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試されすぎた大地から 「全集中の冬」編

北海道札幌の、飲食店への時短要請がようやく終わります。

このまま何もなければ、首都圏での緊急事態宣言の終了に合わせて、北海道の「集中対策期間」も終了。

短期集中のつもりで始まった「集中対策期間」延長に延長を重ねて結局4か月以上続き、

「全集中の冬」になってしまいました。

この間、北海道では、

全国に先駆けて始まった第3波、
旭川での大規模な「病院クラスター」の続出と医療崩壊の危機、
年末年始の再拡大、
道外での緊急事態宣言を受けた対応、
「集中対策期間」および「時短要請」の度重なる延長…

など、さまざまな出来事を経てようやく今に至ります。

ようやく、昨年秋の「集中対策期間」に入る前の水準にまで落ち着きました。

実行再生産数(1人の感染者が何人に感染させるか:簡易計算速報版)もなんとか1を下回っていて、下げ止まりつつも再拡大せず済んでいる、という状態です。

ここでまた完全に元に戻すと、また集中対策始めないといけなくなっちゃうので、対策の「緩和」をどうするかという悩ましい問題はあるものの、

ひとまず「第3波」の振り返りをしても良い時期だと思います。


行き過ぎた「緩和ムード」

くどいようですが、僕はGoToトラベル悪玉説を否定します。
少なくとも、旅行そのものは「(移動先での行動次第で)感染拡大させうる行為」であるものの「第3波の主役」ではなかったはずです。

一方、GoToトラベルは、更なる悪化をさせないために「止めなければいけなかった」と思います。

よって、一時期政治家を含めてあちこち騒がしかった
「GoToトラベルのせいで感染が拡大した」と「GoToは感染拡大と関係ないから止める必要はなかった」
は両方とも間違っていると考えます。

GoToはすっかり政争の具になってしまい、制度設計の改善を含めた冷静な議論ができなくなっていると思います。旅行好きとしては残念な限りです。

ただ、GoToトラベルによる旅行そのものの良し悪し以上に、
GoToトラベル東京追加・地域共通クーポン始動&GoToイート開始のダブルコンボは、過剰な緩和メッセージとして効いてしまったと思います。

10月からの状況は、かなり「明るい雰囲気」があったと思います。

明るいのは良いことだけど、第1波の時の
「都道府県を跨ぐ移動をしないでください」
という呼びかけが裏返しに効いてしまい、

都道府県を跨ぐ移動OK(ただし感染対策を十分講じた場合に限る)」
括弧の中身がいい加減になり、

都道府県を跨ぐ移動OK(つまりその他諸々OK)」
になってしまっていた
のではないでしょうか。

酔っ払って、マスクを外してコンビニで騒ぐワカモノたち。

10人ぐらいの大人数で昼間からおしゃべりするおばさまたち。

僕がちょっと見かけただけでもこの有り様でしたから、全国あちこちでリスキーな行動がとられていたのでしょう。

もちろん、中にはGoToトラベルを使って旅先でハメを外したり、宴会つきの団体旅行というハイリスクな使い方をしていた人もいたことでしょう。

日本社会の「空気」に支配される感じが、第1波(北海道の第2波)では効果的に機能したものの、今回は完全に裏目に出たようです。

それに、GoTo事業そのものにもやはり問題はありました。(【しつこいようですが】感染拡大の主役だとは言っていない)
GoToイートでは同時に10人まで利用できる、という制限は、今思えば緩すぎましたし、GoToトラベル・イートとも、盛り上げムードを重視しすぎて、利用者に注意を促す仕掛けが足りなかったように思います。
あの、コンビニ・スーパー・ドラッグストア・土産屋・駅ビル・カフェ・居酒屋等街角の至る所に貼られた「GoToトラベル 地域共通クーポン取扱店舗」のPOPとかも、雰囲気を賑々しくするのに一役買っていたと思います。

それは素晴らしいこと(よくデザインされていた)なのですが、GoTo事業に「感染拡大を防ぎながら事業を遂行する」という使命がある以上、一般市民への見せ方についてももう一捻り必要だったのかな、と今となっては思います。
あのPOPが悪いというのでなくて、制度全体の中で何とかならないかな、という思いです。

対策強化が遅れた

秋のことを思い出してみましょう。

北海道が定めた警戒ステージ「2」の基準に達しても、知事はなかなか警戒ステージ引き上げを決断しませんでした。(経済への影響を心配するあまり、引き締め作への転換をためらった)

対策の切り替えが遅れたのは全国的な傾向だけど、後の事態が相当深刻だったことと、「集中対策期間」を延々と続けざるを得なかったことを考えると、大きな反省点です。

さらに、対策もマイルドなものから始めて、範囲や強度も「ススキノ地区の飲食店」「狸小路の北側を含まない/含む」「接待を伴う飲食店」「時短要請」「休業要請」と、あの手この手、手を替え品を替えでわかりにくくなったことも指摘せざるを得ません。

それぞれの対策が、どれくらい有効か(再生産数を押し下げるか)の明確な手がかりがない中、手探り、暗中模索だったのは仕方ないとは思うけども。

もっとも、全国に先駆けて冬の流行が本格化した北海道は、他地域よりその決断が難しかったことは否めなません。
それに、流行が本格化した後も対策強化になかなか踏み切らなかった東京都に比べれば早く決断し、早く収束に向かわせられたとは思います。

12月から年始にかけての東京都と国の動きは、双方の「駆け引き」を見たように思います。
小池知事は駆け引きは確かに上手かったし、緊急事態宣言対象地域への協力金「6万円」を引き出して時短要請の実効性を高めたのは見事でした。が、時間的には対策実施が大きく遅れてしまった。
その結果波が大きくなり、おそらくは対策に要する時間も延びてしまったと思います。

ついでに言うと、「6万円」が緊急事態宣言対象地域に限られ、緊急事態宣言を待たずに対策を強化した北海道にもたらされなかったことについては(僕は受け取る立場でないが)大いに不満です。

鈴木知事も小池知事も、大阪の吉村知事も目立ちたがり屋でパフォーマンス上手なところがありますが、
「行政マン」鈴木と「政治家」小池・吉村のカラーの違いがはっきり出たと思います。
それぞれに良し悪しはあるけど、僕は相手を批判するチャンスを窺ったり叩いたり政策を人質にとって対立軸を演出したりして点取りゲームをするより、協力して模索しながら最善を尽くそうとするリーダーの方を選びたいと思います。

「医療提供体制」は時短要請の指標になるか

鈴木知事は、新型コロナの影響の中でも「医療提供体制」を重視していました。

10月下旬頃は、新規感染者数が増加して警戒ステージ引き上げ基準を超えてからも、「入院者数が少ない」ことを理由に警戒ステージ引き上げの判断を見送りました。
一方、2月になって新規感染者数が減少してきても「医療提供体制の負荷の低減」を図る必要があるとして集中対策期間を延長しました。(さらには、支援金を積んだ上で時短要請の範囲を広げた)

重視するのは分かりますが、指標としての「入院者数」や「病床使用率」を、対策を切り替える判断に使うのは本当に良かったのか疑問です。
というのも、「入院者数」(病床の使用数)は、市中での流行より遅れて増減する「遅行指標」だからです。

ついでに述べると、「死亡者数」はさらに遅れて増減します。
感染した人の一部が重症化し、そのうちの一部が残念ながら亡くなってしまう。
この間には数日から数週間の時間の経過があります。
「感染者数が減っているのに死亡者が減ってない/増えている!」と言って、xx地域では感染者数を過小評価しているとか、対策がダメだとかいう意見をしばしば見かけるのですが、時間の経過を無視してこういうことを言うのは見当違いです。

既に散々指摘されているように、流行の立ち上がりは若い人中心。よって感染してもホテルにGO、10日ほどホテル療養すれば回復する。流行が進み、若い人から高齢者に到達してしまうと入院を余儀なくされる。しかも、介護が必要な高齢者の入院はスタッフの負荷が高く、「病床利用率」の数字以上に現場を逼迫させる。

一方、流行が収束し始めても高齢者や重症者の入院は長引くから、感染者数が↘️となっても、しばらくは医療体制への負荷は➡️です。負荷が下がらないことを軽視できませんが、市中での時短要請などの対策はあくまで感染者数を減らしていくためのアプローチ。
医療体制への負荷が➡️のうちに市中感染が再拡大↗️したらもたない、というのもわかりますが、感染者数が減っているのに対策を緩和しない、というメッセージはフラストレーションを招き、次第に「自粛してください」メッセージが効きにくくなってしまう原因にもなるでしょう。困ります。

対策と指標がずれてしまう問題とは別に、入院者数が減らない原因に、回復した高齢者が「コロナだから」という理由でなかなか転院できないという問題も指摘されていました。北海道でそれがどれくらい起きているのは分かりかねますが、「後方支援病院」の役割を確立する、そうした病院への支援をしっかり行うことも「医療提供体制」への対応として必要なことと思います。
本来減らせる数字を減らせないために、無関係な市中の飲食店に我慢を強いる対策を漫然と続けることがないようお願いしたいものです。

機能しなかった「警戒ステージ2」

・振り返ってみれば、北海道警戒ステージ「2」がほとんど機能していませんでした。

北海道の警戒ステージは、国の分科会が定めた警戒ステージと表のような対応関係にあり、分科会ステージ「Ⅱ」北海道警戒ステージ「2」と「3」の2段階に分けています。

(北海道の資料をもとに作成)
2段階に分けるのは良いけど、新規感染者数の目安の、警戒ステージ「2」と「3」の閾値が近すぎます。
新型コロナの場合、新規感染者数の数字は実際の感染から2週間ほど遅れて計上されますから、「2」の目安に達した頃に対策を講じても、変曲点が見える前に「3」に突入してしまいます。

実際、秋に警戒ステージが「2」だった期間は短く、すぐ「3」に移行してしまいました。

先述のように、判断の遅れが対策の遅れを招いた面もあるものの、そもそもの「警戒ステージ」の設計にも見直すべき点があると思います。

ここで、僕が考えているさいきょうのたいさく(かもしれないもの)を書いておきます。
行政や専門家の中の人から見ればとっくに周回遅れの議論かもしれませんが、
少なくとも一般人に見えるところまで出てきていないことは多々あるので、
一般人同士で話し合うためのメモ書きぐらいのつもりで書いておきます。

続く。

(2021年3月5日 一部追記: 
GoToトラベル事業の問題点、遅行指標についての補足等)

さらに追記

3月7日で集中対策期間が終わりました。

鈴木知事記者会見の概要


↑卒業旅行などについて「感染防止策の徹底」を呼びかけたのはvery goodです。

東京の小池知事の「謝恩会も卒業旅行もナシ」ってやつ↓↓
若い人に対して高圧的ですげー嫌だったもの。

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