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空飛ぶ光球を見た話

 亡くなったわたしの父は、いろいろ不思議な
話をしてくれた。
 その中に、いわゆるヒカリモノを見たという体験談があった。人魂とか、空飛ぶ光球とか、アマツキツネとか、そういう奴ね。
 仕事帰り、薄暗い道を歩いていると、墓場から、すうっとオレンジ色の光球が飛び上がり、かなりの高さまで昇ると、フッと消えた。
 またある時、友達の運転で高速道路を走っていると、はるか先の空に、光る玉が浮いていた。それはゆっくりゆっくり、地上に向かって降りていった。
 どちらも、ただそれだけの体験だ。何か異変が起こったわけではない。

 そんな父の遺伝なのか、わたしも2回ほど、空に不思議なヒカリモノをみたことがある。
 まだ、小学生に上がるか上がらないかの頃。おそらく夕食前だろう。
 空に、緑色に光る糸くずのカタマリのようなものが浮かんでいた。あれはなんだろうね、と家族で会話していたのを覚えている。
 もう一つは、高校の部活帰りだったと思う。
 電信柱よりも少し高い位置に、緑色の光球が、火花を散らせながら飛んでいった。花火かとも思ったが、あの高さを横に飛んでいく花火があるだろうかと、不思議に思った。

 その後、何かの怪異がわたしの身の回りに起こったわけではない。
 ただ、不思議な体験として未だに印象にのこっている。

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