イリヤ クーリック - Revolution -
今までになかったタイプのプログラム。
オリンピックシーズンのSPです。
初めてみた時はそれほど響かなかったのですが、見るたび見るたび面白くなるスルメプログラム。
イリヤが得意としていた(当時の他ライバルと比較して)バレエっぽさを幾分か封じて(これはフリーのラプソディ・イン・ブルーもそうだと思うのだけれど)新境地チックです。
こういうのも合うんだね、…という。
イリヤはもともとプレゼンテーションの評価が高い選手ですが、私はテクニカルと逆じゃない??と思うことが多かったです。滑走順の問題もあるのでしょうが、技術点低すぎない!?と疑問に思っていました。逆に、芸術点そんなにある??…と思うことも。
でもこうやって動画を何回も何回も見ていて、彼の芸術性というのが少しずつわかってきました。
何というか、表現において演技はしていない(ように見える)んですね。だから、いわばちょっとわかりにくい。そしてくどさとクセがなくて動作が際立つ。さらにきちんと指先まで神経が行き届いていてかつ不自然さが無い。なのでイメージが固まらなくて、どんなジャンルもそつなくこなしてしまう。バレエっぽさを全面に出さないこのプログラムで気付けました。動きがバレエっぽければ、とりあえず芸術点高そうに見えちゃうでしょう? そういうので誤魔化すのではない、画一的でない芸術性。
う〜ん、うまく言えない部分が多いのですが、こんな感じ? 上っ面の演技力じゃなくて、高度な芸術性です。
いずれにしても大概技術点が内容比で低めなのは納得いかないけどね!!ちょっとジャッジ呼んできて!!!
イリヤのスピンについてはうーんって濁すような意見も散見されるかなぁ…。シットスピンの位置がどうとか…(もっとしゃがんでってこと??)言われてることがあったような。。キャメルスピンについては評価高いらしいですけれども。。何が大事ですか?速さですか?ポジショニングですか?良く分からん。
ジャンプが良すぎるからその相対比でちょっとイマイチに見えちゃうだけじゃない??
確かにエルドリッジのスピンとか、全くブレなくて超高速ですよね。あ、そういうこと?
ヤグディンもそうだったけど、ジャンプ得意な人ってスピン苦手気味よね。リーザ トゥクタミシェワもじゃない??
ワリエワちゃんは多回転持ってはいるけど、ジャンプ自体は得意ではない。スピンは素晴らしいですよね。
旧採点だとレベル取りなど明確に点数化しないからよくわからないよね。まぁ、そもそもジャッジの基準がよくわからんし、今だと回転数??ちょっとくらい苦手なところもあるべきだよ。その方が可愛い。…というより、私はスピンそのものにあまり惹かれないので…、ジャンプ至上主義です。
このプログラム、一瞬イリヤのイメージじゃない!って思ってしまうのだけれど、見ているうちにすごくはまってくる。そして彼にぴったり合ってくるという。。イリヤは基本的にクセがないから何でも馴染むんだよね。
ファウストもそうだけど、要素をたっぷり詰め込んで、本当にあっという間に終わってしまう……まあ時間的にも……ショートプログラムですしね。。
身体をひねるステップとか、とんでもないスピードの中でのイーグルとか、小技がいっぱい効いているのですが、毎度あっさりとやってしまうので初見でわからないんですよー、そこまでの凄さが。…というか、これに限らず初見はとりあえずその美しさにぼーっとしてしまって終わってしまうという…。じっくり見ることで、あ、ここすごい!ここも凄い!!…と気付けるやっぱりスルメプログラムなんです。
それはこの曲自体もそうで、最初はナニコレ?って思っていたのが、だんだん何回も聴きたくなってくるという…。このクセになる感。そしてオリンピックシーズンならではのイリヤの緊張感がひしひしと伝わってくるよ。
SPの公開練習では、イリヤの曲かけで3Aを飛ぶ瞬間、同様に練習している選手や周りの人たちの視線が一斉にイリヤに集まるのがわかります。エルドリッジもリングサイドで神妙な面持ち(それでもカメラと目が合うとニコッとするのがまたベテランっぽい。素敵よ、トッド!)ま、そこで飛んだのは2Aなのですが(それでも高い!!)そんな雰囲気を悟ってかやっぱりピリピリ。いや、そりゃ見ちゃうでしょうよ。。許してください。美しいトップ選手が飛ぶんだから、っていうか、スタイルいいからってなぜトレーナーをinしようとするかね、この子はー。お腹冷えるの?? ほんとに自分の美貌に無頓着だな。。全くカッコよく見せようとしないというか…。まぁ、そういうところがとても可愛いけれども。
音源はちょーっとゲーム音楽っぽいですよね?シンセサイザー奏者のジャン・ミッシェル・ジャールさんの曲だそうですが(父親のモーリス・ジャールさんはアラビアのロレンスを作曲された方そうです…ふぅん。)長野オリンピックよりもすこし前にでてた、天地創造(スクエアと合併する前のエニックス)にありそな音楽だなって思ったの。一瞬。
淡々としているのにドラマティック。前衛的なのに漂うノーブル感。相反するものを同時に感じさせることができるというのもイリヤ クーリックの特別な能力だと思うのです。しっかし、美しいわ、ジャンプ凄いわ、芸術性もすんばらしいわって、無敵か!…と思わせておいて、時に不安定なところをみせるのがまた…もぅ…、…あらゆる魅力に満ち溢れております。全くもう敵いません。。これはヴィクトール組で先輩だったモロゾフさんも早々に白旗上げるわけです。さすが見る目ありましたね。っていうか、見る目も何も、見たまんまか…。