アイスリボン大田区総合体育館大会の感想
アイスリボン大田区総合体育館大会を観戦しに行ったので、その感想を書いておこうと思います。
尚、詳しい試合レポートはバトルニュースさんを参照して下さい。
第1試合 チェリー&バニー及川&咲蘭 vs ラム会長&Yappy&キク
キクのデビュー戦となった、この試合。開始早々、先発を買って出た咲蘭が試合をリードする姿が印象的でした。大きな声で盛り上げるところは青木いつ希イズムを感じさせるし、小悪魔的なファイトスタイルはつくしイズムを感じさせるしで、中学生の吸収力は凄いな~と思ったり。笑
コスチュームもプリキュアみたいなフリフリにチェンジして、良い意味であざとくなってきた気がしますね。
一方で、キクさん。プロの世界の手荒い歓迎とでも言いましょうか。ターゲットにされてボコボコにされる展開が続きましたが、ドロップキックも打ててたし、ボディスラムも投げれてたし、43歳という年齢を忘れさせるくらいには動けてたと思います。
個人的には白ズボン風のコスチュームが良いなと思ってて。なんか謎の拳法家みたいな雰囲気があるじゃないですか。笑
年齢も相まって「得体の知れない技を使ってきそう!」という幻想を抱かせてくれるし、本人的にも打撃に力を入れたいそうなので期待したいところ。
43歳でのデビューという事に関しては、シンプルに勇気をもらえますし、選手に多様性があるのがアイスリボンの魅力でもあると思うので、これからどんな化学反応を起こすのか楽しみですね。咲蘭との30歳差同期マッチとか、ハム子との母ちゃんタッグとか、チェリーさんとの美魔女タッグとか、思い切ってハードコアやデスマッチをやっても面白いと思うんですよ。43歳でデビューする事自体が無茶なんだから、どんどん無茶をして欲しい。
「43歳の新人」という肩書きを生かすも殺すも本人次第だと思うので、デビューした事で満足する事なく、上を目指していって欲しいなと思います。
第2試合 朝陽 vs 松下楓歩
松下楓歩のデビュー戦となった、この試合。この2人の関係性については朝陽のブログを参照してもらうとして、2人が同期入社だったのは知っていましたが、まさか高校の同級生だったとは…。学生時代の親友がレスラーになるなんて、未だかつてプロレスの歴史上あった事なのでしょうか?
それに加えて、「カホに支えられてきた朝陽」と「朝陽を支えてきたカホ」という関係も美しくてね…。会見で言っていた様に、朝陽の「友達のままでいたかった」という想いも分かるし、おそらくカホも朝陽に遠慮して、自分の本心を隠してた部分があると思うんですよ。好きであるが故にお互いを縛り付けてしまう…映画『リズと青い鳥』を彷彿とさせる様な関係で、この数日間は2人の事を思っては胸を熱くする日々を過ごしてました。笑
そんな2人がリング上で向き合うという事で、どんな試合になるのかと思いきや、思ってた以上にカラっとした、サッパリとした印象を受けました。何故かと言うと、カホ…いや楓歩が予想以上に闘えていたから。
序盤こそ、朝陽の猛攻に戸惑う部分もありましたが、徐々に落ち着きを取り戻すと楓歩が試合のペースを掴み、コーナーに上がってミサイルキックを放つなど、あわや「楓歩が勝利するのでは?」と思わす場面もありました。流石にキャリアの差で朝陽が最後は取りましたけど、デビュー戦でここまで闘えるとは驚きでしたね。
スタッフとしてファンとして、とにかくプロレスの試合を沢山見てるのだろうし、「こう来たら、こう動く」というイメージが彼女の中には出来ているのかなと。あとは、それに体と技術が追いつくかどうかで、だから、あんなに落ち着いて闘えるのかもしれません。しかも、試合後には「もっと落ち着いて試合できる人になりたい」と言ってるのだから、末恐ろしいものがあります。
楓歩がそんな落ち着いたファイトスタイルだった事もあって、変にウェットな雰囲気にならず、爽やかな雰囲気で終える事が出来たのでしょう。朝陽は「友達じゃなくなる」と言ってましたが、同じリングの上で同じレスラーとして向き合った事で、本当の意味で対等な友達になれたんじゃないかな~。
そういえば、『楓』の花言葉を調べてみたら、「大切な思い出」「美しい変化」「遠慮」と出てきて驚きました。まさにこの一戦を象徴する言葉ですね。
第3試合 星ハム子&宮城もち vs 青野未来&向後桃
前2試合がデビュー戦という特殊な試合だった事もあり、ここからが第1試合という見方も出来ると思うのですが、やはり安定のらぶっちゃと言いますか、この2人を見ていると「アイスリボンを見てるな~」と実感させられました。笑
らぶっちゃがコミカルなムーブを繰り広げつつも、相手は実力者の青野未来とメキシコ帰りの向後桃。次第に闘いにも熱が帯びていき、アクトレス軍優勢かと思われたタイミングで、ダブル・ハムロールが炸裂。勝負所を見逃さない、抜け目のなさは流石の老舗タッグといったところでしょう。
試合後には勢いに乗って、リボンタッグに挑戦との事。アジュレボとは浅からぬ因縁がありますし、ハム子はともかく、最近のもちはベルトが離れて久しいので期待したいところです。
第4試合 真琴 vs 真白優希
炎の2番勝負・第3戦(?)と位置付けられた、この試合。個人的には真白がガチャスタイルで闘うのか、それとも普通に闘うのか、に注目して見ていました。
結果的にこの試合で一番盛り上がったのは、石黒レフェリーを使った真白のセカンドロープ渡りだったと思うんですけど、これは面白かったですね。常識を超える意外性と“セカンド”ロープを渡るというヘナチョコ感。まさに真白にしか表現出来ない世界でした。欲を言えば、あと1個か2個、隠し玉を用意して欲しかったなと。もっと真白ワールドで真琴を翻弄して欲しかったのですが、意外と後半は普通に闘っていたので、ちょっと物足りなく感じたり…。
今の真白を見てると、ガチャスタイルを貫くのか、それとも強さを追求すべきなのか、ってところで迷っている様にも感じられます。別に強くなる事は悪い事ではないのですが、それと引き換えに真白の個性がなくなっては元も子もないわけで。アイスのOGで言えば、真琴の様に強さを追及する生き方もあれば、松本都の様に独自の世界観を追求する生き方もありますからね。どちらにせよ、誰かの幻影を追うのではなく、真白は真白らしく成長して欲しいと願うばかりです。
第5試合 進垣リナ vs 尾﨑妹加 vs トトロさつき
トライアングルリボン選手権試合となった、この試合。パワー系の2人に対し、テクニック系の王者1人という事で、進垣リナとしては、なかなか厳しい状況だったと思うのですが、2人に負けずにパワー勝負を挑む場面もあれば、2人まとめて絞め上げる場面もあって、王者らしく健闘していたと思います。
ただ、進垣とトトロで熱くなったところに、登場したのが尾﨑妹加。正直、漁夫の利的な展開だったとはいえ、これもトライアングルの醍醐味なのでしょう。初挑戦で初戴冠となったわけですが、ベルトに執着・因縁がなかった事が彼女に幸運をもたらしたのかもしれません。
次に誰と防衛戦をやるのか気になるところですし、レネミーのベルト総獲り計画にリーチが掛かったのも興味深いところ。ラム会長…ICE行くのか!?
第6試合 星いぶき vs NATSUMI
いぶきのリベンジマッチとなった、この試合。期間限定で始めたTwitterでも散々煽っていましたが、開始直後から気合十分のいぶきが攻め立てる展開へ。NATSUMIは相変わらずのスロースタートなんですが、それでも心が折れずに、反発してくる辺りは流石でした。
お互いにエゲつない音を立てる、エルボーvsチョップ合戦は見応えがありましたし、気付けば互角の展開へと持ち込んでいたものの、最後の最後に出たのは、いぶning star。引き出しの数、奥の手の数では、まだまだ、いぶきの方が上という事なのでしょう。まぁ、キャリアを考えれば、当然なんですけどね。
試合後、NATSUMIが泣いていたのが印象的で、彼女の涙を見たのは初めてな気がします。これだけ1人の相手に執着され、執着する経験は、彼女にとっても初めての事だったのだろうし、自分の感情を剥き出しにする事で、レスラーとして一皮剥ける事が出来たのかもしれません。
お互いにライバル関係を認めているだけに、お互いの良さを出し合える好試合になったわけですが、この2人は真面目で才女な優等生タイプで、実は似ているところが多い2人だと思うんですよね。なので、対角だけでなく、いつかタッグでも見てみたいなと期待しています。
第7試合 テクラ vs 藤田あかね
次期FantastICE王座挑戦者決定&WUW選手権試合となった、この試合。WUWのルールが適用された事によって、あかねにとっては不利な試合になってしまいました。実際、あかねが思わずロープエスケープしたり、3カウントを取りにいく場面も散見され、頭で分かっていても、体に染み付いた動きはそう簡単に修正されないのでしょう。
そんなわけで、テクラ優勢・あかねが耐える時間が続いたわけですが…。結果から言うと、テクラがスライム攻撃(?)をレフェリーに誤爆させた事が勝負の分かれ目になったとは思います。しかし、それまでテクラの攻撃に耐えてきた、あかねのタフネスさも見逃せないところ。流石はアイス1の頑丈さを自負するだけあって、耐えに耐えて耐えまくる…藤田あかねというレスラーの真髄を見た気がしますよ。「ワシにはこれしかないんじゃ~!」と言わんばかりに、POMジュースで強引に締め上げるのも最高でしたね。
ちなみに、この試合の翌日にはディアナの試合に出場していて、ハードコア・デスマッチファイターの体力は本当にどうかしてるな~と思った次第。笑
ともかく、あかねには報われて欲しいと思っていたので、ベルトという結果が出て安心しましたし、山下とのFantastICE戦も今から楽しみです。
第8試合 世羅りさ&雪妃真矢 vs 安納サオリ&鈴季すず
インターナショナルリボンタッグ選手権試合となった、この試合。序盤からアジュレボがあのすずの連携を警戒する様子が見受けられましたが、連携攻撃やタッグワークという部分に関しては、両者遜色ないレベルでやれていたと思います。
そうなると、次にフォーカスされるのが個の部分。雪妃とすずに関しては、昨年のICE戦を彷彿とさせる様なバチバチが繰り広げられた一方、世羅と安納に関しては、どうも世羅に力負けしていた印象。このマッチアップで優位に立てなかった分、あのすずは後手後手に回ってしまったのかもしれません。
タッグとしての完成度は勿論の事、個の部分でも屈指の実力者である事がアジュレボの最高に厄介なところですよね。しかも、今回はコスチュームも新調した事で、2人のモチベーションの高さも感じられ、益々手が付けられないタッグチームになってきました。
一方のあのすず。負けたとはいえ、これがリボンタッグ初挑戦。昨年の妹加の様に、リボンタッグは何回も挑戦して戴冠するイメージがありますし、この敗戦を物語の始まりにして欲しいなと。これからも諦めずに再挑戦し続けて欲しいですね。
アイス内で後輩が増えてきた、すずにとっては自分が後輩ポジションに戻れる場所であり、フリーで活動する安納さんにとっては、先輩として後輩を可愛がれる場所でもあるのでしょう。この2人の姉妹関係は見てるだけでも、ホッコリさせられますし、人をハッピーにする力があると思うので、いつかリボンタッグを獲る事を願っています。
第9試合 藤本つかさ vs 春輝つくし
ICEx∞選手権試合となった、この試合。つくしが会見で「やり散らかす!」と言っていた通り、つくしの荒々しいファイトスタイルが印象的でした。それに対し、藤本はいつものスタイルで対応していく展開。
ところが、中盤辺りから藤本もかなり感情的になりだし、荒々しい攻撃が増えていきます。まぁ、こうやって相手を炊き付けるのも藤本らしいムーブの1つではあるのですが、今回に限っては眠れる獅子を起こしてしまったのかなと。
終盤、お互いの得意技の読み合い合戦、返し合い合戦が続く中、とうとう藤本のジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスホールドが炸裂。誰も返した事がないという、この技をつくしが2で返したところで、一気に形勢逆転。掟破りのインフィニティ3連発からのジャパニーズオーシャンスープレックスホールドで、つくしが勝利を収めました。
いや~まさかサイクロンを返すとは思わなかったし、そこから先はまさに未知の領域といいますか。インフィニティにも驚かされたし、スープレックスも遂に決まるしで、呆気に取られるばかりでしたね。笑
振り返ると、今回のつくしは“約束”という言葉を繰り返し使っていました。
つくしがなんでこんなに約束に拘泥するのか分からなかったのですが、試合後のコメントやインタビューを読むと、その真意が自分なりに理解出来た部分もあって。
「豊田さん、過去、色々、あったけど、それは、取り消すことができないけど、豊田さんから頂いたジャパニーズオーシャンで、今日チャンピオンになってこのベルトとることできたました。」
「多分、ちょっとこれ言うのもあれなんですけど、つっかさんが言ってたように、4年前、色々あって、ほんとに心を閉ざしてた部分がある。」
4年前というのは、つくしが起こした不祥事&キャリアリセットの事を指しているのでしょう。つまり、つくしは4年前に約束を破った人間なんですね。ファンの期待も、仲間の期待も、関係者の期待も、全てを裏切ってしまった。
だからこそ、彼女は約束を守る必要があった。今度ばかりは裏切らないと…期待に応えてみせると、ファンに対しても、仲間に対しても、関係者に対しても、何より自分自身に対して示す必要があった。あのオーシャン・スープレックスは過去の裏切りに対する禊であり、未来の期待に応える決意表明だったのかもしれません。
何はともあれ、新王者となった春輝つくし。随分と回り道をした気もしますが、その分、人間的にも成長出来たと思うし、これが彼女にとってはベストのタイミングだったのでしょう。キクさんと同じ様に、人間遅すぎるという事はないのです。
ただ、つっかに勝つイメージは出来ても、王者として防衛を重ねるイメージはあまり出来なくて…。実際、IW19の防衛も失敗してますからね。笑
まだまだ危なっかしいイメージは抜け切れませんが、逆にその方がスリリングで防衛戦が盛り上がる気がしますし、因縁の相手との防衛戦も期待したいところ。特にこの景色を柊くるみがどう見たか気になるところで、くるみが復帰するまではベルトを死守して欲しいなと、個人的には思っています。
一方で、敗れた藤本つかさにも一言。自分は最近アイスリボンを見始めたのですが、新規ファンとして1つだけ後悔があって。藤本つかさの全盛期を見逃した事だけが、すごく悔しいな~と思ってたんです。
ところが、今年に入ってベルトを奪取すると、あれよあれよの9回防衛を記録し、第2の全盛期と言ってもいい活躍ぶり。中には松本浩代との伝説的な防衛戦もありましたし、藤本つかさの凄みを目撃出来た事は、自分の中で財産になりました。
つっかがICE戦線を引っ張ってくれたからこそ、デスマッチ戦線が自由に出来た部分もあるだろうし、この1年弱を王者として駆け抜けてくれて、お疲れ様でしたと言いたいですね。負けた事は悔しいだろうけど、つくしを覚醒させ、王者へと導く事は彼女の本望でもあったはず。
次は40代での戴冠、第3の全盛期が見れる事を期待しています。
最後に
8月の横浜武道館が松本浩代という外敵を迎え、15周年という歴史と向き合う大会だったのに対し、今回の大田区総合体育館は所属&レギュラー参戦選手中心の構成で、16年目の未来を見せる大会になったのかなと、個人的には思ってます。
それを象徴するのが、新人2人のデビューであり、新たにベルトを手にした3人の新王者なのでしょう。
中でも、藤本つかさと春輝つくしが見せた、終盤の闘いは印象深いものがありました。正直、この2人の闘いはファンならば、見飽きた部分もあると思うんですよ。序盤のグラウンドの攻防も、中盤のしばき合いも、終盤の大技の応酬も、見慣れた光景といえば、見慣れた光景ではあります。
しかし、だからこそ、つくしがサイクロンを返した後の光景がより新鮮に、より鮮烈に映った。こんなに未知で眩い光景がまだあったのかと。これを人は未来と呼ぶのではないのかと。
ついでに言うと、つくしのインフィニティ3連発にも、自分なりの解釈があって。1つはICEx∞の『∞』、もう1つは藤本つかさの後を継ぐという意思表示、そしてもう1つは「未来はインフィニティ(無限大)である」というメッセージとして受け取りました。
大会終了時のエンディング曲がいつものhy4_4yhではなく、カード紹介時のBGMだったのも象徴的で。
16年目のアイスリボンはここから始まるのです。