腹部CTにおける消化管拡張の系統的読影法
こんにちは。放射線科医の@ごろ〜にゃです。
腹部CTを読影していると、腸管拡張があり、腸閉塞やイレウスが疑われる場合があります。
その際に、何も考えずに拡張した腸管を都度追っていると、かなり時間を取られます。
忙しい救急医療の現場で、ずっと画像ばかりを見ていたら周りから白い目で見られることもあるかもしれません。
そこで、消化管拡張を認めた際に、見逃しをできるだけ防ぎ、かつ読影時間の短縮ができる系統的読影法について紹介させていただきます。
出典は、
画像診断 Vol.36 No.10 2016 P984
レジデントのための腹部画像教室 P42
です。
消化管拡張の系統的読影法6STEP
系統的読影法は以下の6STEPからなります。
それぞれ見ていきましょう。
STEP1 上腸間膜動静脈を確認する
まず、上腸間膜動静脈を確認し、血栓を疑う所見がないかを確認します。
上腸間膜動脈に血栓があれば上腸間膜動脈閉塞症。
上腸間膜静脈に血栓があれば上腸間膜静脈血栓症。
とそれぞれ診断でき、それらが原因であることが判明します。
ただし、あくまで造影CTで確認できるもので、単純CTでは血栓がわからないことがありますので注意が必要です。
STEP2 食道から近位空腸までを追跡
食道から近位空腸までを追跡して、閉塞機転があれば、上部消化管閉塞症であることが判明します。
STEP3 直腸から盲腸までを追跡
直腸から盲腸までを追跡し、閉塞機転が
・あり→大腸閉塞症
・なし(なのに小腸〜結腸が拡張している)→イレウス(かつての麻痺性イレウス)
と判明します。
STEP4 腹腔辺縁を追跡
腹腔辺縁つまり、体表での腸管脱出を確認し、あれば外ヘルニアであると判明します。
なお外ヘルニアには以下のものが知られています。
ですので、外ヘルニアの有無を確認する際には、
鼠径部
腹壁
に着目して探すことが重要となります。
STEP5 閉塞部位を示唆する所見を探す
閉塞機転を示唆する所見である、
small bowel feces sign
beak sign
を探します。
あればそこが閉塞機転であり、小腸閉塞症であることがわかります。
small bowel feces signとは、小腸内には通常、液貯留かガスか何もないかですが、プツプツとガスを有する糞便用構造を認めた場合を言います。
この所見と認めた際にはその肛門側で閉塞機転があることを示唆する所見です。
beak signとは、小腸が鳥のクチバシ状に細くなる所見で、来れも閉塞機転を示唆する所見として知られています。
こういった所見がないかを探すのがSTEP5となります。
STEP6 拡張腸管を根気よく追跡し、閉塞機転を検索
それでも閉塞機転がはっきりしない場合は、最終手段として拡張腸管を根気よく追跡して閉塞機転を探します。
閉塞機転があれば、小腸閉塞症となりますし、閉塞機転がなければ、イレウス(かつての麻痺性イレウス)と判明します。
イレウスと診断した場合は、腹膜炎などが起こっていないか原因を検索します。
この系統的読影法の良いところ
この系統的読影法の良いところは、
STEP1 →上腸間膜動脈閉塞症などの重症疾患をまず除外している。STEP2,3→次に追える消化管部位を検索している。
STEP4→見つけやすい外ヘルニアを検索している。
STEP5→閉塞機転のヒントを検索している
STEP6→時間のかかる拡張腸管を追う作業を最終手段としている。
という点です。
この読影法でできるだけ漏れを防ぎ、時間短縮することができます。
動画にしました。
参考になれば幸いですm(_ _)m
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