記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ドリッズトの伝説 ヴィジュアル大百科:ドリさん、色々ありすぎでしょマジで!?(ネタバレあり)


ドリッズト・ドゥアーデンとは

 D&Dユーザーが次々と入手報告を挙げていたドリッズトの伝説 ヴィジュアル大百科ですが、拙宅にもようやく届きました。
 ドリッズト・ドゥアーデン、大魔術師モルデンカイネンやドラゴンランス戦記の善悪の英雄たち、バルダーズ・ゲートのミンクスとブー、そして映画アウトローたちの誇りのエドガン一家とゼンクなど、D&D世界を彩るヒーローたちの中でも燦然と輝く気高さと冒険で知られた名物キャラクターです。
 その生い立ちと戦いについては、彼を主人公とした小説「ダークエルフ物語」に詳しく描かれています。

 てんぐももちろん読んでおります。というか、実はてんぐが初めてD&Dに触れたのも、このシリーズでした。正確には、富士見ドラゴンブックスから出ていた旧版アイスウィンド・サーガでした。

 もう一発で、この気高き黒き肌のレンジャーに魅せられましたね。

ドリさん、色々ありすぎるでしょ!?

 このドリッズト大百科、さっそく読んでみての率直な感想。
 ドリさん、波乱万丈にもほどがあるでしょ!?
 いや、本当にビックリしました。日本語環境で語られたドリッズト伝説って、完全に氷山の一角だったんですねえ。
 具体的には、時の流れの中で、色々あって死亡したブルーノ―、ウルフガー、レギス、キャッティ・ブリーがレンジャーの守護神マイリーキーの力で転生したという形で再登場とか、訣別したはずの故郷メンゾベランザンを大悪魔デモゴルゴンから守るために邪神ロルスの代理戦士となるとか、キャッティ・ブリーを喪ってから80年後にエルフの女戦士とドロ沼の昼ドラ関係になったかと思ったら破局して恨まれて殺されかけた後に上記の転生組として再登場したキャッティ・ブリーと再婚したり。死んだカミさんの転生者ってのは同一人物なのか他人なのか、どう判定したもんなんでしょうね。
 というか、この転生組の他に父親ザクネイフィンも本当に蘇生してるってのも凄い。死生観がそろそろキン肉マンに近くなってますし、今後は誰かが死んでも「あの人はいま死亡中だから」で済ませそうで怖いです。
 また、オークの統一王国メニーアローズとドワーフ王国の和平条約締結に関与したり、旧敵というより腐れ縁なドロウ傭兵ヤーラクスルの紹介でモンク修行を始めてみたり、ドリッズト伝説も色々ありすぎるのがよくわかりました。
 完全に邦訳するのが難しいのはよくわかりましたが、それでも未訳のダークエルフ物語の邦訳もしてほしくなりましたね。

ドリッズトの伝説を彩る武器防具あれこれ

 ドリッズトの愛刀として名高いふた振りのシミター、アイシングデストゥインクルですが、アイシングデスは反りが大きく、トゥインクルは直刀に近いのがわかります。
 ゲーム上のデータとしてはどちらも同じシミターなのですが、それでも工業製品でないのなら外観の違いというものはあるものです。それを実際に表現されているのは嬉しいです。
 なお、個人的にはトゥインクルの方が好みに近いですが、このトゥインクルって、ドリッズトの娘ブリーが冒険者になったときに勝手に持ち出したとか何とかって話を聞いたことがあります。
 トゥインクル持ち出し娘のブリーの冒険も、いつか日本語で触れたいものです。

 さて、そんなドリッズトの双刀術ですが、作者サルバトーレはこういう技をイメージしてたのかな。

 小説「クレリック・サーガ」の後書きでも言及してましたが、サルバトーレはカンフー作品も好きだったそうです。
 上記のドリッズトと昼ドラ展開を繰り広げたエルフの女戦士ダーリアも九節鞭や少林扇みたいな武器使ってましたし。

 サルバトーレのこういう扇子もといセンス、親近感湧くなあ。

 また、キャッティ・ブリーも愛用していた意志ある魔剣“切り裂くものカージディア”のデザインとか、名工ブルーノー最高傑作にして戦士ウルフガーの相棒<イージスの牙>が思ったより柄が長いんだな(正直マイティ・ソーのムジョルニアを連想してました)とか、切っ先が蜘蛛の鋏角きょうかくを模しているザクネイフィン愛用の大剣とダガーはメンゾベランザンのドロウ信仰文化を感じさせるのも良かったですね。

邪悪ならざるダークエルフの先達、ヤーラクスル・ベンレ

 ドリッズトの旅の仲間たちの紹介の後に続く味方コーナーですが、トップバッターにドロウ傭兵ヤーラクスルが入ってるんですよね。お前なんでそのポジションにいるの!?(爆笑)
 でも、ドリッズト年表を当たってみると、敵対するより味方や協力者になってるときの方が多いんですよね、この人。
 さらに言うと、公式キャンペーン「ドラゴン金貨を追え!」で「宿なしドロウの親玉が何でベンレの家名を名乗ってるの?」という疑問を抱いたんですが、この大百科を読んで氷解しました。
 何でも何も、この人、ベンレ家のお坊ちゃんだったんですな。それもドリッズトと同じく三番目の男子。
 小説を読むとわかりますが、ドロウ貴族の三男坊って大抵がロルスの生贄にされるもののようですが、ドリッズト同様に彼もその運命を免れたようです。
 また、あのスキンヘッドも身分制度の中で髪型まで決められるメンゾベランザン社会への反抗心の現れでもあるそうです。
 また、ビックリしたのが、ザクネイフィンが元ブレガン・ダールセだったってことでしょうか。ザクネイフィンのコーナーであまりにもサラっと触れられてるので、危うく読み飛ばすとこでした。というか、ヤーラクスルって二重三重にドリッズトと繋がりありすぎない

 こうしてみると、ヤーラクスル・ベンレって、ザクネイフィンやドリッズトと同じく「邪悪ならざるダークエルフ」だったのがわかります。
 ただ、ドリッズトは「正義」、ザクネイフィンは「高潔」を求めたのに対し、ヤーラクスルが求めたのは「自由」だった、そういう違いはあるでしょうか。
 いずれにしても、ヤーラクスルが人気キャラになるのもよくわかります。

お前を殺すのは俺だ、刺客アルテミス・エントレリ

 ドリッズトのライバルキャラ、刺客アルテミス・エントレリについても、ビジュアルガイドを見て「そういうキャラだったんだ」という驚きがありました。
 一番意外だったのは、髪を掴まれないように短く刈り込んだヘアスタイルと格闘家のように精悍な面構え。
 てんぐはエントレリは、何となくドリッズトをヒューマンにしたような細面の長髪キャラをイメージしてましたが、考えてみれば荒野暮らしのドリッズトが長髪になるのが自然なように、都市部暮らしが長そうなエントレリなら床屋で髪を頻繁に刈りこませるのも納得です。まあ、あの世界に床屋ってあるのかどうかわかりませんが

 長剣と短剣の二刀流スタイルについては、個人的には長刀二刀流のドリッズト流より好みだったりします。で、その短剣の魔力と偶然によって、この人もなんだか長命者になってるってのがまたビックリです。フェイルーン大陸のヒューマンって、簡単に寿命越えちゃってる人多くない? 確かウォーターディープの大口亭の亭主ダナーンもそうだったし。

D&Dガイドとしてのドリッズト大百科

「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の名が冠されているように、このドリッズト大百科は、もちろんD&Dの実プレイの参考資料、サプリメントとしても用いられます。
 例えば、ドロウについて。
 PCとして、あるいは善良なNPCとしてドロウを登場させたいけど、メンゾベランザン社会やロルス信仰からどう抜け出したかを考えるのは面倒臭い。そんなときに役立つのが、ロルス信仰を拒絶した北方のエーヴェンドロウや南方のローレンドロウの存在。ちなみに、暗黒世界アンダーダークで暮らすドロウ氏族はウダドロウと言うそうです。
 エーヴェンドロウやローレンドロウ氏族の出身でも良いし、またこの大百科でも言及されているウダドロウ氏族の神々で唯一善なる属性を持った女神“暗黒の踊り手”イーリストレイー信仰者のコミュニティの出身者という線もあるでしょう。
 いずれのドロウであろうとも、恐らく今のフェイルーン大陸、それもソード海域やアイスウィンドデイルにおいては、その肌の色に象徴される種族を理由にあからさまに邪悪な存在として拒絶されることはないでしょう。他ならぬドリッズト・ドゥアーデンの冒険と武勲、そしてそれを伝える物語によって。
 なので、ドロウPCを組みたいと思ったら、遠慮なく組んでいきましょう。
 また、エーヴェンドロウの築いた氷河都市カリディの探索に、ヤーラクスルも加わっていたという話がドリッズト年表にありました。
 キャンペーン「ドラゴン金貨を追え!」などセッションでもブレガン・ダールセは登場しますが、ヤーラクスル自身を戦闘相手として出すべきか否か。5~6LV帯のパーティの相手とするには強すぎるし、なまじ倒されるとキャラの格が下がる。そんな悩みを持つDMもいるでしょうが、そういう時は、「ドラゴン金貨を追え!」でのヤーラクスルのデータだけ拝借して別人としての指揮官代理を設定して、「ヤーラクスル当人はなんか北方探索に行ってるらしいよ? 氷河見物がどうとかって」とPLに説明しておくとスッキリします。

 一方、D&D日本語環境で、オーク関連で言及されることはしばしばありますが実態がよくわからなかったメニーアローズ王国ですが、それについてもこの大百科でよくわかりました。
 ウダドロウにドリッズト・ドゥアーデン(あるいはヤーラクスル・ベンレ)がいたように、オークにだって他種族の偏見を覆す人物は登場する。それがメニーアローズ王国開祖オブッド一世です。
 さしてページ数は多くありませんが、彼が築いた王国が後にシルヴァーマーチ地方の実質的な盟主となるほどの勢力と他地域との共存を可能にする節度を持ったという記述は、5版でのハーフオーク(2024年版だとオークをルーツとする)PCを普通に作成できるような環境にも繋がるでしょう。

 そしてD&D公式シナリオ「アイスウィンド・デイル:凍てつく乙女の詩」由来の記述もありますし、それに触れると「これ遊びたいなあ」って改めて思いました。

 ターシャ本はその後出せたんだし、こっちも何とかならんかなあ。

 また、様々な記事や年表や各地域の戦乱についての記述は、出自が兵士だったり貴族だったりするキャラの「この人自身や一族や部隊は、いつどこでどんな合戦に従軍してたんだろう」「どこで武勲を立てたり没落したりしたんだろう」という疑問を埋めて設定を固めることにも役立ちます。
 色々なページに散らばっているので、ひとつひとつ丁寧に拾って、整合性を付けつつ考えてみましょう。
 人にもよりますが、そういうのも楽しいですよ?

語り足りないけどまとめます

 フェイルーン大陸ソードコースト地方やアイスウィンドデイルのマップも、この土地を舞台に遊ぶ上で大変参考になります。「ソードコースト冒険者ガイド」というサプリメントもあるにはありますが、地理と歴史を把握するならドリッズト大百科の方が分かりやすさで軍配があがります。
 もちろん、各地域の家屋や町並み、住民の衣装、モンスターを含めたクリーチャーの外観など、D&Dユーザーにあの世界を想像させる取っ掛かりとしては映画アウトローたちの誇りと双璧です。
 あるいは、バルダーズゲート3を遊んだ人にも、あの街の外側に広がる世界、あのゲームの過去と現在で何が起こっているのかを知る取っ掛かりともなるでしょう。

 もちろん、ダークエルフ物語(または富士見ドラゴンブックス版アイスウィンド・サーガ)が好きだった人に対しては、もう何も言うまでもありません。

 読書の秋が本格到来した今だからこそ、この大百科はオススメです。
即座に買いましょう!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集