三船栞子は幸せを咬み締める――三船栞子「咬福論」論
こんにちは。かみなりひめです。
世間はもう10月に入ったのですね。
光陰矢のごとしすぎませんかね‥‥?
さて、本日10月5日といえば、
三船栞子さん
お誕生日おめでとうございます!
そんなおめでたいしお誕(?)の本日は、
栞子デザインのシャツにR3BIRTHネクタイで
一日の仕事を乗り切ってまいりました。
そんなワタクシの脳天を朝からつんざく
最強の名曲に出会ってしまったのです。
それこそ、
三船栞子「咬福論」
今回のテーマは「私のラブソング」。
恋人をきっちり管理してそう、とかすみさんに
言われて悩んだ栞子のラブソングです。
某サ終ゲームでの初登場時の栞子さんは、
当時生徒会長の中川菜々さん(優木せつ菜)を
会長の座から引きずり降ろさんとして出馬。
生徒会長の座に座った後は、
生徒が各自の適性に合わせることを強いるなど
自身のエゴ全開のキャラクターでした。
アニメ版に至るとその「強さ」は鳴りを潜め、
文化祭実行委員として中川会長を補佐しますが、
「適性」にこだわる姿は健在でしたね。
しかし、「咬福論」に描かれた栞子は、
それとはあまりにかけ離れたキャラクターを
歌い上げていたのでした。
1. 「幸福」ならぬ「咬福」
さて、タイトルにある「咬福」とは、
もちろんこの曲のためにある造語です。
訓みが「コウフク」であることから、
「幸福」が掛かっているのは自明でしょう。
では、「咬」字の意味はどんなものでしょうか?
また、菅原為長の著とされる古辞書である
「字鏡集」においては、以下の記載があります。
上記を見るに、「咬」字の意味は、「かむ」や
「鳥のさえずり」であることが分かります。
「翠いカナリア」を歌っている栞子にとっては
ある種ピッタリの字ではありそうです。
ここで、「かむ」の意である「咬」字が
用いられている理由は、サビを聞くことで
はっきりと理解できるでしょう。
つまり、歌詞中の「私」は、「あなた」の
首筋を咬むことで「痕」をつけるのです。
どれだけサディスティックな人なのだ、と
思う向きもあるかもしれません。
また、首筋のキスマークは、
多くは執着心の象徴と理解されます。
ゆえに、「私」が「あなた」に執着しているのだ、
と読むこともできるでしょう。
しかし、これは本当に歌詞の「私」、
ひいてはその「私」を歌う栞子の執着心を
あらわすだけにとどまるのでしょうか。
2. 「大好き」をかたちにして
そもそも、この歌詞にあらわれてくる「私」は
どのような人物なのでしょうか。
まず、「私」は「あなた」の存在そのものを
とても大切にしていることがうかがえます。
「あなた」に「あなたらしさ」を求め、
それが「私」自身の手で変化することを
嫌悪し、そして恐れています。
では、そんな「私」が「あなた」の首筋を咬み
「痕」をつけたがるのはなぜでしょうか。
歌詞のなかで答えのひとつとして提示される
のは、「二人だけの秘密」でした。
「二人だけの秘密」を具体化したものの
ひとつが「首筋」の「痕」であるのです。
この「私」にとって、「二人だけの秘密」は
思い出などのように実体を持たないものでは
満足しきれないようです。
比較対象に「運命の赤い糸」が挙げられている
ことから、「目に見える 信じれるもの」とは、
「私」と「あなた」との恋愛関係を証明できる
実体を伴うものであると考えることができます。
3. 相手依存の自己有用感
こうなってくると、
「やはり首筋の痕は、「私」が「あなた」に抱く
恋愛的執着心の象徴だ!」
と読みたくなってしまうでしょう。
もちろん、それもひとつの役割であるでしょう。
しかし、首筋の痕はそれ以外にも大事な意味を
持つモノであると言えます。
次の歌詞を確認してみましょう。
この「咬福論」が一人称視点からの語りで
あることに注意しながら、それぞれの動作の
主体を考えてみましょう。
痕を「上書き」するのは、もちろん「私」、
「気持ち再確認」するのも同様に「私」です。
「大好き」をするのもやはり「私」でしょう。
この「大好き」とは、首筋の痕によって
行われる、「私」と「あなた」の交歓を指します。
ここで注目すべきは、
「あなた」が目線で送るメッセージを
「内緒だ」と解釈するのは「私」自身です。
もちろん、不機嫌そうな顔をすれば、
首筋に痕をつけたことへの恨みなどとして
解釈されるのが普通でしょう。
つまり、「あなた」もそれなりの笑顔で
「私」を見つめ返したはずです。
しかし、その笑顔が「内緒だ」と一義的に
解釈できるかはまた別の問題です。
もしかしたら「いつも君の八重歯は可愛いね」
というメッセージであるかもしれません。
つまり、「大好き」をしていると思っているのは
「私」だけである可能性が留保されています。
であるならば、首筋に痕をつける行為は、
「私」が「あなた」に危害を加えるという
無茶を要求し、それを「あなた」が承認する
ことをもって、「愛情が受け入れられた」と
理解する行為なのです。
言い換えれば、「あなた」に対する「私」の
自己有用感を満たす行為と言えるでしょう。
それを示すかのように、
という歌詞が立ち現れてきます。
この後には再びサビに戻り、首筋に痕をつける
話が展開されていきます。
ということは、首筋に痕をつけることで、
「あなた」も「私」に「大好き」という情を
抱いていることを「証明」するというのです。
首筋に痕をつけるほど咬むという行為を
拒否しないということを、自分への愛情と
読み替えていることに他なりません。
つまり、「咬福論」というこの曲は、
「あなた」を「咬む」ことによって、
「私」の自己有用感を満たし、「幸福」を
“咬み”締める曲なのでした。
4. おわりに
先ほど以下のような説明をしました。
思い返してみれば、このようなかたちで
有用感を満たし、恋愛を実らせたキャラを
ワタクシはもう一人知っています。
『やがて君になる』七海燈子
彼女について述べた記事の中でも、
そこにただよう三船栞子感について
ちょこっと触れました。
担当キャストはもちろん、
両者ともに小泉萌香さんなのです。
小泉萌香演じる生徒会長好きだなワタクシ。
当該記事で、七海燈子のことを「ソウルメイト」
と称していたワタクシですが、これはどうも
三船栞子もソウルメイトのようですね‥‥。
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