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『ボーはおそれている』の元ネタ映画『マルホランドドライブ』との関係を考察
ボーはおそれているが難解である最大の理由は本作がデビッドリンチ監督の『マルホランドドライブ』を元に作られていることにある。
『マルホランドドライブ』を観たことがない人が『ボーはおそれている』を見ても理解不能になるのは言うまでもないが、観たことがあったとしても『ボーはおそれている』以上に難解な映画なので、マルホランドドライブ』を元に作られているということにも非常に気付きにくい。
今回はこの二作品の関係について解説していく。
分かりやすい共通点
共通点1:ペンキのシーン
『マルホランドドライブ』を元に作られている最大の証拠はペンキをぶちまけるシーンである。トニーがピンクと青のペンキをぶちまけていたシーンがあったと思うが、これは明らかに『マルホランドドライブ』から引用してきている。
どちらのシーンも
男が女と揉みあいになり家を追い出される
男の服にペンキがつく
青とピンクのペンキが登場する
という共通点がある
共通点2:プールのジーン
これは日本語字幕には訳されていないのだが、ボーがエレインと初めて会ったクルーズ船の回想シーンにおいて、エレインがプールに浮いていた水死体をバックにボーに写真を撮るよう指示するとき
take a picture of me and Gene.(私とジーンの写真を撮って)
と言うのである
つまり水死体の男の名前はジーンということになる。
なぜエレインが水死体の名前を知っていたのかという事は一旦置いておいて、プールのジーンという男はマルホランドドライブにも登場している。
先ほどのビデオ内に出てくる女性と一緒にベッドに入っていた男性がジーンという人物で、彼はプールの清掃の仕事をしていることが示唆されている。
![](https://assets.st-note.com/img/1725172656986-Pcjo51nGoW.jpg)
大枠の共通点
この二つの分かりやすい共通点を見たところで、この二つの映画全体の構造を比較してみると様々な場面が非常に似ていることが分かるので解説していく。
共通点1:自動車事故から物語が始まる
共通点2:主人公の死で映画が終わる
共通点3:クラブシレンシヲ
マルホランドドライブで主人公たちが途中クラブシレンシヲに訪れ演劇を鑑賞するシーンがあるがこれが本作の演劇シーン、さらにはラストの水上裁判のシーンと非常に似ている。
特に最後の水上裁判のシーンでボーを弾劾する弁護士とその隣で一言も発さず座っている母親はクラブシレンシヲのマジシャン、脇に座っている青髪の女と一致する。
![](https://assets.st-note.com/img/1725173594256-uD3FNyOSvm.jpg?width=1200)
元ネタの元ネタ
マルホランドドライブとの共通点を列挙してきたが、実はこの二つの作品には共通の元ネタとなっている作品があり、それは意外かもしれないが1939年の映画『オズの魔法使い』である。
なので『マルホランドドライブ』と照らし合わせて考えないと『ボーはおそれている』も分からないように、『オズの魔法使い』と照らし合わせないと『マルホランドドライブ』を解釈するのも難しい。
なぜ『オズの魔法使い』がこれほどいろいろな作品に引用されるかというと、『オズの魔法使い』は一見ただのファンタジーに見えるかもしれないがそうではなく、主人公ドロシーが現実世界で抱えている悩みや人間関係を空想の世界、あるいは夢の世界でのファンタジーに置き換えて解決していくという、ある意味フロイトなどの夢診断と非常に似たテーマを取り扱っているからである。
なので『ボーはおそれている』に興味を持ったならこの二作品は本作を解釈するのに非常に重要になってくるので観てみることをお勧めする。
なお『マルホランドドライブ』については角川が販売している近年リマスターされた最新版において、オリジナルの翻訳から違う方の翻訳に変更されており、その結果物語を考察するのに必要な情報がそぎ落とされてしまっている。
アマプラなどの配信サービスではその改悪版の方しか見れないので、ポニーキャニオンから発売されているオリジナル版のDVDを視聴することをお勧めする。(メルカリで1000円くらいで買えます)
![](https://assets.st-note.com/img/1725175735047-uxweKcSmUz.jpg)
次回からはこの二作品と関連付けて説明する予定なので興味があればぜひ見ていただきたい。