見出し画像

奥信濃への道 第10走:開かぬ橋

北へ南へ西へ東へ、どこへでもアプローチできて走る場所に事欠かない街、門前仲町。
川に遮られる東京ヒエラルキーにおいて河川の存在はあまりにも大きい。そんな河川の一つ隅田川は私のランニングスポットとしても非常に有意義な場所であるが故にバリエーションにも富んでいる。
前回豊洲や浅草まで走ってみたが、今回は河口付近の月島地区へ向かう。
いつも通り永代橋から南下して晴海運河を横目に中之島経由で佃橋へ延びる河川敷の整備された公園は快走区間だ。そのまま勝鬨橋を目指す。

私にとっての勝鬨橋はかの有名な通称「こち亀」でも何度も取り上げられ、高さ制限に抵触するサイズの船舶航行の際は橋が開門するという異例の橋脚ではあるが、それは昔の話で今となっては固定された橋として運用されている。
実際のところ稼働出来るギミックは搭載されているのだろう、しかし整備がされていない為、今後二度と開くことはないだろう。そんな勝鬨橋も他の隅田川に架かる橋同様にケバケバしくライトアップされている。何故だ。
橋を北に渡り対岸で帰ろうと考えていた私の突如脳裏に浮かんだのは、配送が届くのが今日だったことを思い出す。

あぁ…19時には家に帰らないといけないのか。

そんな気持ちを思い出し時計を見ると18時40分。あと20分しかない……。こりゃいかんと一路、進路を南に変更し帰宅を急ぐサラリーマンや買い物帰りの主婦をかき分け月島側へ走り出す。

月島は言わずと知れた”もんじゃ焼き”の街だ。しかし私にとっては小さく雰囲気の良い居酒屋が点在するスポット、お店が非常に気になる。
走りながら横目で満席の居酒屋を確認しながら近くの信号名を記憶する。そうだ、後で地図と照らし合わせ行きたい店リストに追加する為であり私のライフワークのひとつ。
活気のある店内は外からでもよくわかる、綺麗すぎず少し汚い、古いぐらいが私にはちょうど良い、いつの日か、その店で生ビールを飲んでいる自分を想像しながら北へ向かう。

丁度19時に我が家に到着し、走行距離は短めの約7km、平日にさらっと走るには良い距離だ。少し前の自分であれば、おなか一杯脚一杯の距離ではあったが継続は力なり、少し物足りなさすら感じるので人間は進化する生き物だと痛感する。実際のところ退化も早いものだが。

荷物を持って来てくれる飛脚の会社は20時少し前にやってきた。今週末に使うものだから受け取れてよかった、現代の配送インフラの大勝利であり感謝である。

今宵のビールは走った距離に比例して少なめにしておこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?