WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第41話「過去の疵」シーン1ネーム&3分で読めるレイルロオドのお話「紅の焦り」
9月はじめのnoteは嬉しいご報告から書き始めることができます。
レイルロオド『かよ』
の設定・デザイン等でご協力させていただいております
『加悦鉄道4号機関車移送のためのクラウドファンディング』
が、いよいよプロジェクト開始となりました。
レヱル・ロマネスクファンのみなさまにも早速のご支援いただけておりますようで、ありがたい限りです。
こころより御礼申し上げます。
わたくしの方でも「かよ」関連のストーリーなど水面下で書いておりますので、
CF期間中になんらかの形で公開されることがあるかも? とも思っております。
どうぞご期待のほどたまわれましたら幸いです。
CF返礼品についての詳細などは、CF主催である
加悦鉄道4号機関車保存会さま
https://x.com/Kaya_steam_04
の公式Xで紹介されておりますので、もしよろしければそちらもチェックいただければと思います。
さて。
こちらもこつこつ掲載続けておりますWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』のネーム&字コンテの方は、今回から
第41話「過去の疵」を1シーンずつ公開してまいります。
当然、最初はシーン1からとなります
双鉄が、ハチロクが、それぞれ過去の疵と向き合っていく話となりますね。
ネーム&字コンテはメンバーシップ特典となりますが、それに先立つアバンタイトル部はどなたにも無償でお読みいただけますので、よろしければそちらだけでもチェックいただけますと幸いです。
で、短いお話は「9月」をテーマに書いてみたいと思います。
登場するレイルロドは……たまには紅汽子といたしましょう。
タイトルは「紅の焦り」
こちらはどなたにも無償でお読みいただけるものとなりますので、どうぞご笑覧ください。
■汽子■
名児耶鉄路ホジ6005形 ホジ6016専用レイルロオド。
蒸気動車レイルロオドの最後の生き残り。
紅とはレイルロオドサミットを通じて親友となった。
■紅■
旧南颯鉄道キハ100形キハ101専用レイルロオド。
活発で負けん気が強く前向き。
性格的に対極にある汽子とはなぜだか馬が合う。
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『紅の焦り』
「汽子っちーーーーーー」
電話に出るなり泣きそうな声。
汽子の可愛らしいお友達が、どうやらめげているようです。
「あらあら紅嬢。なにかございましたの?」
「なんにもなかった! だからヤバいんだよぉ」
「???」
「もう! 9月! 一年の三分の二が経過しちゃったわけじゃん!?
なのにボク! 今年なーーんのもできてなくって、だからめちゃくちゃ焦ってるんだよ」
「そうでしたの」
紅嬢がなにもしてない――なんてこと、あるはずが無いと思うのですけれど。
実際、頻繁なときには3日連続。閑散期でも二ヶ月に一度はかかってくる紅嬢からの電話の内容を思い出すだけでも、
なにも、どころか波乱万丈な今年を過ごしているとしか……
「そうなんだよぉ」
けれども声は、どんどん上ずってしまっています。
「今年はさ、相方の家族にトラブルが連発しちゃって。そしたら相方、看病だなんだで忙しくなるわけじゃん?
紅、そのサポートに追われまくっちゃった感じで……」
「以前にも何度か聞かせてくれましたわね、そのお話」
公私ともがっしり支え合うパートナー同士。
大変なご状況下だからこそ、絆の強さが伝わってきて、汽子、すばらしいお話だと聞いていたのですけれど。
「だからさー、グッズ開発とかイベント企画とか、そういうことぜんっぜんできてなくって!
み鉄、このままじゃどんどん御鉄に差をつけられちゃって、汽子もれいなに差をつけられちゃいそうなのに、今年後半も全然状況改善できそうになくって!」
「……でしたら、汽子も同じですわね」
「へ?」
「汽子の走る蒲郡線は、正真正銘の閑散路線。今日廃止になっても明日廃止になってもおかしくないありさまですのに……
汽子もやっぱり、イベント企画もグッズ開発もなにもしておりませんもの」
「なにもしてないなんてことあるわけないじゃん!」
泣きそうに上ずっていた声に一転、ぐっと力が――
受話器越しであるというのに、紅嬢の熱が伝わってくるほどの力が、こもります。
「蒲郡線を支えているのは、汽子っちのホジ6016に乗りたいっていうファンの人たちの落としてくれる定期外収入がメインなんでしょ?
で、沿線のわらべの国にいって、わらべ汽車にも乗るっていうのが、もうすっかりマニアの定番ルートとして定着してるわけじゃない」
「はい」
「だから汽子っちたち、わらべの国のわらべ汽車たちの整備点検のボランティアもしてるっていってたじゃんか!
ただでさえちょー手のかかるホジ6016のメンテにくわえてなんだから――それを維持するのが精一杯になるだろうし、
それを維持しつづけることが、最善のイベント企画になってるんだってば」
「そうなのでしょうか?」
「そう! 断言する!!! 実際、わらべの国の方ではお土産グッズ定期的に増えてるんでしょ?
なら汽子っちは、いつもの乗務をいつもどおりにすることで、沿線のみんなが発展に向けて進んでく、その下支えをしてるんだってば!」
「でしたら。紅嬢も同じですわよね? なにもしていないなんてこと、あるわけがありませんわ」
「えっ!?」
「紅嬢のマスターさん……相棒さんを支えることは紅嬢にしかできないかけがえのないお仕事ですし。
それがあるから、紅嬢たちの毎日の乗務がまわってる」
「それは――そうだけど」
「そういうふうにみかん鉄道がきちんと維持され続けているから、みかん鉄道にはオリヴィ嬢を派遣するだけの余裕が生じる。
御一夜鉄道の発展にオリヴ嬢が寄与しているのなら――御一夜鉄道の、ひいては協業にあるみかん鉄道の発展を、紅嬢こそが下支えしてることになりますもの」
「ううぅ……汽子っちにいったことそのまま返されちゃった」
「紅嬢は炎ですから。最大限に燃え続けてしまっていたら、きっと燃え尽きてしまいますわ」
「ボクが……炎?」
「ええ。ですから必ず、また燃え盛り誰より輝くときがきます。いまは、そのときを待ち、熱を蓄えておく時期なだけです」
「……保火状態にある石炭だって、仕事してないってわけじゃないか。確かに」
「そのとおりですわ」
「ありがと汽子っち! おかげでめちゃくちゃ元気でた!」
「こちらこそですわ、紅嬢」
「ほへっ?」
――今年もなにもできてなかった。
汽子のような平凡なレイルロオドこそ、毎年毎年、繰り返しその思いに苛まれるのですから。
「紅嬢のおかげで――めちゃくちゃ元気でましたわ!」
;おしまい
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いかがでしょうか?
当然わたくしも「今年なんにもできてない!」という思いに苛まれておりますわけですが……
しかし焦ってもかえって全てが遅れるばかり。
しっかりと地に足をつけ、ひとつひとつ、できることをこなしていきたく存じます。
そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。
どなたにも無償でご確認いただける0~7話はこちらで
それ以降のまとめはメンバーシップ特典で
それぞれお読みいただけますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。
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また『レイルロオド・マニアックス』の掲載時には、紹介されているレイルロオドの設定画や三面図などの資料で存在するものを公開していきたく思っております。
どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。
【製品版 WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』のご案内】
本noteでネーム連載をしております『レヱル・ロマネスク0』の完成品は、
WEBTOON版『レヱル・ロマネスク』として順次リリースされております。
よろしければこちらもぜひご覧ください。