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責任をとってくれない人たち

悪性リンパ腫で入院中の radioya です。( ※ 2016/10/19追記:本日付けで無事に治療が終了し、退院いたしました )昨年の暮れくらいから頸部リンパ節の腫れを気にしながら仕事を続け、春先からは原因不明の咳に悩まされ、ゴールデンウィーク開けに診てもらったクリニックで「ちゃんと検査したほうがいい」と言われ、その後、悪性リンパ腫と診断されました。6月からはほぼ全ての仕事もお休みして、通院&入院による治療を続けています。

治療は基本的に「化学療法」。つまり「抗がん剤」ですね。6月からは定期的に通院しながら、点滴で抗がん剤を投与し、リンパ腫に存在するがん細胞を「寛解(ひとことで言うなら「悪さをしない状態」にすること)」させることに成功しました。その後の経過も順調です。ただ、この手のがんは「手術でとって終わり」というモノではないので、再発する可能性を下げるため、そして「根治」を目指すために、現在は「大量化学療法+造血幹細胞自家移植」という、名前だけ聞くとちょっと恐ろしい治療のために入院しているわけです。

さて、ここからが本題。

世の中には「声だけは大きいのに責任をとってくれない人」が山ほど存在します。「人工透析自業自得」の人を筆頭に、思いつきと勢いだけで、よかれと思って「問題提起」をした気になって満足している人たちがたくさんいます。これらの人たちに共通しているのは、「彼らは誰も責任をとらないし、とれないし、そもそも最初からとるつもりもない」ということです。元アナウンサーのニュースキャスターが責任を追及され、レギュラー番組を降板することになっても、別に発言の責任をとったことにはなりません。世の中を引っかき回して、周囲の人に迷惑をかけたことへのけじめをつけただけに過ぎないのです。

それでもまた、多くの人は思いつきと勢いだけで、よかれと思って「問題提起」をした気になって満足したがります。なぜならそれが「いいこと」「人のためになること」だと信じているからです。この病気になると、今まで他人事だと思っていたことが一気に「自分事」になってしまいます。その中でも多いのが、いわゆる「医者にかからずがんを治す」系のヤツです。「このがんは絶対切っちゃダメ」「抗がん剤は利権まみれ」「放射線治療は発がんリスクを高めるだけ」……と、まぁ、恐ろしい言葉が次々に、今まで以上の強さで目に入ってくるわけです。で、その先を読み進めると、「がんは熱に弱いので体温を上げるために熱いお風呂に入るべし。体温が1度上がれば免疫力は○○%アップする」「○○酸が豊富な○○油を料理に使ってデトックスを」みたいな話しか書いてない。で、「その論文を発表しようとしたら医療利権に握りつぶされた」とか「それでも周りの医者はみんなこの事実を認めている。隠蔽されている!」とか、まぁ、これまた漠然とした話で終わってるわけです。

この話の何が恐ろしいかって、こういった話を「善意」で広めている人には悪意の欠片もないということなんです。「いい話を聞いた!知人のがん患者に伝えなければ」「医療利権の悪を暴いて、困っている人に真実を知ってもらいたい!」と、まぁ本気で考えているわけです。

えー、ひとこと言わせてください。

責任とるつもりがないなら、素人は黙っていてください。

病気は人によってそれぞれ原因も症状も、対処すべき療法も変わります。無責任な人たちが言うことが本当なら、日本中に銭湯を増やして 45℃ くらいのあっつ〜いお湯にみんなで入れば、がんは撲滅できますね。身体にいい「○○油」も、最初は高くても頑張って大量生産すればみんなが安く買えるようになり、それによって寿命も延びて、日本の経済も活発になるわけです。

そして何より、日々患者さんと向き合っているお医者さんが、悔しい思いをすることもなくなります。もちろん、豊洲市場やオリンピックの例もあるように、利権にまみれた人たちも一定数存在するのでしょう。しかし、毎日患者さんの目を見て会話をして、その回復に全力を注いで身を削っているお医者さんの数のほうが多いのは明かです。

たったそれくらいのことに想像力をめぐらせることができずに、「抗がん剤は最初から直すつもりのない薬」「それよりも自然治癒力に頼った食事療法を」と、なぜ無責任に、自信満々に言えるのかがどうしてもわかりません。たまたまその人の体質や症状にあった対処法が適合すれば、もちろん自然治癒力も活かせることでしょう。でも、無責任にアドバイスする人たちは、血液検査の数値さえ知らずに、レントゲンやCTの画像さえ見ずに、そしてもちろん、医学の知識を何ひとつ持たないままで安易に「治療は何もしなくていい」と言い切るのです。これがどれほど恐ろしいことか、わかっていますか?

お医者さんや医療関係者は、少なくとも最大限の責任を持ちながら、最良の結果を導くためにその仕事を生業としています。もちろん、その中での限界や問題点もあるでしょう。でも、無責任に「医療が悪い」と言うだけで何もしない人たちのほうがはるかに悪質です。

口で思いつきの「立派っぽいこと」を言うだけで満足している人たちに、もう一度言わせてください。

責任とるつもりがないなら、素人は黙っていてください。


(※以下、2020年3月さらに追記)

僕はその後、2017年に再発し、「同種移植」というさらに苦しい治療を経て寛解し、二度目の社会復帰を果たしました。
しかし、2018年秋にこの「同種移植」の合併症である「慢性 GVHD(移植片対宿主病)が悪化し、またしても仕事を休んで入院。現在も極度のドライアイとそれに伴う視力低下のため昨年秋に25年間勤めていた会社を退社して、現在は自宅療養中です。

(この記事に共感していただき、なおかつ余裕があれば、お気持ちだけでもサポートしていただけると本当に嬉しいです。そして何より、がんになって悩んでいる人やその周辺の人たちにこのテキストが届いてくれることを願っています!)

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