精神疾患の予防・改善のための栄養指導

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1)積極的に摂取したい栄養素と食品
(1)ビタミンB群
・ビタミンB1
豚肉の赤身、ウナギ、玄米、ナッツなど

・ビタミンB2
レバー、ウナギ、納豆、卵など

・ビタミンB6
刺身、レバー、鶏肉、納豆、ニンニク、バナナなど

・ビタミンB12
貝類、レバー

・葉酸
緑黄色野菜、葉物野菜、納豆、レバーなど

(2)ビタミンD
キノコ類、魚介類など

(3)アミノ酸
・メチオニン
牛乳、乳製品、肉類、魚、ナッツ、大豆製品、卵、野菜(ほうれん草、グリンピース)など

・チロシン
牛乳、大豆製品、鰹節、しらす干し、乳製品、肉、卵、アボガドなど

・トリプトファン
牛乳、乳製品、肉、魚、ナッツ、大豆製品、卵、バナナなど

(4)脂肪酸(DHA、EPA)
サバ、イワシ、アジなど

(5)ミネラル
・亜鉛
カキ、ウナギ、牛肉、レバー、大豆製品など

・鉄分
レバー、赤身の肉、魚介類、海藻、青菜類、納豆など


2)うつ病の予防の観点から見た食材選びのポイント
(1)穀類
精製度の低いものを選択すること(米なら玄米、胚芽米、麦入りや雑穀入りご飯。パンなら全粒粉やライ麦パンなど)

(2)魚介類
不飽和脂肪酸のDHA、EPAが豊富。タンパク質源としても有効なため、積極的に摂取する。

(3)肉類
良質なタンパク質(アミノ酸)源であり、主要な神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、グルタミン酸、γーアミノ酪酸、アスパラギン酸)の原料となるため、積極的に摂取したい。

(4)野菜
毎食摂取することを推奨したい。特にうつ病患者は葉酸などのビタミンB群の不足が深刻なため、先に紹介しているほうれん草、春菊、小松菜、モロヘイヤなどは、積極的に料理に取り入れること。

(5)乳酸菌
腸内細菌、ならびに腸内環境はストレスに対して大きな影響力をもつ。腸と脳とは密接に関連し合い、良好な腸内環境を保てる。乳酸菌、ビフィズス菌の摂取は、うつ病、不安、身体症状などのストレス症状を減らすと報告されている。

(6)プロバイオティクス
乳酸菌、ビフィズス菌を含んだヨーグルトなどの食品・飲料などが該当する。腸内細菌叢(腸内フローラ)を改善する効果が期待できる。

(7)プレバイオティクス

オリゴ糖、食物繊維などが該当する

3)食事における注意点
(肥満、あるいはその心配がある人については)カロリーの過剰摂取を避けつつ、主食・主菜・副菜・汁物のバランスが大事である。

(1)主食
穀類でのポイントと同様に、出来るだけ精製度の低い全粒の穀物から摂取する。

(2)主菜
魚・肉・大豆製品でタンパク質を摂取する。

(3)副菜
野菜・きのこ・海藻・イモ類を摂取して、ビタミン・ミネラル類の補給を意識する。

(4)汁物
副菜とは別に、野菜・きのこ・イモ類・海藻などを使い汁物を用意すると、より栄養摂取の効率は高まる。汁物は塩分の過剰摂取の問題が生じやすいので、カツオ・昆布などでだしを取るなどの工夫が必要である。

4)緑茶とうつ
緑茶は中国より約800年前に伝来したが、緑茶をもたらした「栄西」は1193年に書いた「喫茶養生記」という本について、「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり。山谷之を生ずれば其の地神霊なり。人倫之を採れば其の人長命なり。」と、茶が健康に寄与することを示唆している。

その後栄西は、様々なお茶の作り方を研究。その数百年後に千利休が茶道を確立している。

日本でも歴史の深い茶の文化だが、NCNP 神経研究所 疾病研究第三部 部長の功刀浩氏が2013年に公開した脳脊髄液試料のデータでは、1日に何回お茶を飲むかが調査されている。それによると、うつ病患者は健常者に比べ、1週間の緑茶の飲む頻度が有意に少ないという結果が出た。

緑茶にはカテキン、カフェイン、テアニンといった薬効の高い成分が含まれる。そのなかで、功刀氏は緑茶に非常に多いテアニンに焦点をあてて研究。前臨床研究により、その効果を調べた。

テアニンは、グルタミン酸と似た分子構造をしている。グルタミン酸は、現在うつや統合失調症創薬の標的分子でもあり、各国で研究が進められている対象である。

功刀氏の実験では、マウスにテアニンを投与したところ、感情情報処理機能が改善させることが判明。つまり、テアニンが統合失調症に有効であるという可能性が示唆されたのである。テアニンを注射したマウスは、強制水泳テストの無動時間が有意に減少し、意欲改善作用が見られたという。

また、テアニンを注入されたマウスの海馬では、脳由来神経栄養因子(BDNF)たんぱくの発現が増加。また培養ニューロンにテアニンを入れると、細胞内のカルシウムが上昇した。この上昇は、NMDA受容体拮抗薬であるMK801、AP5で抑制できたため、NMDA受容体が関与していると考えられる。

つまりテアニンが、グルタミン酸のシステムのモジュレータになるのではという結果が得られたのである。功刀氏は、この結果を参考に臨床試験を実施。テアニンの人における感情情報処理への影響を見た。まだ予備的結果の域を出ないが、テアニンがプレパルス抑制を指標にしてみた感情情報処理機能を、用量依存的に改善することが判明した

いますぐできる打つ予防のための食事の8か条
ここまでの内容を踏まえ、クライアントへの食事指導を行なう場合は、端的に次のことを伝えるように意識したい。

①カロリー(特に糖分)の過剰摂取に注意する(女性や痩せている方の場合、むしろ摂取不足に注意すること)

②主食はできる限り玄米や胚芽米、全粒粉パンなどを選択する

③野菜は毎食十分な量を食べる

④魚介類の摂取量を増やす。週に3日以上が望ましい

⑤肉は鳥胸肉などを積極的に摂取する

⑥豆やキノコ、海藻、果実など食品の品目を増やす

⑦乳酸菌・食物繊維を多く含む食事で腸内環境を整える

⑧食後には緑茶を飲むようにして、清涼飲料水等の飲料を控える

#パーソナルトレーナー
#栄養学

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