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ねぎとろと訳した森が燃えていく
現代川柳と400字雑文 その81
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教員のHさんが幼いころの話。なにかの祝い事で親戚の家を訪れ、そこで寿司桶に入った出前の握り寿司をご馳走になった。ぎょっとしたのは、桶びっしりにねぎとろの軍艦巻きが入っていたことだ。ねぎとろはHさんの好物だった。にこにこと見守る親戚たちの前でHさんが桶の半分ほどを食べると、すぐにべつの寿司桶が出てきた。奇妙なことに、その桶にはなにも入っておらず、しかし桶の縁に、ぽつん、ぽつん、ぽつんと3つのねぎとろ軍艦がちょうど正三角形を描くように乗せられていた。3つの頂点のうちひとつはHさんを、残りのふたつはそれぞれその日初めて見た中年の男女を指しており、そこでHさんは、その家に来てからずっと自分を含むその3人しかねぎとろを食べていないことに気がついた。その他の人びとはお茶の湯呑みにすら手をつけていない。おかしい。と、そのとき突然Hさんの父親が、やっぱりだめだ、と言って立ち上がり、Hさんの手を無理に引っぱって車に乗せると、そのままHさんたち家族は帰宅してしまった。その際、なぜか途中で回転寿司店に立ち寄り、先ほど腹いっぱい食べたにもかかわらず、大量のねぎとろ軍艦を食べさせられたそうだ。大人になってからあの日のあれはなんだったのかと尋ねても、家族の者はみな「そんなことがあっただろうか」という顔になり、しらを切っている様子もない。
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