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激怒したメロスのすねを打つカーン

シリーズ・現代川柳と短文 084
(写真でラジオポトフ川柳172) 

 車内アナウンスが途切れると、隣の席のスーツ姿の男が「新幹線って読書が進みますよね」と、左手に持っている文庫本の表紙をちらちら見せながら言ってきた。激怒した男が走りまくるやつだ。主人公が懸命に走る話を時速300キロの新幹線の中で読める人の気が知れないです。わたしがそう言うと男は右手につまんでいたさくらんぼを頬張って、にやりと微笑んで舌を出した。そこには結ばれた茎が載って、いなかった。ただ舌を出しただけ。なんなんだ。新幹線はもうすぐ新青森に着くところだった。

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