第1編-2. 初期研修医 参考書はじめの一歩(2)(OSCE対応)
3. 身体診察と臨床手技について
自分で医療面接をできるようになったら、いよいよ身体診察。実際に患者さんに触れることは、誰でも緊張するものです。自分の触れ方や、相手との呼吸の合わせ方がスムーズでないうちは、冷や汗をかきかき、頭の中が真っ白同然。そんな時に、最低限心にとどめておくことは何でしょうか? より侵襲的な臨床手技も含めて、一緒に少しずつ学習していきましょう。
3-① 診察と手技がみえる Vol. 1 (第2版)/Vol. 2 (OSCE対応)
言わずと知れた身体診察と臨床手技のバイブル。カラー写真が豊富で、診察と手技の流れに沿って丁寧に解説してくれます。OSCEやPCC-OSCEでも使えます。
初期研修医なりたてだと、何も知らず経験も浅いために、患者さんを前にすると緊張感をもってしまうもの。「診察と手技がみえる」は、その緊張感をとり、勇気ある一歩を踏み出すために最適な二冊です。
ただし、診察法や手技のやり方は書いてあっても、所見をとったあとのカルテの書き方が記載されていないため、私は下記に紹介する本を中心に使いました。
3-② ねじ子の ぐっとくる 体のみかた / 脳と神経のみかた /ヒミツ手技(OSCE対応)
医学生や初期研修医のミカタ、ねじ子先生。ほとんどのページが手書き文字+イラストで構成されています。身体診察・臨床手技に初めて触れる医学部3〜4年にとっては、とっつきやすい難易度のテキスト。それでいて、書かれている診察・手技のコツは、えてして上級医がうまく言語化できないために、学生・研修医が苦しんでいることだったりします。つまり、かゆいところに手が届く内容。
身体所見系は薄い本でこそあれ、基本は外していませんし、二冊をベースにして他書や実践で補完するとっかかりになります。所見をカルテに記載する書き方まで細かく載っているのが、とてもありがたい。手技系は細かいコツが記載されていて参考になります。多少ハイレベルなので、「ヒミツ手技」は研修医になってからでよいでしょう。
3-③ 診察マニュアル 身体所見のとり方(OSCE対応)
20年以上前の1996年に上梓された、今ではほとんど無名の本です。しかし、20年の時の流れを全く感じさせないクオリティ。むしろ機械の発達していない、古い時代の本だからこそ、身体診察を細かく行い、それが診断に深くかかわっていた時代の息吹を感じることができます。
白黒二色刷りで、しかもカメラやプリンタが発達していなかったため、多くのページはモノクロ写真とスケッチで構成されています。ですが、21世紀の今では倫理的に撮影の難しい写真や、本質を捉えた労作のスケッチが豊富なのも確かです。さらに、スケッチを写真と重ね合わせて内部を見やすくするなどの工夫もあります。
ポケットサイズなので、私は外来研修でこの一冊を使いました。余談ですが、「診察と手技がみえる」でカバーしていない診察法と所見の書き方(関節可動域など)も記載されていて重宝します。
3-④ ベッドサイドの神経の診かた
神経学的所見のとり方を詳しく学ぶならこれ! 指導医の学生時代にも存在していたロングセラー。
初学者にとっては一段専門的に思える神経学的所見を、わかりやすく分類して書いています。体裁が整理されているので、実際にやってみて弱点だとわかった技法を、独学で調べるのに適しています。腱反射のとり方ひとつとっても、出やすい肢位をイラストつきで解説してくれて、懇切丁寧です。
専門的で分量が多めなことから、一度「診察と手技がみえる」などのビジュアルに長けた書籍を参考に、神経学的所見をフルにとる経験をまずしてみることをおすすめします。そこから、改めて「ベッドサイドの神経のみかた」を参照すればよいのです。
なお、最新版を新品で買うと8,000円近くしますが、安い旧版で代用しても問題ありません。神経学的診察は人体の構造が変わらない限り、永遠に変わらないからです。
4. 検査について
基本的な検査や検査値の見方については、掲載以外にも多数の類書があります。私は下記掲載分を最も優先して読んでいます。
4-① レジデントのための やさしイイ胸部画像教室(第2版)
疾患検索だけでなく、健康診断や、入院時のルーティン検査に組み込まれている胸部X線。一枚の写真から、何をどこまで読めるのか、ポイントをおさえてガイドしてくれます。類書は複数あり、この一冊は最もポピュラーな本のひとつです。それぞれの画像について、病態をふまえて「なぜそうなるのか」を丁寧に解説しています。同じ要領で、胸部CTについても書いてあります。
興味深いことがひとつ。これを一読した後、呼吸器内科などで実際の患者さんの胸部X線写真を見てください。必ずしも理論と現場が一対一対応しているわけではないことがわかると思います。同じ写真に対して、現場がAと判断するか、Bと判断するか、専門家でさえ悩むケースが非常に多い。おそらく、その理由は、自然のふるまいを示した「画像」が、人間のことばに翻訳した「病態」に 100% クリアカットに還元できないからでしょう。同じことは、組織像と病態の関係を扱う病理学でもいえると思います。
4-② 3秒で心電図を読む本
著者の健康診断バイトから生まれた、心電図を瞬速で読む技法。それは、「正常な心電図を正常とみなし、空振りでもよいから異常と思われる心電図を見逃さない」というスタンスで一貫しています。理論的さがないかといえば、どっこい、循環器専門医としてのしっかりとした理論に裏づけられています。著者自身が「自動車の運転に慣れることと、自動車のパーツの知識をもつことは違う」と書いているように、まずは読み方に慣れて、その後に必要な理論があれば補強していくのが現実的でしょう。医学生時代、先見の明をもった同級生は、この一冊を授業の合間に読んでいました。
4-③ 劇的! 救急エコー塾
既存の医学書おすすめブログに記載があり、一読してわかりやすさを感じました。しかし私はエコーの基本的な手技に慣れていません。慣れてきたら再度更新いたします。
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