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夏と車と断熱と

 夏は暑い。これを書いているときは前線が日本に接近していて、どこもかしこも大雨でメチャクチャになっているからたまたまそうでないにしても、少し前までは毎日35℃を平気で超えるような夏だった。鉄板の塊であるような車には極めて厳しい季節であり、日差しの中停めていた車に乗り込むと、極限まで加熱された空気が一気に襲ってきて精神は限界、窓を全開にしエアコンも全開、ひたすら冷えるまで耐えまくるという生活を送っていた。もう嫌だ、何とかしたい。何とかならんか。

 ということで、こうした状況を打開するために断熱対策に乗り出すことにした。家と同じように車に対してこういう対策をする人はたくさんいるようで、ちょっとインターネッツで探せば同じようなことをする人はたくさん見つかる。特に有効なのはルーフ(屋根部分)のようで、まあ考えれば直射日光を一番浴びるのは面積の広い天井だろうから当然かもしれない。もちろんフロントガラスもその対象の1つだが、車内に置くサンシェード以外あまり対策が取れないのでこちらは置いておく。また、カムリは天井の鉄板が薄い(最近の車は大抵そうかもしれないが)からか、雨が当たると思いっきり音が車内に聞こえる。気にはなっていたので、断熱と共に制振もできればと考えた。また、どれくらい効果が出るかはともかく4枚のドアも同じような対策をこの際実施することとした。

・使う素材について


[断熱]
 断熱するためには、車の天井などからやってくる熱をなるべく遮る何かを入れてやらないといけない。今回使う事にしたのは以下の2つである。

1.ペフシート

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 素材で有名な東レが作っている、シート上の発泡体。見た目は板状の発泡スチロールみたいなものだが、ある程度屈曲しつつクッション性のある素材。熱伝導率が低いので熱を伝えにくく、防水・防湿性がいいので結露にも強そう。柔らかいのでハサミやカッターで簡単に切れる上、裏側には粘着シートが付いていて貼るのもメチャクチャ簡単と都合のいい素材である。
 主に厚みが5mm・10mmとあり、恐らく天井と内張りの間に余裕はあるので10mm厚の方がいいだろうと思って10mm厚を2mほど買った。また、意味があるかはともかくドア側にもこれを入れてやろうと思い、ドアには念のため5mm厚のものを5mくらい準備した。結果的には10mmでも問題なかったが。

2.シンサレート

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 自動車でもよく使われるド定番断熱素材。シンサレートは素材に大量の空気を含むため熱伝導率は低く、素材の断熱性は折り紙付き。ついでに防音にもなるし燃えにくく吸水性も低い。さらに軽く柔軟なため、重い素材を使いたくない屋根にはピッタリである。厚みやらなんやらでいろいろ種類があるが、今回は13mm厚で、片側は黒い不織布が貼ってあるものを選んだ。約1.5mの長さで購入し、いくつかカットして二つ折りにして厚みを稼ぎ(厚みが出るが、潰れやすい素材なので特に問題ないと判断)、天井と内張りの間にのせて挟み込むような形で使った。これは同じカムリで似たようなことをしている人がいて、それを参考にさせてもらったという感じである。なお、カムリの天井には内装の上に最初からいくらかシンサレートが乗っかっていた。しかし全面的ではないのである程度追加した形になる。

[制振]

 カムリのルーフやドアはかなり薄い鉄板であるので、振動すると音が気になりやすい。例えば天井に雨が当たれば"パタパタ"という音が大きく響き渡る。オーディオ等を流してれば気にならないが、中型セダンなのにこのレベルなんだという感じになるのでこの振動をどうにか抑える必要がある。音の事を言い出すと、制振・吸音・遮音など目的によって無限に素材が出てきて面倒くさくなる上、あまりそういった素材を車に追加しまくると今度は重量が増えすぎるため、今回は音については制振だけ考えることにする。制振に使ったのは以下の素材。

・レアルシルト

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 積水化学が主に住宅用に作っている"カルムーンシート"という製品を、自動車用にしたもの。アルミ箔に粘着・制振用の樹脂層という作りで、300mm×400mmで1枚440gくらいの板切れ。自動車の制振では定番らしく、使用事例もアホほど出てくる。似たような定番ものに日東電工のレジェトレックスという素材があり、こちらの方が圧倒的に安価な上、効果もあるのでよく使われるが、レジェトレックスは粘着がブチルゴムであり、誤ってどこかに付くと取るのが大変・くさいなどの致命的問題があるので選ばなかった。レアルシルトはそういったことがないので使いやすいが、これが16枚で2万円を超える高級品なのが唯一の欠点か。なおレジェトレックスはこれの倍以上の大きさでも値段は半額以下。

・作業工程

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基本的な作業の流れとしては、以下の通り。

1.内装を取る/下ろす
 まず鉄板を露出しないといけないので、内装を取ったりする。ドアについては比較的簡単に取れるが、天井の内装を外すのはセダンタイプでは極めて面倒くさい(カムリの場合、前席シートを全部外して助手席側から取り出す必要がある)。ただ、ルーフ内装にくっついているもの(ライト類、グリップ類、サンシェードなど)を外し、ルーフ内装を支えているA/B/Cピラーのカバーを外すと下に降りてきて天井に手が入るスペースができるため、今回はその手法を取った。カムリの場合、ピラー部分のカバーを取るのは何回かやったことがあるので比較的簡単だった。ただ、暑い日にこれをやるのは拷問のようなもので、無限に吹き出る汗との戦いは本当はできれば避けたい。

2.脱脂
 鉄板が見えてきたらいざ貼り付けとなるが、そのまま貼ると汚れ等でうまく接着できないため、パーツクリーナーやシリコンオフで脱脂をする。手持ちのパーツクリーナーを使い捨てのショップタオルに吹いて使う。

3.制振材の貼り付け
 まずレアルシルトから貼り付け。これは場所によって大きさを工夫したが、基本的には1枚300mm×400mmのものを6等分(1枚100mm×200mm)し、ペラそうな部分に貼り付ける。その後、手持ちの圧着用ローラーでコロコロ圧着した。うまくローラーが入らないところは手で押さえつけた。

4.断熱材の貼り付け
 レアルシルトの上からペフシートを貼り付け。基本的には平らな鉄板部分を全部覆うようにした。これについてはあらかじめカットするという方法がとれず、現地で大きさに応じてカットして貼り付けざるを得なかった。なおペフシートは粘着力が強いが、いざ剥がそうとすると素材がボロボロになるという欠点があり、失敗があまり許されないので辛かった。

5.内装の復旧
 終わったら内装を元に戻す。外観には全く影響がないので、普通の状態では車体部分を断熱していることは気づきにくいと思われる。

・結果

 結果としては成功だった。ここ数日は悪天候のため分かりづらいところがあったが、晴れ間が出て猛烈な日差しが降ってくるとやはり車内は暑くはなる。ただし、窓を開け空調を入れると温度が下がるまでの時間が前より目に見えて短くなったし、フルオートにしている空調の風力も前より少なく済むことに気づいた。また、洗車をしたり雨の日に走るなどして、天井に水や雨が当たってもほとんど音が気にならなくなった。むしろフロントガラス等にあたる雨の音の方が大きい。これはもう仕方がない。

・結論

 高級車なら最初から十分な対策があると思うが、そうでない車にとっての断熱対策は極めて有効であった。恐らく冬にもこの効果が出てくると思うので、それはそれで楽しみである。

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