面白い幼なじみ

小学生になるまで、たくさん引越しを経験した。
6歳までに4回、たくさんの友達と出会い、たくさんの別れもあった。

当時、LINEやtwitterなどのSNSもなかったし、何より手紙の書き方だってわからなかったのだから、6歳になるまでの友達で今もつながっている人は残念ながら一人もいない。

だから、地元の友達(小学校の同級生)というのが、私にとって今もつながっているもっとも古い友人ということになる。

そんな地元の友達の中でも、特に深くつながった男、かずまがいる。
かずまは、実は1年生のころから一緒ではなく、2年生の3学期に転校してきた子だった。

家が隣(と言っても、隣接する別棟のマンションで向かい合うベランダという感じだが)だったので、当時からよく遊んだ。
今でも、ふと実家に帰るとベランダ越しに家の電気がついているかなとのぞいて見ては、妙な安心感を覚えている。

かずまには色々な習い事に誘ってもらった、空手、水泳、そして英語劇で英会話を学ぶものである、他にもあったかもしれないが忘れた。

特に、英会話は大学を卒業するまで続けたので、中学校、高校、大学はお互い別の学校だったものの、長い付き合いとなったのだ。
このかずまという男は、とても面白い男で、月並みな言葉で言えば「凝り性」なのかもしれないが、これと決めたことをとことん追究する変態的な才能の持ち主である。

例えば、彼は中学生くらいの頃にマンガにハマった。
普通は、ハマると言ってもお気に入りのマンガの単行本を収集したり、週刊誌を購読したり、とその程度だと思う。(実際、私も「こち亀」にハマったがまさに単行本を収集する程度だった。)
しかし、かずまは次から次へとお気に入りを見つけては、収集、読破していき、当時の週末はおそらく古本屋巡りを繰り返し、数千冊におよぶマンガの書庫を部屋に完成させたのだ。

高校生くらいになると今度は音楽にハマった。
例の如く、次から次へと様々なジャンルの音楽に手を出しては、CDを収集し、音楽鑑賞を楽しみ、部屋はTSUTAYAになった。

大学生になり、今度は日本酒にハマった。
梅田(大阪)の日本酒BARでバイトをしながら、まかないだからと日本全国の日本酒を飲ませてもらい(かずまが勝手に飲んでいただけかもしれないが、まぁそれはさておこう)、次から次へとお気に入りの日本酒を見つけ、また日本酒の知識も豊富になって行った。

他にも、ファッションにハマった。この時は急にお洒落になったので驚いた。
古着屋をめぐって、色々なブランドの服を安く仕入れては、着こなし、また古着屋に持っていくという凝ったハマり方をしていた。
地球にも優しい男だと思った。

彼に、色々と教えてもらうのはとても勉強になるし、話を聞くだけで面白い。
そして、彼にその「収集癖」は君の才能だと思うよという話を何度もしてきた。
だが、かずま曰く、「上には上がいるから俺のレベルなんて大したことないよ」とのこと。そのセリフは、それなりに極めた者の境地だ。

私が思うに、彼は興味をもったことに対して、人一倍関心が高く、程よく満足をすることを知らない男なのである。きっと彼の思考回路はこうだと思う、(1)お気に入りを見つける、(2)お気に入りの周辺を漁って楽しむ、(3)もっと自分好みがあると信じてさらに探す、(4)案の定またお気に入りを見つける、(5)またお気に入りの周辺を漁って楽しむ、、、この無限ループなのだと思う。

私は大学院で研究をする者だが、彼の才能はまさに研究者に向いてると思う。どこぞの大学教授もそういうところがある(と思う)。まぁ、彼は堅苦しい世界が嫌いだそうだから(そんなこともないと思うのだが)、あくまで趣味として楽しむのだろうけれど、いつか彼が(彼の好きな分野で)大学院へ行ったらもっと楽しいだろうなと思う。

そんなかずまは、この4月から社会人として上京し、頑張っている(と言ってもコロナのために仕事や研修はそれほどでもなさそうだが)。生まれて初めての一人暮らしで今度は料理にハマったらしい。調味料(スパイス)が収納しきれないと嘆いていた。彼の手料理を食べるのが次の楽しみだ。

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