――用地の所得・維持の費用を地元が負担していた鉄道だった。

だから、とても愛されていた。
"鉄道"そのものが、とても、とても。

「川東鉄道は、とても愛された鉄道でした。たくさんのお客さんたちを運んで、運んで。沿線はいつでも賑わっていて、笑顔にみちてて。
だから、電化も、びっくりするくらい早かったんです」

1926年。屋城駅-木嶋駅間が全線電化され、電車の運用が開始。

同年、9月30日。
1923年に開業し、1926年6月28日に権胴駅-須阪駅間を全線電化で開通させていたばかりに長乃電気鉄道を川東鉄道が合併し、"長乃電鉄株式会社"に社名変更。

「川東鉄道が長乃電鉄になって。電車たちが元気に走り回るようになると、蒸気機関車の仕事はだんだん少なくなってきました。
それで、『まだまだ活躍できる場所へ送り出してあげよう』っていってもらえて――1934年にかよ、夏夜鉄道に移籍して。それで名前をもらったんです」

新しい名前。
川東鉄道三号蒸気機関車は、夏夜鉄道4号蒸気機関車に。
そうして、川東鉄道三号蒸気機関車専用レイルロオドは、「かよ」に。

「かや鉄道の、よんごう機関車レイルロオドだから、かよ。とてもシンプルで覚えやすくてかわいい名前で、かよ、いっぺんに気に入りました」

夏夜鉄道でも、川東鉄道時代と同じく、旅客中心での運用を任されて。
数年して、沿線でのニッケル鉱石採取が始まると、かよの4号機関車は、旧帝鉄の後東工場に送られた。

「大改造を受けたんです。、ニッケル鉱石をたくさん積んだ貨車を安全に牽引できるようにって、これ――」

ずしり、スカートを持ち上げる。
ふわりじゃなくて、ずしり。

「――かよの改造スカートにもくっついている大きな大きな空気溜め。これを大胆に外付けして、空気ブレーキを使えるようにしたんです」

自動空気ブレーキ。
圧縮空気を常に籠めることによりブレーキを開放しておくから、万一の損傷や列車分離などの事態があっても、空気が漏れることによりブレーキが自動的にかかる、安全性の極めて高い制動システム。

「ニッケル工場が沿線で稼働するようになってからは、工場線での輸送や工場内での入換でのお仕事が中心になりました。
こつこつこつこつ、15年くらいかな? 働き続けてたら、4号、じわじわじわじわ、補修が効かなくなってきたんです」

メンテナンスをどれだけしても最終的には回避できない、煙管の腐食。
火室内部の、リベット類の劣化。

「大規模な交換整備でしか対応できない老朽化が表面化して。けど、大規模な交換整備のコストに値するほどの仕事がもうできなくなっちゃてた4号機関車は、だからそのまま、休車、廃車の道をたどることになりました」

けど、4号機関車は、かよは、見捨てられずに済んだ。

「……『夏夜鉄道60年の歴史の中で、一番活躍した蒸気機関車』って、評価してもらえたんです。だから、廃車後もここ――夏夜SL広場で4号、ずっと静態保存してもらってました」

かよも、SL広場の職員としてそのまま働かせてもらえて。

「賑わってたんですよ? SL広場。観光バスが休憩に使ってくれてた時代とかもあって。レストランとかグッズショップもたくさんの笑顔にあふれてて」

ふわっと、当時のあの温かな空気を感じた気がして、さみしい気持ちになりかける。
けど――問題ない。

だって、レールは途切れてないから。

「だからきっと、移転先の”ポッポの丘”でも、新しい笑顔に会えるって、かよ思ってるんです」

遠い昔にかよが客車で運んだ子供は大人になって、夏夜SL広場を支えてくれた。

夏夜SL広場で遊んでた子供も大人になって、今、かよと4号機関車が新天地に旅立てるよう、たくさん努力してくれている。

「ずっとずっと続くレールの、新しい目標――終着駅で、そこからさらに続く未来への、始発駅」

"ポッポの丘"
かよと4号機関車は、そこでまた、新しい乗務を開始する。

「そこへの旅路を――もしよかったら、どうか支えてくださいね?」

;おしまい

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――いかがでございましょうか?

かよの進んできた、そしてこれから進みゆくレールをご応援いただけますようでしたら、クラウドファンディングへのご支援ご検討いただけますと、大変うれしく存じます。

そしてこちらもご応援いただきたく、またご応援いただくにたる面白い作品となんとしても仕上げていきたいWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』のネーム&字コンテの方が、前回ご紹介のシーン2

に続きましてのシーン3を公開させていただきます。

双鉄が意識を取り戻すと、しかしハチロクの姿が――

というシーンでございますね。

メンバーシップ特典記事とはなりますが、
もしよろしければ御確認いただけますと幸いです。

で、ネームがシリアスなので、短いお話はお気軽にりいこ&いよで書いてみたいと思います。

タイトルは「りいこといよと鉄道虫」。

こちらはどなたにも無償でお読みいただけるものとなりますので、どうぞご笑覧ください。

■りいこ■


頭部鉄路5号機関車専用レイルロオド。
「虫愛ずるレイルロオド」の異名を誇る。
昆虫大好きで、引退したら世界をめぐって昆虫採集しまくるのが夢。

■いよ■


いよかん鉄道甲1形1号蒸気機関車専用レイルロオド。
りいこの親友。
昆虫は大の苦手だったのだが、最近はちょうちょやトンボくらいならかわいいと思えるようになってきた。

『りいこといよと鉄道虫』

「はー、りいこと話とると落ち着くねぇ」

楠海トラフ地震。

来るかも来るかもって思いながらも毎日の暮らしを続けてくの。
いよみたいな気にしぃの性格には地味に継続ダメージもろーてしまうきに――

「りいこは、世の中になーんの不安も不満もなさそうで羨ましいぞね」

「不満はあるよ。もっと虫取りしたい」

「あー」

「あと不安もある。愛用のルーペが壊れそう」

「ルーペ? ぞね?」

「うん。ルーペ。虫眼鏡」

「ああ! そんルーペ」

普段は耳にせん言葉やき、ちくとつながらんかったぞね。
ゆーか

「使うん? 虫眼鏡って昆虫採集に――って、あ! もしかして昆虫観察に使われちょったから虫眼鏡ゆー名前なん?」

「っていう説もあるよ。絵戸時代に凸レンズが海外からわたってきて。それを筒の先っぽにはめて、筒の中に昆虫をいれて観察した――のが、虫眼鏡の語源だって説」

「ほえー、虫関連のこと、まっことよー知っちゅうぞなもし」

「で、もう一つの質問の答えは、『もちろん使う』。ハエトリグモみたいなちっちゃい昆虫だとか、蝶や蛾の鱗粉なんかを観察するときには必須だったから」

「だった――って、今は違ごちょるん?」

「ん。カメラのマクロレンズ使って見たり撮ったりなことがだいぶん増えたから。でも、夜とかはまだルーペ使うよ」

「あー、写真がよーとれんよーになるん?」

「ん。で、フラッシュ焚くと台無しになる感じのときとかは、やっぱりルーペ」

「ゆーと……例えばホタルとか?」

「ホタルをルーペで観察するのは難しすぎる。飛ぶし、警戒心が強いから」

「そーなん? ほんなら、他のどんな昆虫」

「さっきもいったけど、蛾。蛾の観察は夜に限る」

うぁ……。
知識としては、蛾も蝶々も似たようなもんじゃってわかっちょるけど――

「蛾ってなるとまだいよ的にはハードル高いぞね」

「そうなの? ルーペで見てみたくならない?」

「ならんぞね! ホタルゆーなら、ちくとチャレンジしてみたかった気はするけど」

「ホタル、そんなにいい?」

心底不思議そうな声。
りいこ的には、ホタル、あんまり刺さらんのじゃろーか。

「いいでしょお。淡く光って綺麗やき」

「光るとこがいいんだ。なら、いる。光る昆虫で虫眼鏡でも観察できるの」

「おお! どんな虫ぞね!?」

「Railroad worms。鉄道虫。りいこも一度は実物を見てみたい、憧れの虫」

「レイルロードワーム」

名前だけでもさすがにこれはテンションあがりまくるぞね!

「ゆーことは海外の?」

「そう。ブラディルとかに生息してるって聞く。っていうか、動画送ろうか? どうして鉄道虫って呼ばれてるか一発でわかると思う」

「見たいぞね!!!」

「じゃ、送る。――んしょ」

きたきた……えーと

「おおおお! すごいぞなもし! 綺麗ぞね! 夜行列車の窓みたいぞね!!」

「でしょ? しかも動きがゆっくりだから、ルーペでもじっくり観察できそう」

「これは……虫が苦手なワシでも見てみたくなってしまうぞなもし」

「じゃ、りいこが見に行けるタイミングきたら、いよも誘うよ」

あっさり、りいこが言うてくれる。
それが当たり前のことのように。

何年先になるかも、叶うかどうかもそもそもわからんお話じゃのに。

「夜だけじゃなく、昼間の姿もかわいいから、きっと絶対楽しい観察になると思うし」

「おお! 昼間の姿はどげなもんぞね?」

「さっき送った動画の最初にでてくるよ?」

「ん? あ、これ途中からの動画だったぞね」

ほいたらシークバーで最初に戻――って!!!?

「ね? かわいいでしょ?」

「かわいくないぞね! ガチいもむしぞねーーーーー!!!」

;おしまい

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いかがでしょうか?

鉄道虫。わたくしも見てみたくございます。

そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。

どなたにも無償でご確認いただける0~7話はこちらで

それ以降のまとめはメンバーシップ特典で

それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。

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【メンバーシップ限定記事のご案内】

『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』

にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。

掲示板では「3分で読めるレイルロオドのお話」の主役レイルロオドのリクエストなども可能です。

また『レイルロオド・マニアックス』の掲載時には、紹介されているレイルロオドの設定画や三面図などの資料で存在するものを公開していきたく思っております。

どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。

【製品版 WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』のご案内】

本noteでネーム連載をしております『レヱル・ロマネスク0』の完成品は、
WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』として順次リリースされております。

https://x.gd/rNyIT

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