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長縄八の字跳び3分間600回への道

はじめに

 このタイトルを見て、「えっ」と思った人。驚いた人。無理でしょ、と思った人。
 ちょっとでも反応をして下さった方は、今現在、小学校や中学校にいて、学校行事や校外行事に向けて「長縄八の字跳び」に取り組んでいるのだと思います。
 自分も跳んでいる人、指導する立場で子供達を飛ばせている人、どちらもいらっしゃるでしょう。
 この本(記事)では、長縄八の字跳びを通して、奇跡的な体験をしてみたい、という方に向けての内容を網羅しています。
 奇跡的な体験とは、思ってもみなかった回数跳ぶことができて嬉しいだけでなく、クラスの団結力の向上、出来なかったことが出来るようになる達成感などを味わうことできるということです。
 今持っている記録をもっと伸ばしたい、大会で入賞したい、という皆さんはもちろん、本当に3分間600回を超える記録を叩き出すためのノウハウまで、惜しげなく書き記してあります。
 もちろん、ここに書いてあることを実践しようとするのにも、「練習」が欠かせないことは事実ですが、ただ闇雲に練習するよりも効率的かつ合理的なノウハウを詰め込んであります。
 役に立ちそうなことがあったら、今の自分たちのレベルに合わせてどんどん取り入れてもらって、長縄レベルアップしてもらえたらと思います。


目次
第1章 長縄八の字跳びに取り組む目的
第2章 初心者・中級者への跳び方のコツ
第3章 八の字跳びは回し手で7割決まる
第4章 跳ぶ順番に関しての考察
第5章 3分400回・500回・600回越えまでの道


第1章 長縄八の字跳びに取り組む目的

①頭がおかしいと思った長縄との出会い
 私はかつて、小学校で教諭として働いていました。
 一年目は2年生の担任、二年目・三年目は音楽専科として、四年目・五年目は5・6年生の担任を担当しました。
 長縄といえば、体育の授業で、冬場を中心として取り組むことの多い縄跳びの授業の一環として取り組むことがありました。しかし、学習指導要領に必ず取り組むようには書かれていないので、どちらかといえば、おまけ的な要素として取り組む程度でした。
 八の字跳びも、クラスを3つくらいのグループに分けで取り組ませ、少し練習をした後に1分間や3分間飛ばせてみせ、記録を競って楽しむ。その程度の取り組みしかやったことありませんでした。おそらく、学級担任を受け持ったことのあるほとんどの先生方は、同じような境遇なのではないかと思います。
 しかし、異動した先の学校で、運命の出会いが待っていました。
 吸い込まれるように縄に向かって走り込む子供達。
 1秒間に、約3.5回の超高速で回転する縄。
 聞けば、6年生は学級開きをした時点で八の字跳び3分間500回を超えていると。
 目標は、市の陸上フェスティバル優勝・県の縄跳び選手権入賞で、そのためには3分回600回を目指しているとのこと。
 ・・・頭がおかしいんじゃないかと思いました。
 その学校は数年前から、学校を挙げて長縄八の字跳びに取り組んでおり、一年生から跳び始めます。市の陸上フェスティバル5連覇中で、6連覇が目標。8月には24時間テレビの長縄八の字跳び1分間ギネス記録にチャレンジの企画に出場し、見事優勝を勝ち取り、1分間213回という当時のギネス記録を打ち立てました。
 とんでもない学校に異動になったもんだ、と思いましたが、背に腹は変えられません。5年生の担任となり、4月から早速縄跳びをスタート。指導法も全くわからない中、手探りで試行錯誤しての毎日となりました。

②強制・自分たちの意思?
 6年生は学校へ来ると、朝から校庭や体育館で八の字跳びを練習します。
 20分休みも、昼休みも、時には放課後まで。
 体育の時間や学級活動の時間を練習に費やすことも。
 子供達は連覇したいという目標に向かって一丸となって取り組んでいるようでした。
 来る日も来る日も長縄三昧の日々。
 5年生もそれに追随して、日々練習を重ねました。
 迎えた10月の陸上フェスティバルにて、6年生は1位・2位・4位に入賞。6連覇を達成しました。
 その瞬間から、5年生には、「7連覇」という目標が降ってきました。
 一つ学年が上がり、クラス替えはあったものの、私は持ち上がりで6年生の担任となりました。
 ついに、長縄と正面から向き合う時が来ました。
 でも、自分の中には疑問がありました。
「この子たちは本当はどう思って長縄を跳んでいるんだろう?」
 決して得意な子ばかりじゃない。むしろ苦手な子の方が目につく。そんな中で、彼らはどう思って長縄を跳んでいるんだろう?やらされていると思っているのではないか?つらいのではないか?そういう思いが私の頭からは離れませんでした。
 しかし、練習をしていく中で、彼らの中からこんな言葉が出てくるのです。
「先輩たちから受け継いだ伝統を引き継ぎたい。」「7連覇を勝ち取りたい」
 そんな子供たちの思いに自分が背中を押され、練習を重ねていきますが、思ったように記録が伸びません。隣のクラスには、過去に陸フェス優勝経験もあり、百戦錬磨の担任の先生がいました。1分間ノーミス200回跳んでみせたり、3分の記録が550回を上回っていて、我がクラスはプレッシャーを感じていました。9月に入ると、放課後の陸上フェスティバル練習が始まりましたが、我がクラスの記録は最高でも540回程度で、アベレージは500回を下回っていました。思うように記録が出せないのは担任の責任だと思いつめ、子供の前で涙すら見せたこともありました。
 そうして迎えた陸上フェスティバル本番当日、6年3組の子供達は奇跡を起こしたのです。
 2回の測定でなんと2回ともクラス記録を更新し、2位に入賞を果たしたのです。
 ホッとしたのですが、ショックでお弁当は一口も食べられず、さらに帰宅後、体調を崩し発熱してしまいました。よほどプレッシャーがあったのでしょう。
 陸上フェスティバルで全力を出し切った6年3組は、その後、抜群のチームワークで笑顔で毎日を過ごし、涙涙の卒業式を迎えました。
 蛇足ですが、陸フェスの入賞のお祝いに、自分のおごりでカップラーメンをみんなで食べるという「ラーメンパーティ」を企画しました。そして、「卒業して、進路が決まったら報告に来なさい。そしたらラーメンをご馳走するから」と言って卒業したのですが、3年後、なんと15人を超えるメンバーが進路報告に来てくれました。今度はラーメン屋に行ってみんなでラーメンを食べた日の嬉しさは、忘れることができません。

③なんのために長縄をやるのか
 初めて6年生と長縄に取り組んだその年は、子供達に助けられて目標を見失わずに取り組むことができました。また、結果的にすごくいいクラスになり、修学旅行も楽しく、毎日の授業も楽しく過ごし、涙の卒業式を迎えました。
 しかし、いつもそんなふうにうまくいくとは限らないのが人間というものです。
 なぜ長縄をやるのか。
 その目的を見失ってしまうこともあります。
「何もしてないと悪いことばっか始めちゃうから始めたんだよね」
 と、以前からいらっしゃった先生がおっしゃっていました。
 そもそも生徒指導面で課題を抱えていた学校だったのです。
 しかし、逆に、長縄が嫌で、不登校気味になってしまう子供もいました。
 跳ぶのが苦手でどうしても引っかかってしまう。練習がしんどい。そこから人間関係の問題に発展し、ごちゃごちゃ・・・。
 練習が大変なだけじゃない苦労が、たくさんたくさんありました。
 この学校は全校で取り組むと決まっているからやりやすいのかもしれません。
 6年生になったら本格的に始めるというクラスが市内では大半でした。
 読者の中には、自分のクラス単独で、取り組んでみたい、という学級もあるかもしれません。
 単独で取り組むのには、それはそれで困難なことが多いと思います。
 なぜ長縄をやるのか。
 時に立ち止まって、子供達と目標を確認する作業が必須です。作文を書かせて、一人一人の気持ちを正直に書いて、とした年もありました。
 大会で優勝したい、とかは副次的な目標で、どんなクラスになりたいか、がブレないような学級経営ができたら理想的ですね。

第2章 初心者・中級者への跳び方のコツ
 第2章では、初心者・中級者向けに、長縄八の字跳びの基礎について解説していきます。
 すでに3分間300回以上を達成されている、というみなさんは読み飛ばしてもらっても結構です。第3章からお読みください。
①「はいはい・・・」と声を出しながら跳ぶ。
 縄をどんな速さで回すにしても、縄の回すスピードに応じて体を動かしていくことが不可欠です。
 縄が地面につくタイミングで「はい・はい・はい・はい・・・」と声をかけていくことで、リズムに乗ってタイミングよく跳ぶことにつながってきます。
 これは、スピードが増した時にも大事になり、「はいはいはいはい」「はいはいはいはい」と2グループに分かれて声を出していくと効果的です。
②縄の中央で跳ぶ。
 これも最も基本的なことです。
 縄の中心・中央で跳ぶことです。
 縄にぶつかるのが怖い子は、真ん中まで行くのをためらってしまうことが多いのですが、そうすると、縄が浮いている手前の部分で跳ぶことになるので、高くジャンプする必要が出てきてしまいます。そうすると、必然的に引っかかる可能性が高くなります。
 上手に跳べている子は、縄の中央で跳ぶことにより、縄が自然と足の下を通り抜けてくれるので、楽に跳ぶことができます。縄から抜けるのも簡単になります。
 体育館で、フロアにビニールテープでバツの印をつけて跳ぶ練習をするといいでしょう。
③回し手のすく横から縄に入り、すぐ横から抜ける。
 ②の縄の中央で跳ぶために、③を実行する必要があります。
 回し手のすぐ横から縄に入ることによって、縄に引っかからない最短距離で縄に入ることができます。
 回し手から離れてしまうと、縄が早く体にぶつかってしまうので、ミスする可能性が増えてしまいます。
 縄から抜ける時も同様に、回し手のすぐ横から抜けられるようにしましょう。
 入ってから抜けるまで、一直線に駆け抜けるのもポイントです。
④前の人と間を空けずに連続で入る。
 当たり前ですが、人が跳ばないで縄が回っていても、跳んだ回数にはカウントされません。
 前の人が跳んだらすぐに間を空けずに連続で入って跳ぶことで、記録を伸ばすことができます。
 間を開けるということは、一回分記録が減るので、3分間に換算すると、10〜20回分ほど記録が変わってきます。
 ということは逆にいうと、間を空けずに飛べるようになるだけで、記録は信じられないほど跳ね上がります。
 3分間400回・500回を目指すには必須の条件になるので、間を空けずに入れるように練習していきましょう。
 と言っても、できない子にとってはハードルが高いので、後ろの子に押してもらったり、手を引いてあげるなどのサポートが必要です。
⑤腕は身体にピタッとくっつけて跳ぶ。
 縄のスピードが速くなってくると、跳ぶ人と人の感覚も狭くなってきます。そんな時に、腕に縄が引っかかってしまうことがよくあります。
 腕は脇を絞めて、身体にピタッとくっつけて跳ぶようにしましょう。そうすることで、引っかかる確率を少しでも少なくしていくことができます。

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