てんぐのD&D日記:ドラゴン金貨を追いかけた日々の思い出
今までに色々なnote記事を書くくらい「D&Dをやりたいな」と言ってきたてんぐですが、今年は本当にその機会を得られました。それも単発でなく、ソードコースト地方随一の国際都市“壮麗なる都”ウォーターディープの先代公開領主ダガルト・ネヴァレンバーが着服したまま所在不明となった公金、ドラゴン金貨に換算して50万枚の争奪戦に挑む、シティアドベンチャーの傑作キャンペーンとして名高い「ドラゴン金貨を追え」。
1月からスタートし、先週の土曜日、12月17日にめでたくフィナーレを迎えました。このキャンペーンが実に楽しかった。今まで遊んできたTRPGキャンペーンの中で三本の指に入るくらい楽しかったです。
というわけで、今夜はその思い出を語っていきたいと思ってます。
我がPCリャン・カイシン、そして我がパーティ
てんぐが作成したPCは、東方世界カラ・トゥアからの来訪者のモンク、リャン・カイシン。
以前に書いたこの記事にもあるように、てんぐがD&Dに関心を持ったのは「TRPGで武侠ネタをやりたい!」と思い立ったことでした。D&Dのモンクというクラスはそれを充分に叶えてくれます。そしてDMも他のPLもカンフー映画のノリへの感度も高く、打てば響く理想の環境で武侠ネタを発揮できました。
ただ、ストレートなカンフーマスター路線を行ってもちょっと芸がない。もっと言うと、謎めいた背景やそれを帯びつつ飄々とした、それでいて江湖=冒険者稼業の垢に染まりきってない雰囲気も出したい。一言で言えば、古龍武侠のヒーローみたいなPCがやりたかったわけです。
そんなわけで、てんぐがイメージ元にしたのは、Netflixで配信してる武侠ドラマ「絶代双驕」の主人公・小魚児。まあ、小魚児路線で本気で行くとなると、モンクよりローグの方が似合うかなって、今にしてみると思うところですが。
そんなこんなでパーティの面々と出会い、ドラゴン金貨の争奪戦に臨んだリャン・カイシン。思い返せば色々な事件と遭遇したものでした。
1話にして勤め先の料理店は直下の下水道の戦闘の煽りを食って倒壊したし、代わりに名物NPCホラ吹きヴォーロからせしめた幽霊屋敷で料理店を新装開店してからは自分の本分を料理人だと認識するとエクストリームジョブ症候群に陥ったり、ドラゴン金貨争奪戦の余波で始まったウォーターディープ暗黒街の犯罪戦争で抗争相手の刺客をかいくぐろうとした犯罪組織ゼンタリムの最高幹部を店に匿ったら、暗黒街の頂上作戦を始めてた警備隊の堅物捜査官が店に探りに来たり、そのドラゴン金貨の行方を突き止めるキーアイテムの争奪戦ではなぜかガラス板の運送業者と遭遇したり喧嘩騒ぎに飛び込んで双方からボコボコにされたり。
そういったジャッキー・チェン映画ばりのコミカルな騒動だけでなく、自分の一族が滅ぼされたときに奪われた宝剣を捜したり、すっかり馴染んだ地域での爆破事件では殺気立ったりというシリアスなロールプレイもできました。
またこのキャンペーンで採用された、「攻撃判定の達成値が目標値の1または2足りないときは『伏せ状態』になるのと引き換えに命中とする」と「モンクは『伏せ状態』になっても攻撃判定を通常通り行える」というふたつの特別ルールのおかげで、「敵前で転んだと思わせるほど地を這う動きから斬りつけ、そこからさらに剣を跳ね上げる」という剣法を何度となく披露して強敵を撃破できたのは気持ち良かったです。
また、我がパーティの面々も愉快で楽しい面々揃いでした。
ダガルト侯の隠し子のパラディン娘に「天下に責任を負う姿を見せてくれ」と振ってみたら、その次の回で家名復興と争奪戦後を睨んで有力者NPCと“個人的な友情”を獲得する帝王学の実践に痺れましたし、ラスボスを自ら仕留める運命力を見せつけました。
女性問題が原因で善なる竜王バハムートのお仕置きとしてゴールドドラゴンから人間に転生させられた少年ウィザードは恐るべき呪文の使い手で、特に<ファンダズマル・フォース>による完封劇は味方ながら震えあがったものでした。そして、そんな彼のもとに送り込まれたバハムートからの使者、「〇〇っピ!」という物騒な語尾のカナリアにはパーティ一同震えあがりました。
容貌を自在に変えられるチェンジリングのローグのショートボウの腕前たるや次元大介ばりでしたし、それ以上に麒麟すら驢馬に変じさせる<ペテン>マスターぶりは鮮やかのひと言。特に、「敵が人質にした子供にすり替わりました」という展開は「マジすげえ」と一同拍手喝采でした。
モンクのリャンも顔負けの高機動力による強襲を得意とする猫人タバクシーのレンジャーの、ワケありげなサーカス団に客としてリサーチに行ってもらったら同僚のタバクシーの女の子とのただのデートになり「愛がアップ!」しちゃう愛嬌は、セッションを明るく楽しくしてくれました。
このパーティと一年一緒に戦っていくと、自然と以心伝心となっていくものです。
このキャンペーンではSLGのような戦闘を楽しめるグリッドマップ方式を採用してましたが、後半になってくると、「こういう行動をしてほしいって言おうかな」と思ったことを、そのPCが先んじて宣言するということが何度もありました。
まさに以心伝心。こういう展開も、シナリオやロールプレイと同じくらい楽しく、遊んできた甲斐を感じたものでした。
壮麗なる都の愉快な面々とその社会
ウォーターディープに暮らす人々は、もちろん我がパーティだけではありません。多種多様な、そして個性的なNPCがキャンペーンには登場しましたし、その人々も関わってきました。
具体的には上述のもと幽霊屋敷で新店舗を開店しようとなったときに、「求職者の面接をして従業員を雇用しよう!」となったときはビックリしました。TRPGで雇用者側になる、しかもそれに先んじて面接するなんて経験は初めてでした。既に知り合った顔もいれば、一芸に秀でつつ過去に秘密があれば拘りも強い者もいるし、「人生ナメてんのか?」なヤツも来たあの回は、戦闘も判定もなかったけど、楽しかったなあ。
そんな従業員NPCのひとり、“石拳”のヤグローさんがてんぐのお気に入りでして、セッションに間が空いた時期に二次創作小説まで書いちゃったくらいです。
DMが用意したランダムチャートによる余暇イベントやサイドクエストで、そんなNPCたちと交流し、彼らの人生航路を知っていくのもまた、大変楽しいものでした。
HJ社のこのコラム記事にもあるように、ウォーターディープは中世ファンタジー世界としてはかなり司法が行き届いた町でして、犯罪が発生すれば警備隊が現場を封鎖し、捜査官が聞き込みも行います。
キャンペーン開始時は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での、善児(こいつもD&Dならローグ:アサシンなんだろうなあ……)による千鶴丸殺しと、その現場を小四郎こと北条義時に見られても「嫌なところみられたな」以上の反応がないという坂東無法地帯の記憶が生々しかった頃だけに、「このウォーターディープには文明がある!」と感動に打ち震えたものでした。まあ、その文明の成果である警備隊に痛くもないとは言い難い腹を探られたときは、結構緊張したものでしたが。
でも、そんなウォーターディープの司法と社会も、実のところは貴族優越を原則としてる、それを実感させるように、このキャンペーンであるヒーローであるパーティであっても、正義を阻む身分制度の壁にぶつかることがありました。
これは悔しかったですねえ。でも、その悔しさが楽しさに、ウォーターディープという町で暮らしているという実感を深める方向に作用しました。
常にヒーローが完全勝利するわけじゃない、判定に成功するわけじゃない、そんな展開だからこそ生まれるドラマがD&Dにはあります。実際、リャンなんか、なぜか耐久力セービングスローに毎回失敗するものですから、割と体力がない都会っ子ってキャラ立てもできましたし。
そして、一度倒した敵NPCが、終盤にかけて強くなって再登場する展開は、我がパーティがそうだったようにこいつらも成長していたんだな、同じ町で生きてきたんだなと、そんな不思議な共感のようなものが湧いてきました。まあ、それはそれとして、普通にもう一回やっつけましたが。
諸々ひっくるめて、大変な騒動にも事欠かなかったけど、このウォーターディープは最高に楽しいって腹の底から思えました。
運命の導き、ドラゴン金貨争奪戦、決着! そして……
今回のキャンペーンではDMが用意したランダムチャートによって独自の展開が開かれる例もありました。
クライマックスを目前にして、ドラゴン金貨の在処への道を閉ざす扉を開く“鍵”を用意しろ、というクエストが始まりました。
DMが用意した“鍵”候補の中に、東方人であるリャンがいるからか、麒麟も据えられました。でも、それが出る確率は決して高いものではありませんでした。でも、実際にダイスロールしたら、出ちゃったんだな、これが。
そもそもウォーターディープは港町、水の都です。そして、D&Dの麒麟には水を浄化する能力を持つ水の瑞獣という面もあります。もしかしたら、ウォーターディープという町の成り立ちには麒麟の存在が介在していたのかもしれない。そして、ドラゴン金貨争奪戦の最終章は、ウォーターディープ秘史の再現でもあった。そんなドラマが生じたわけです。
言うまでもなく、そんなの当のシナリオ集には一行も書いてないんですけどね。
そんな運命の導きの末に、我がパーティを待ち受けたのは最後の試練とてんぐのTRPG史上最大の決戦でした。この決戦は本当に凄まじかったです。
しかし、成長したパーティの以心伝心の連携、助っ人NPC軍団の援護、そしてチビ麒麟の加護のおかげで完全勝利。そうです、麒麟が来ちゃったのです!
ドラゴン金貨争奪戦を制し、50万枚をウォーターディープ市に返還し、ダカルト侯が少し増やしていた差額分を現領主レイラル女公爵から賜りました。ひとり頭、ざっと金貨6000枚。
その報奨金の使い道として、リャンは宣言しました。
「いまここに、俺たちの幇会を創設する!」
この瞬間は滑ったらどうしようって、本当に緊張しました。
でも、ドラゴン金貨争奪戦の中で色々な有力者と関わり、そして武芸や呪文だけではどうにも乗り越えられない壁を感じ、何より争奪戦の中で天下というものと無縁ではいられない出生を意識したリャンとしては、このドラゴン金貨での買い物はこれだと確信してました。
結果は、DMも他のPLもノリノリになってもらえたようでした。これにはホッと胸をなでおろしましたよ。
そして、自分たちのギルドを創設(名前も考えないとなあ、候補はあるので皆に諮ろう)したリャンたちを待つのは、年明けからはじまるEXシナリオ。
ドラゴン金貨の争奪戦が終わってもウォーターディープの日々は終わらないし、浮かび上がった人々や組織の思惑は渦を巻き始めても不思議はない。
そのEXシナリオでは、何が起こるのか。今から待ち遠しいですね。
元祖RPG、D&Dを遊ぼう!
D&Dは現在、HJによる翻訳版から、WotC社そのものが日本語版を発売していく体制に変わって再展開しております。
そして、その第一弾としてリリースされた製品のうち、初心者向けの製品が、スターターセットとデラックスプレイボックスです。
去年の今頃は未経験者だったてんぐですが、最初の1回でコツも掴めました。D&Dはそれくらいシンプルで遊びやすい刺激的なゲームです。
元祖RPGダンジョンズ&ドラゴンズ、皆さんも是非遊びましょう!
もうひとりのリャン・カイシン
リャン・カイシンというキャラクターは、てんぐ自身、大変気に入っております。
そんな気持ちをダイレクトにぶつけて書いたのが、今年の逆噴射小説大賞で書いた、この「酔剣侠伝~小心、小心、ご用心!」でした。
今回は一次選考通過で終わりましたが、こちらの梁開心の話も膨らませられそうな手応えはあったんだよね。
例えば、「処刑された悪宦官・劉瑾の隠し財産50万両を巡る江湖の暗闘を制し朝廷に返還した若き剣侠・梁開心の前に、硬骨の名臣・王陽明の使者が訪れる。明朝覆滅を目論む地下組織の正体とは!?」という具合かな。
思い切って、自作の長編武侠小説に膨らませようかな。