てんぐのノイエ銀英伝語り:第34話 要塞対要塞 Akt.Ⅰ巨砲、相撃つ~歴代最強のケンプ=ミュラー艦隊とガイエスブルグ襲来!
先週までの帝国同盟双方の社会の様々を煮詰めた展開や描写も大好きでしたが、今週から始まる要塞対要塞編のようなド迫力戦闘も、当然のことながら銀英伝の本領。まして、大きいところから細かいところにまで目も手も行き届くノイエであれば、猶更です。
その要塞対要塞の口火を要塞主砲によって切った(というか、あの砲撃指令のフレーズは振るってましたねえ。ちなみにコレ、ノイエオリジナルのセリフです)ケンプ提督による攻勢は劇場で見て以来ですが、思い切り鳥肌が立ちました。「これ、本当にイゼルローン陥落するんじゃないか?」というスリルに鳥肌が立ちました。
要塞主砲ツヴァイヘンダー発射!
移動要塞ガイエスブルグの要塞主砲は、実は各媒体ごとに名称が変わっています。
原作ではシンプルに「硬X線ビーム砲」、高出力エネルギー火器ではあるもののトールハンマーの劣化版といった位置づけでした。
フジリュー版では「グングニル」。言うまでもなく大神オーディンを象徴する槍ですし、ガイエスブルグ要塞自体も内戦以前は帝都星系を守護する要塞だったという解釈をしてたんでしょうか。
そしてノイエ版では「ツヴァイヘンダー」。要するに、「両手持ちの剣」です。
日本のTRPGユーザーにとってはグレートソードの方が馴染みがある武器ですが、個人的にはツヴァイヘンダー(ツヴァイハンダー)という呼び方の方が好きだったりします。
フジリュー版の「グングニル」と比べると無骨極まりないネーミングではありますし、トールハンマーとの繋がりもありません。
これは、ガイエスブルグ移動要塞とは別枠で開発されていた攻城砲だったということかなとも推測できますが、「敵陣の槍衾を文字通り切り開く」というその大剣使いの傭兵たちと自らをケンプが重ね合わせた、ということも考えられます。
そのツヴァイヘンダーとトールハンマーの撃ち合いから要塞対要塞は始まりましたが、移動要塞ガイエスブルグでは装甲の強化や隔壁閉鎖などによるダメージコントロール能力において、初撃から死者を多数出してしまったイゼルローン要塞を凌いでいるように見えます。
シャフト技術総監はガイエスブルグを「移動する付城」と考えていたようですが、ワルキューレ操縦士から戦艦艦長とキャリアを重ねたケンプは、ガイエスブルグを「要塞クラスの超ド級戦艦」と認識して作戦計画を立てていたのでしょう。
イゼルローン要塞、難攻不落にあらず!
ミュラー副司令が言っているように、イゼルローン要塞はそもそも帝国軍が建設した要塞です。
ということは、当然ながら要塞の詳細なデータは揃っているわけで、それを用いた演習を何度も何度も実施できるということでもあります。
かつて同盟軍がヤン以前に6度も実施した攻略作戦で取り付くこともできなかった外壁に難なく取りつき、そして効率的に要塞の急所へ装甲擲弾兵を前衛とした陸戦部隊を進められたのも、その賜物でしょう。
帝国軍が攻める限りにおいて、イゼルローン要塞は難攻不落ではないのです。少なくとも、ハードウェアにおいては。
それにしても、その陸戦部隊突入の前段階となる流体金属装甲破りと浮遊砲台無効化の方法として、機雷をバラ撒いて大波を起こすという発想はなかったです。機雷自体はツヴァイヘンダーに比べれば地味な兵器ですが、それも使い方次第でここまで大きな効果が出せるんです。
また、イゼルローン要塞の監視衛星群を哨戒艦で虱潰しにして機動艦隊の動きを察知することを遅らせるのも仕事が丁寧です。
巨大な戦果への気負いの反動として浮かれそうになっているケンプと比べると、ミュラーは堅実さが持ち味なのがわかります。後に「鉄壁」と呼ばれる良将の片鱗が見えてますね。
ところでこのミュラー、内戦当時はどこで何をしてたんでしょう。
旗艦リューベックの存在は貴族連合軍にいたシュナイダー大尉も知っていたわけで、艦艇を率いて戦場に出ていたのは確かでしょうが、どこに配属されていたのか。
やはりラインハルト直属艦隊の分艦隊司令というところでしょうか。キルヒアイス別動隊の方にいた可能性もありますが。
やられ放題な今週のイゼルローンの一族
イゼルローン要塞司令部内のシーンで、割と「軍隊という社会」を重視して描くノイエでは、下士官にすぎないユリアン・ミンツがどういう立場でこのにいるんだろうと、そんな疑問がちょっと頭をよぎりました。
ただ、帝国軍ワルキューレ部隊の襲来を察知してポプランに「行くぞ!」と直接声を掛けられたところからすると、建前としては「ポプラン空戦隊長の当番付き人」みたいなポジションとして、というところでしょうか。
そんなポプランの「気のいい悪魔に守ってもらえ」という発破ですが、彼の相方コーネフの声を聴いてると、そろそろ出番が訪れる悪魔よりももっと性質の悪い外道や邪悪存在ではあるけど息子の存在はちゃんと認知してる魔族の支援も欲しくなります。オーベルシュタインの声帯を持つ剣豪は、ちょっと飲んだくれ武侠モードに入ってるようですが。
与太はさておき、ここまでのイゼルローン留守番組がやられ放題なのは確かです。
ヤンが不在というのもあるんでしょうが、それぞれの仕事ぶりや対応は、必ずしもボスに依存して思考停止状態に陥ってるわけではありません。
単純に帝国軍が全てにおいて一枚も二枚も上手だってだけです。
このケンプ=ミュラー艦隊と移動要塞ガイエスブルグ、間違いなく歴代最強です。
とはいえ、このやられ放題のまま終わってしまっては老大のヤンに顔向けできません。
というわけで来週からはいよいよイゼルローンの一族の反撃が始まります。その先陣を切るのは、装甲擲弾兵に食らいつく魔術師の猟犬、薔薇の騎士連隊。お見逃しなく!
今週のウンチク:宇宙要塞大きさ比べ
スペースオペラにおける宇宙空間に浮かぶ戦闘要塞といえば、スターウォーズのデススターが浮かびます。
デススターの直径は100km(半径50km)、一方で我らがイゼルローン要塞の直径は60km(半径30km)。
一見すると割といい勝負のように見えますが、球体は体積で測らないと意味がありません。
というわけで、球体の体積を出す公式4/3 * π * r3にそれぞれの半径を当てはめてみた結果がこちらです。
デススター:523,599㎦
イゼルローン要塞:113,097㎦
デススターの圧勝ですな。流石はあっちの銀河帝国が作り上げた戦闘要塞です。
(※追記)
上記の記載後に再度確認したら、第一デススターは直径160km(半径80km)とのことでした。
これを踏まえて再度計算したところ、デススターの体積は2,144,660.6㎦でした。完全にケタ違いですな。
(追記終わり)
まあ内部構造がどうなってるのかによって密度は変わってきますが、スケールの違いについてはイメージしやすいでしょうか。
で、ここで想像したくなるのは、ヤンとシェーンコップのコンビでデススターの乗っ取りは可能かどうか。
デススターのガバガバ警備については銀河的に有名ですから司令部までは余裕で踏み込めそうです。
が、最後に立ちはだかるのはこの暗黒卿ですからねえ。
これは薔薇の騎士でも流石にハードル高すぎるかな。