胸部CTの読影の順番、見落としを防ぐためのコツ
胸部CTで特に肺結節を見落とすのは致命的(患者さんにとっても、読影する人にとっても・・・)となることがあります。
それだけでなく、胸部CTには、
・甲状腺
・乳腺
・胸壁
・縦隔
・脊柱管
などが写っているため、これらの病変もチェックする必要があります。
そこで今回はそういった見落としを防ぐための胸部CTの読影の順番について、書籍やTwitterも参考にしながらまとめました。
胸部CTには2種類の画像がある
胸部CTには
・肺野条件
・縦隔条件
の2種類の画像があります。
それぞれ見ていきましょう。
肺野条件の読影の順番・方法
読影の順番について記載のある書籍は実はかなり少ないです。
こちらのふくろう先生のツイートで「肺結節を見逃さないコツ」が記載されています。
外側の結節探しばかりに目が行きがちですが、見落としやすいのは血管の周囲の結節だったりします。
このツイートでは葉気管支〜区域気管支に沿って見ていくことでそういった結節を見落とさないように注意しよう!と記載されています。
またこちらの書籍でも肺野条件の読影の順番が記載されています。
肺野の読影の順番
肺野条件:肺野前1/3の範囲→外側1/3の範囲→後1/3の範囲に分けて左右で観察。両側主気管支→右上葉気管支→中葉気管支→下葉気管支→左上葉舌区の気管支→下葉の気管支
(CT読影レポート、この画像どう書く?P18)
と記載があります。
まず肺を前1/3、外1/3、後1/3と分けます。
そしてそれぞれを上から下まで左右別に見ていこうと記載があります。
1度に両側の全肺野を注視しながらスクロールするのはかなり困難であるためです。
そんな無理はしないで左右に分けて、さらに3つに分けて、つまり肺を6つに分けて、それを一つ一つ見ていけば見落としが減りますよということです。
こちらは右前1/3に相当します。
こちらは右外1/3に相当します。
こちらは右後1/3に相当します。
そしてその後で、先ほどのふくろう先生のツイートと同じように、気管支沿いに着目して
両側主気管支
→右上葉気管支
→中葉気管支
→下葉気管支
→左上葉舌区の気管支
→下葉の気管支
という順番で見ていくことで特に中枢側の結節の見落としを防げます。
縦隔条件の読影の順番・方法
続いて縦隔条件です。
こちらも、「CT読影レポート、この画像どう書く?」P18に著者が実際行っている縦隔条件の読影順が以下の様に記載されています。
縦隔条件:脊柱管→乳腺→腋窩→胸骨傍リンパ節→甲状腺→鎖骨上窩リンパ節→背部皮下組織→心臓→胸膜と胸水→大動脈→縦隔リンパ節→肺門リンパ節→肺動脈
(CT読影レポート、この画像どう書く?P18)
また、画像診断を考える(第1版)のP23には以下の手順が記載されています。
胸部は2種類の条件があるので、肺野条件で肺野を上からチェックし、そのあと縦隔条件で、臓器別 (縦隔、リンパ節、胸膜、胸壁、乳腺、甲状腺、心臓、大動脈、食道など)に見ていきます。
(画像診断を考える-よりよい診断のためにP23)
これらをきちんと臓器別でチェックしていくことをルーチンとすることで、
ただなんとなく読影している
という状態を回避し、漏れなくくまなく読影できます。
という以上の読影の手順を動画にしました。
なお胸部CTの肺野条件、縦隔条件の正常解剖はこちらで確認いただけます(PCのみ対応です)。
参考にしていただければ幸いです(^^)
~~2020年4月19日追記~~
動画を見てくださった研修医のささぶね先生が独自の読影順序を作られましたので紹介させていただきます。
動画を視聴してみて、縦隔条件の順番をどうやって覚えるかしばらく悩みました。
ゴロなどを使って覚えようかと思ったのですが、結局目線の動かし方がスムーズになるような順番で読影することにしました。
具体的には、
◎体表面は背側→腹側の順
脊柱管→背部皮下組織→腋窩→乳腺→胸骨傍リンパ節
◎首は上から下に向かって、
甲状腺→鎖骨上リンパ節
◎循環器は一本の管と捉えて血液の流れの順に、
上・下大静脈→右房→右室→肺動脈→肺静脈→左房→左室→大動脈
◎気管食道は上から下に、
食道→上腹部臓器、気管→気管支
◎リンパ節はリンパ流(癌がリンパ行性転移していく順番)に合わせて、
外側の肺門部リンパ節から内側の縦隔リンパ節(特に#4,#7リンパ節)に向けて、
◎最後に胸膜・胸水
この順番に読影をしてみて、見逃しなど改善点があれば改正していきたいと思います!
これまで自分の中で読影手順の指針が定まらず悶々としていたので、とりあえず大枠が決まって大変うれしいです。