アイスリボン後楽園ホール大会『雨のち、リボン2022』の感想
アイスリボン後楽園ホール大会『雨のち、リボン2022』を観戦しに行ったので、その感想を。
尚、詳しい試合レポートはバトルニュースさんを参照して下さい。
第1試合 真白優希 vs 星いぶき
ICE×∞王座決定トーナメント準決勝となった、この試合。トリッキーなムーブと関節技でペースを掴みたい真白と、チョップを中心に打撃で優位に立ちたい星いぶきという構図だったが、最後は掟破りのグッド・いぶニングで真白が勝利。
いぶきの真正面からぶつかっていくファイトスタイルは、真白の相手をいなし、惑わしていくファイトスタイルとは相性が悪いのかもしれない。いぶきにとっては足をすくわれたという感じだが、養生テープや相手の技を準備・研究してきた真白のアイディアと度胸は称賛されるべきだろう。
第2試合 安納サオリ vs 本間多恵
ICE×∞王座決定トーナメント準決勝となった、この試合。試合開始直後から安納の右腕に狙いを定める本間。その徹底した右腕狙いのゲームプランは九分九厘成功した様に思える。(実際、安納の右腕は使えない状態になっていた)
惜しむべきは、終盤で多恵ロックを決めきれなかった事か。関節技は食らう方は勿論だが掛ける方も体力は消費するわけで、決めるべき時に決めきれないと今回の様な逆転されるリスクも伴うのだろう。とはいえ、本間多恵の猛攻を耐え切った、安納サオリの耐久力も称賛されるべきで、彼女の我慢勝ちと言った方が正しいのかもしれない。
第3試合 チェリー&Yappy&キク vs SAKI&清水ひかり&櫻井裕子
魁!女熟対COLOR‘Sというユニット対決になった、この試合。相変わらずの明るく楽しい試合を展開するCOLOR‘Sに対し、相変わらずの老獪なテクニックを披露するチェリーが印象に残った。
他の選手では見られない、独特な入り方をするチェリーさんの技はいつ見ても新鮮で面白い。清水ひかりと蹴り合いをするなど、キクさんにも見せ場はあったが、チェリーさんの様なオリジナリティーのある技も期待したいところである。
第4試合 尾﨑妹加 vs しのせ愛梨紗
しのせ愛梨紗のデビュー戦となった、この試合。新人のデビュー戦で注目すべきなのは技術や体力よりも精神面だと思うのだが、そういう意味では合格点を与えられるデビュー戦になったのではないだろうか。
先輩に対して立ち向かっていく姿。負けそうになっても諦めない姿。どちらも十分に見て取る事が出来た。終盤の丸め込み技など練習してきた成果もきっちり出して、個人的には新人のデビュー戦としては満点の出来。技術や体力面はこれからだが、まずは良い船出となった事を祝福したい。
追記:「良き船出」と書いたものの、昨日になって鎖骨骨折により欠場との発表。夏休みを使って経験を積ませる算段もあったと思うので、正直このロスは痛い…。しかしまぁ、見方を変えれば学生生活をエンジョイ出来る最後の期間かもしれないので、有意義に過ごして欲しいものである。
第5試合 ラム会長&咲蘭 vs 雪妃真矢&NATSUMI
最近の道場マッチを見ていて、一際目を引くのが咲蘭だ。大人の中に1人だけ中学生がいると、良くも悪くも目立ってしまう。この試合に関しても、やはり咲蘭を中心に動いていたが、最近は闘い以外の部分でやり取りをする余裕も生まれ、成長を感じさせる。
少し話が脱線するが、私の席の前方にいた小さい女の子が咲蘭の試合を食い入る様に見ていたのが印象的だった。おそらくは自分と咲蘭を重ね合わせて見ていたのだろう。何とも微笑ましい光景でホッコリさせられた。咲蘭の存在が小・中学生にもっと広まると良いなと思う。
第6試合 真琴&星ハム子 vs あーみん&神姫楽ミサ
第6試合という試合順からも期待を感じさせる、KISSぷりタッグだったが結果は残せず…。プリンセスと言いながらも、意外と重量級で迫力はあるし、連携技も繰り出してはいたのだが、最後はマコハムの老獪さにしてやられたか。やはり、KISSぷりには石川がいないと締まらないし、早期復活が待ち望まれるところである。
勝ったマコハムは勢いにのって、リボンタッグに挑戦表明。最近の真琴さんは真白の良い踏み台になってしまっている印象なので、ここで本来の実力を発揮してもらいたいところ。個人的には、BIG☆DEKAI!!!に対抗して、咲蘭とラム会長による“LITTLE☆CHIISAI!!!”との対決も見てみたいのだが、どこかで組まれないだろうか…。
第7試合 まなせゆうな&トトロさつき vs 朝陽&松下楓歩
インターナショナルリボンタッグ選手権試合となった、この試合。戦前の予告通り?に丸め込みで攻めていく朝陽に対し、パワー勝負を挑む松下楓歩。この統一感のない戦略が見ていて、ちょっと気になった。
丸め込みでいくなら2人して仕掛けるべきだし、場外も使ってBIG☆DEKAI!!!の体力を削るアプローチもあっただろう。逆に、丸め込みを最後の最後まで温存して、勝負所で繰り出しても良かったかもしれない。1年9組の勢いや連携は素晴らしかったが、もっと作戦を練る余地はあったのではないだろうか。
ただ、ここで自分の可能性を試したくなる楓歩の気持ちは分かるし、朝陽もブログを読む限り、どこか迷いがあったのだろう。前哨戦がもっとあれば、戦い方が整理された部分もあると思うのだが…。兎にも角にも、1年9組はこの経験を糧に、前に進むしかない。
一方のBIG☆DEKAI!!!。これまではトトロのサポート役に周る事の多かった、まなせさんが3カウントを取った事で、2人の絆はより深まった事だろう。純血タッグではない事を指摘されたからには、その当人がケリを付けるべきだし、「他団体だからこそ勝ち続けないといけない」という返答もごもっとも。BIGな防衛ロードは続いていく。
第8試合 安納サオリ vs 真白優希
ICE×∞王座決定トーナメント決勝戦となった、この試合。決勝戦になっても、真白の摩訶不思議は健在だった。客席になだれ込んだり、目突き攻撃に、ロープを使ったフォール。更には関節技に丸め込みと、持てる技を総動員して、安納を追い込んでいく。
一方の安納は、本間戦で負傷した右腕のテーピングも痛々しく防戦一方だったが、本間戦同様に最後の最後まで耐え切ってみせた。力任せに反撃する場面も多く、いつもの華やかな動きはほとんど見られなかったが、これが彼女にとっては王者になる為の試練だったのかもしれない。
兎にも角にも、安納サオリが粘り勝ちで第34代ICE×∞王座を戴冠。安納さんに関しては、前々から好きな選手の1人であり、本人も言っていた通り、人気のわりにはレスラーとしての実績がないのも気にはなっていた。なので、シンプルに祝福したいし、この戴冠をキッカケにレスラーとしても一皮剥けて欲しいところ。これから、どんな王者像を体現していくのかも楽しみ。
勿論、アイスファンとしては所属選手にベルトを巻いて欲しかったが、だからと言って、フリーの選手はベルトを巻けない…というのも、おかしな話で。アイスにレギュラー参戦している選手なら、このベルトの歴史や価値は理解してるはずだし、王者に相応しい振る舞いをしてくれる事だろう。
追記:フリーである安納さんのテーピングを誰がしたのか気になっていたのだが、なんと本間さんがしたとの事。本間さんが後輩からリスペクトされる理由が分かったし、安納さんが負けられなかった理由も分かった気がする。
一方で、真白優希。横浜武道館でのトライアングルの防衛戦は素晴らしかったが、あまりにも正統派レスラーな闘いぶりに寂しさを覚えたのも確かだった。しかし、今回のICE×∞王座決定トーナメントでの真白は、かつての、摩訶不思議な真白優希だった。
しかも、これまでの客を沸かせる事を主にした摩訶不思議ではなく、あくまで勝つ為に摩訶不思議を使ってる事がアップデートされた部分。一見すると、ふざけてる様にも見えるが、誰よりも勝ち負けに拘っているのが真白なのかもしれない。
「私は決して強くなんかありません。なにも出来ない。だけど、私は真白優希としてのレスラーが誇りだから、真白優希の闘い方であなたに勝ってベルトを取りたかった」という試合後のコメントを聞いても、彼女なりに原点回帰を意識した部分があるのではないだろうか。
本人が言う様に、真白は決して強いレスラーではない。しかし、自分の弱さを認められる強さが彼女にはある。この「弱者のプロレス」こそが彼女の本質であり、真白ワールドに惹かれてしまう理由なのだと、この大会を通して久々に思い出した。摩訶不思議な真白優希が帰って来たのだ。
最後に
今大会を一言で現すなら、「若い」という一言に尽きる。
「若い」という言葉には、勢いだったり、可能性だったりとポジティブなイメージを抱きがちだが、一方で、未熟さだったり、愚かさといったネガティブなイメージとも表裏一体である。
今大会の新生アイスリボンの選手達からは、そんな若さの良い部分も悪い部分も両方を見させられた。ただ、これは否定的な意味で言ってるのではなく、悪い部分は言い換えれば“伸び代”でもあって、これから成長する余地が存分にあるという事でもある。
今大会のMVPは間違いなく真白だと思うが、彼女のデビュー当時、まさか2年後に後楽園のメインでICE×∞ベルトをかけて闘うなんて、誰が想像した事だろう。当時の真白は問題だらけだったけど、その分、伸び代となって成長してみせた。
つくしとつっかがいなくなった先月は、これからどうなるか分からなくて不安だった。でも、サプライズを起こし続ける真白を見て、これからどうなるか分からないから面白いのだと思える様になった。
人生も、プロレスも、思い掛けない事が起こるから面白い。
次は一体どんな景色が見えるのだろう?