だから、あなたは自分自身に問わなければならない
近頃、チャーハンばかり作っている。パラパラなチャーハンを作ることを目標に定めてチャーハンばかり作っているのだ。
パラパラなチャーハンを作るためのヒントは多く提供されているが、それらのヒントからどれを採用するべきか・・・。それは各々に委ねられているし、またそれぞれが自分に合ったやり方でパラパラを目指すべきだろう。
例えば、自分の性格や動作が、割におっとりとしていると自覚がある人なら、それなりのやり方を採用するべきだろうし、動作の機敏さに自信のあるサイドアタッカータイプならば、また違う選択をするべきだろう。
私は、おっとりとしているタイプなので卵をあらかじめ米に混ぜ合わせる手法を採用している。この手法を用いると米はパラパラになり、ベチャベチャのチャーハンを母から提供されていた過去を憎むことになる。母親との過去を大切にしたい人は、あまりチャーハンをパラパラにするべきではないかもしれない。
ただ、どうしてもチャーハンをパラパラにしたいのならば仕方ない。チャーハンを作るときは、あらかじめ卵と米を混ぜ合わせよう。すると、あなたは自分が神になったかのように錯覚するだろう。それほどにチャーハンはパラパラになる。
あらかじめ卵と米を混ぜ合わせることで、米はコーティングされることになる。そう。卵によって。
米と米がくっつく余地が失われるのである。また、本来のチャーハンのように油でコーティングされるわけではないから、ギトギトした油感はまるでないのだ。よほどのノロマでない限り、これでパラパラチャーハンが作れる。
ただ、一つだけ問題がある。卵は米をコーティングするから、卵のカタマリとしての食感は失われることになる。
だが、心配はいらない。この問題を解決することは簡単だ。卵を二段階で投入するのだ。一段階目はもちろん米のコーティングに用いる。それとは別に食感を伴う卵を用意すればい。
米の量にもよるが、卵を2つ使うことが最もシンプルなやり方だろう。もし、お米の量が少ない場合は卵を溶いた後に分ければいい。
そう。米に混ぜ合わせる分の卵と、形と食感を伴う卵に分けるのだ。
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他にも、火加減や具材を投入するタイミングなどを考える必要はあるが、ともかくあらかじめ、卵と米を混ぜ合わせる事が最も重要だ。
そしてもう一つ気をつけなければいけない事がある。これが最も難解であり、なおかつ最初にやってくる試練である。逆に言えば、この最初の試練を超える事ができれば、あなたがパラパラのチャーハンを作る事は容易い。
それは、卵と米を混ぜ合わせた時にやってくる。
卵と米を混ぜ合わせると、なんになるだろう?
そうだ。賢明なあなたはすぐに答える事ができるだろう。それは、「卵かけ御飯」である。あなたは「卵かけ御飯」の誘惑に勝つ事ができるだろうか。そのまま食べてしまってもかまわないのだ。誰も困らないし、むしろ洗い物も減る。食べてはいけない理由が見当たらない。いや、ないのだ。
目の前にある「卵かけ御飯」をわざわざフライパンで炒める事はあなたの欲求によってのみ肯定される。
だから、あなたは自分自身に問わなければならない。「私は、この『卵かけ御飯』を炒めるべきなのかどうか」と。
そこから先は、スムーズだ。ほとんど全ての問題は解決している。
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