Age of Shao-nainai~『月に咲く花の如く』の時代
BS11での『月に咲く花の如く』の帯放送も、いよいよ血沸き肉躍るあの「西域編」に入りました。
西域編の目的地・迪化ってあの『書剣恩仇録』の世界なんだけど、てんぐはまだ原作も未読でドラマ版も見てません。武侠迷歴もそろそろ長くなるのに。図書館になら置いてあるだろうし、この機会にそろそろ読むかな。
さて、このドラマの舞台である19世紀半ばから後半は世界史的にも激動の時代で、名だたる名作や傑作が舞台としてきました。というわけで、今回は『月に咲く花の如く』の時代を彩る世界各地の作品をご紹介します。
中央アジア
迪化を拠点とする西域人商人・図爾丹(トゥーアルダン)が、直近の予定として挙げた「ブハラ・ハン国」。これがどのあたりの国かというと、現在のウズベキスタン共和国の一部にあたるようです。
で、この時代の中央アジアを舞台にした作品が『乙嫁語り』です。
いつの日か、カルルクやアミルたちに清国から来た商人が、破天荒な魅力に溢れた“少奶奶”の事を、ちょっとほろ苦い表情で語る日が来るのかもしれない。
というか、森薫さん作画で月花コミカライズってできないもんかな。
ヨーロッパ
19世紀はまさに西欧列強が世界を席巻した時代で、同時に『ドラキュラ伯爵』をはじめ様々な冒険活劇の舞台ともなりました。その中でも、特に名高い作品といえば、やはりかの『シャーロック・ホームズの冒険』でしょう。
また、『海底二万マイル』の時代は少し前になりますが、それを原案とした『ふしぎの海のナディア』になると、完全にリアルタイムとなります。
なので、涇陽にも皇帝ネオの巨大ホロビジョンが投影されたかもしれませんが、あの時期は西域編の後の洋布戦争がクライマックスに達してた頃なんで、「忙しくてそれどころじゃねえ!」という具合に全員見てなかったんじゃないかな。鄭氏ママは素直にひっくり返ってくれそうだけど。
あと、個人的には赤城毅の『有翼騎士団』という小説もあります。こちらもオススメ。
アメリカ大陸
19世紀のアメリカを代表する作品といえば、何をおいても『風と共に去りぬ』を挙げるべきでしょう。
また、南北戦争を境に様変わりした北米社会では、ロックフェラーやJ.Pモルガン、カーネギーなど産業界の巨人たちが自分の帝国を築き、覇を争いました。その一方で、晩年は競い合うように社会事業や慈善活動への寄付を行うなど、様々な意味で周瑩の輩とも言えます。
発明王エジソンと天才テスラが激しく対決した電流戦争もこの時期の話でした。『変人偏屈列伝』でも、この二大変人偏屈の確執は語られてました。
この時期の仁義なき経済戦争や社会の動乱の陰で動いていたのが、かの「ピンカートン探偵社」です。
ドラマにもなっているピンカートン探偵社ですが、実際はかなりダーティな面も多い集団だったようです。
次はアメリカ大陸から太平洋を越えた先にある島国、わが国日本です。
日本
チャンネル銀河で『月に咲く花の如く』が初放送していた時期、同時に放送していたのが大河ドラマ『八重の桜』。
周瑩の推定誕生年が、1868年近辺。この時期はまさに戊辰戦争の真っ最中。つまり、周瑩の生涯はほぼそのまま戊辰戦争後、明治編の八重の歩みと重なるわけです。
西域編の時期だと少し先走りになりますが、最終回で八重たちが看護した日清戦争の捕虜たちの中には、李大人こと李鴻章子飼いの北洋軍の兵士たちも含まれてるだろうし、その事績も含めて“ある人物”の手から渡された日本の新聞から、周瑩が新島八重の事を知ったかもしれない。
またこの時期は、あの『いだてん』序盤に強烈極まりないインパクトを与えた天狗倶楽部の面々がバンカラ極まりない青春を送っていたころです。
というか、あのジゴロー・カノーが本業で台頭し始めた時期って言い方もあるな。
もうひとつ言うと、『ゴールデンカムイ』の本編の少し前の時期でもあります。
本編前の時期だと鶴見中尉の動きを目安にしたいところだけど、この時期どこにいて何をしてたかはちょっとわからないな。「いご草ちゃん」の話を取っ掛かりに獄中の月島軍曹を取り込んだ時期か、それとも名前を偽ってウラジオストクに潜入してた時期かはちょっと読みにくいですが。
そういえば、アニメの方で有坂中将が(ルーク・スカイウォーカーの声で)高らかに「アヘンは儲かるよーーー!」って叫んでたの、まだ月花のアヘン事件の記憶が残ってたから「知ってんだよそんなの!」って頭を抱えたもんだったな。
さて、世界をぐるっと一周してまいりましたが、そろそろ中国大陸にもどって参りましょう。
中国大陸
最初に挙げた『書剣恩仇録』は月花から見てざっと100年ほど前の時代ですが、同時期の中国というと、やはりワンチャイこと『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』でしょう。
特に傑作の呼び声高い「天地大乱」は広州が舞台で、上海とは土地が離れていますが、あの「古い中国」と「新しい中国」が混淆する華やかなカオスの世界観は、共通するものがあります。
そして、その「古い中国」に殉じる忠臣と「新しい中国」を求める革命家、それぞれの志のぶつかり合いに、その双方に心を通わせるヒーローが板挟みになるという危うい均衡は、月花最終盤のテーマにも通じます。その前に、予習としても是非一度ご覧ください。
というか、ドニーさんの提督とリンチェイの黄飛鴻が対決する時点で映像資料的価値は計り知れません。今度のムーランでも共演するわけですし、こちらの予習としてもマスト見よう。
最後に
洋布戦争編で趙白石に周瑩が「世界」という言葉を使うシーン(そしてその言葉の意味を白石が理解できない)シーンがあるんですが、これが個人的にはすごく印象に残っています。
普通、中華時代劇における社会の最大単位は「天下」なんですが、このドラマは、さらにその先に広がる社会の単位を意識させる。だから、世界各地の名作や傑作の世界とも容易に接続するイメージがつかめる。
その意味でも、この『月に咲く花の如く』は、やはり破格の作品なんだなと実感します。