「やまだひさしのタク(宅)アンリミテッド」第3回-映画篇- まとめ
顔見せ系リモートチャンネル「RADIO 9」がお送りする、
「やまだひさしのタク(宅)アンリミテッド」第3回を、
5月31日(日)にYouTube LIVEにて生配信いたしました。
今回は、映画業界関係者をゲストに招き、”withコロナ時代の映画業界”をテーマに語り合いました。
0'00" オープニングトーク
4'20" 出演者、全員登場〜挨拶
14'34" 坪井篤史さんから、名古屋のミニシアター"シネマスコーレ"の現状
22'54" 浅井隆さんから、ステップ2前日のアップリンクの現状
26'55" 有田浩介さんから、映画配給の現状
32'37" ベルリンの玉腰兼人さんから、ドイツの映画業界の現状
38'23" 内田英治さんから、止まってしまった映画製作について
43'21" 山田佳奈さんから、演劇の劇場について
46'48" 内田慈さんから、出演作の延期や中止について
52'40" 渡辺いっけいさんから、主演作の延期について
58'26" 新作映画の舞台挨拶について
1°00'43" 映画のビジネスについて
1°03'53" リモートによる作品制作について
1°07'07" ミニシアターの重要性について
1°13'07" 山田佳奈監督作「タイトル、拒絶」について
1°17'32" 映画出演者の立場から
1°24'02" 劇場と配信の共存について
1°34'23" 株式会社ショウワさんが提供して下さるマスクについて
1°36'51" エンディングトーク
■ 内田英治(映画監督)
今のコロナ対策は、大手企業が主導する、映画なり映像という枠で考えられています。
我々演出家とか役者とかスタッフとか、9割フリーランスなので、守られていない人が多い。
この問題は、みんなで考えていかないといけない。
僕がいま映画を撮れるのもミニシアターのおかげ。
他の国は、助成金や組合が充実しているので、そこで新人監督が育つが、
日本には両方ともありません。そこをミニシアターが一手に引き受けている。
感情論ではなく、ミニシアターが無くなってしまえば、新人が一切育たなくなります。
■ 渡辺いっけい(俳優)
食えない貧乏演劇青年だった時代、
芝居の事を考えたくなくて、劇団を辞めたんですが、
その時以来ですね、こんなに演技をしていないのは。
俺、いま役者って言えるのかな?とか思ったりもします。
映画館って風通しが悪いイメージがあったりしますが、
実際は、除菌なども含めしっかりやられています。
暗闇・密室でリスクが高いという様な、間違った観念があるので、そこはひっくり返したいですね。
4月に公開予定だった初主演映画『いつくしみふかき』は、6/19(金)に延期されました。
自主映画みたいなモノなので、宣伝費もなく、舞台挨拶を毎日やろうとスケジュールを組んでいましたが、少し厳しそうです。
何とか安全な方法を考えて、シネマスコーレさんでは舞台挨拶がしたいです!
■ 内田慈(女優)
私は出演予定だったCM・映画・ドラマなどが中止になりました。
他県で撮影予定のモノは、現地の受け入れがスムーズにいくか分からないという事や、このコロナ禍で、いろんな価値観が変化していく中、今の考えで作った映画が、1年以上後に公開されるという事に対する不安など、中止の理由は様々あります。
自粛の期間は、そもそも何で芝居を始めたのか?とか、自分と向き合う時間を作りました。
実人生だと、どうしても自分の観点で他人を見てしまい、中々他者に寄り添えないが、俳優として演じる時は、どこかに手掛かりがないか、自分との接点を見つけようとします。
私にとって芝居は、他者を知る事だと思いました。
それは映画を観ているお客さんにとっても同じで、家族とかが、訳の分からない事を言うとムカつくけど、スクリーンに映っているモノは、自分事の様に感じられますよね?
そういう超個人的な自分と向き合っている空間を、他人と共有するというのが映画館という場所だと思います。
ステイホーム期間中は、皆さんも文化芸術の必要性を感じたと思います。
私も今日はいろんな立場の方とお話しが出来て、前向きな気持ちになれました。早く劇場や現場で、濃厚接触がしたいです。
■ 山田佳奈(脚本/舞台演出/映画監督/女優)
私は映画監督の傍ら、舞台演出をしていますが、
演劇は、座席数7割くらいの収入見込みで公演を打ちます。
なので座席を半分にした時点で赤字です。
小劇場の劇団というのは、公演主催者とクリエイター、両方兼ね備えている所が多いのですが、
例えば300人規模の劇場で1週間公演すると、大体2000万弱お金がかかります。
小劇場やミニシアターというのは、若手が誰かに見つけてもらったり、
自分の技術を養っていく大切な場所ですが、
こういった負債を抱えてしまうと、次の創作も難しくなります。
映画監督としては『おうちで映画制作部』というプロジェクトに参加して、
完全リモートの映画制作にチャレンジしているところです。
スマホを使うので、狭い所にカメラが入れたり、リモートならではの即効性だったり、良い部分もありますが、
予算が組まれた現場ではない場合だと、俳優さん自身が、機材のセッティングをしなくてはいけないので、そこが大変。
やはり映画というのは、照明さんだったり、カメラマンだったり、
それぞれの分野の拘りが画になっているので、なかなか難しい部分があります。
映画って配信でも素晴らしいモノはありますが、私たちは、映画館で上映される前提で、音だったり色だったり決めています。
なので映画監督としては、映画館で作品を観て欲しいという想いがあります。
■ 浅井隆(アップリンク 代表)
アップリンクは明日6/1(月)から復館しますが、予約状況を見ると、初日以降は厳しいです。
映画館の組合のルールで1席飛ばしで座席を作るので40席ある所を20席にしなくてはならない。
赤字にしない為には席を増やしたいところですが、まずは安心第一ですね。
レストランなどでは対面の食事に気を付けたりしますが、
映画・舞台の客席は横並びですし、そもそも観賞中に話さないので、飛沫感染のリスクも少ないですよね。
今のガイドラインは、科学的な根拠が十分ではありません。
映画界と演劇界がすべき事は、専門家に意見を聞いて、新たな指針を作る事だと思います。
このままだと、みんな死んでしまう。
先ほど、いっけいさんも、映画館に風通しが悪いイメージがあると仰っていたが、そんな事はないです。
換気については、法律で定められているので、皆さんの寝室より換気はいいですよ。
この問題については、僕のnoteでも記事にしているのでチェックしてください!
■ 坪井篤史(シネマスコーレ 副支配人)
シネマスコーレは5/23(土)から復館しましたが、お客さんが戻ってこない状況です。
ミニシアターというのは、午前中~お昼くらいまでシニア層がメインなので、そういったお客さんが、わざわざ電車に乗って、密閉空間である映画館に来るというのは、少しハードルが高いのかもしれない。
今は51席を26席にして営業しているが、これが全席埋まったとしても赤字。
でも実際は1日トータルで20人程度なので、“赤の赤”という感じ。
営業すればするほど閉館に追い込まれてしまうが、
みんなこの事実に気づきながらも、何とか頑張っている。
1週間、営業再開して思ったのは、映画館でお客さまの顔を観れるのは嬉しいという事。
渡辺いっけいさんの『いつくしみふかき』も、
内田慈さんの『レディ・トゥ・レディ』も、
こちらで上映しますので、是非とも映画館にお越しください。
■ 有田浩介(サニーフィルム 代表)
劇場で映画を観れないという状況は、配給会社も映画を興行出来ないという事。
サニーフィルムでは、9月に3本の映画を予定していたが、
それが全て延期になってしまい、年内中に何とか公開出来るかどうか?という感じです。
売上は、今のところ全くゼロですが、それでも配給会社というのは、
先々の興行に向けて、映画の権利を購入していかなくてはならない。
とはいえ、この状況はポジティブに捉えていて、
僕たちは若い会社ですが、世の中が止まっている今だからこそ、
良い枠に良い映画をブッキングする事が出来る。
キツイはキツイが、ピンチはチャンスだと思っています。
コロナ禍もあって、皆さん「デジタルの便利さ」と「フィジカルな暖かさ」に気づいたと思います。
リモートは便利な面もありますが、配給の仕事は、
やはり人と会って、直接会話する事の方が、アイディアは生まれやすいです。
そういう映画っぽさは、映画館にもあって、私が配給したシリア内戦がテーマの映画があるんですが、
その作品は、戦場で大きな音が出たりする中、お父さんが息子を抱き上げる場面で、急に音が無音になるんですね。
お客さんの溜息や泣き声が聴こえてきて、それら全てが音響なんです。
そういう感じは、配信では味わえない魅力だと思います。
小さいながらも映画配給会社の端くれとして
これからも作品を多くのファンに届けたいと思っています。
我々の仕事は、クリエイティブする事なので、
悲観せずに、とにかく前を向いて頑張っていきたい。
■ 玉腰兼人(映像プロデューサー)
ベルリンでは、地下鉄とかスーパーなど屋内ではマスクをしますが、
外でしている人は少なくなってきました。
映画館は6/30まで閉まっていますが、来週6/9から野外映画館がスタートします。
こちらは、世界三大映画祭のひとつに数えられる、
『ベルリン国際映画祭』が開催されている都市なので、
映画ファンも多く、再開へ向けて盛り上がってきています。
先日ドイツではフリーランサーに緊急援助金が下りまして、
どんな職種であれ、申請すると2・3日で5000ユーロ(日本円で約60万円)が振り込まれました。
それは私のような外国人でも支給されます。
このスピード感や大幅なサポートは、世界からも注目されています。
いま僕が立っている場所『アレクサンダー広場』は、
一か月前は、死んだ状態でしたが、ようやく人も戻ってきました。
それは一人一人がマスクを着けて身を守り、他人の事を考えて動いた結果だと思います。
日本の状況も、一刻も早く進展して、映画制作の現場が復活する事を祈っています。
番組後記 シャ・ラ・ラ・カンパニー 中曽根勇一郎
緊急事態宣言が解除され、いよいよ明日から
ステップ2に移行するという前日。
3回目の宅アンリミテッドは、映画業界特集として企画され
顔見せフレームでは、錚々たるメンバーが登場しました。
俳優、監督、劇場運営、配給とさまざまな立場の方達による、
四方八方からの意見やアイデアが飛び交い、
ベルリンからは外出解除になった日曜昼の街の様子を、
スマホの動画で生中継をしてもらいました。
俳優、監督、配給、劇場、そして観客が支え合うミニシアター系の生態系を知り、「劇場で映画を観る」という行為自体を考える機会となりました。
番組中「3密のイメージがある映画館は実は換気がしっかりされていて、家のベッドルームよりも安全」
というアップリンク浅井さんの発言に刺激を受けて、
今月中には、「実は映画館は安全です。」というラジオCMを自主制作して、
全国の民放各社に自主納品する決意を固めました。