残業隠しは罪になる?

 給特法による教員の「定額働かせ放題」や時間外労働による過労死が問題になったとき、教員の労務管理(勤怠管理システム)がザルであることが指摘された。

警備解除して残業

 多くの学校には警備システムか導入されており、最終退勤者が起動して帰宅することになっているが、フェイルセーフ機能としてリマインダーが設定されている。この時刻を過ぎても警備システムが起動されないと警備会社から電話が入り、その電話が取られない場合には、警備会社から遠隔でシステムが起動される仕組みである。

 リマインダーの時刻を過ぎて勤務することが予めわかっている場合、所定の方法でリマインダーを再設定する。この方法は学校安全と直結しているので共有されないことがほとんどであるが、超過勤務が常態化している学校では、ほぼすべての教員がその方法に精通している。

勤怠管理票で嘘をつく

 勤怠管理システムとしてお上から配布されたExcelマクロには、超過時間によって「無理しないでね」「早く帰ってね」などのメッセージがドギツい背景色とともに自動表示されるものがあった。「過労死基準」を超えさせないための警告なのだが、職員室のコードで翻訳すると「管理職面談したいかい?」「産業医が出てきちゃうよ?」である。

 ある教諭は「80超えるとムダな仕事(校長面談)が増える」と、超過時間が79時間40分程度になるように過少申告していたが、実際は100時間を超えていた。一方、ある講師は「校長も産業医も面談するのは教諭だけ」と実際の勤務時間を入力したところ、超過時間が196時間20分となり教頭から指導されたという。「教頭先生が取りまとめて教委に出すときに叱られたみたい。悪いことをした」。

タイムカード打ってから残業

 働き方改革のためにタイムカードを導入してみたものの、「みなさん定時ですので、そろそろ…」という管理職の声かけで、職員室にいる教員が一斉に打刻したあと仕事に戻るというギャグを大真面目にやっている学校もあるらしい。何のためのタイムカードなのか。

 なお、嘘をつきたくない正直者の先生におすすめの方法として「直帰」で打刻というものがある。これをすると自動的に定時退勤した扱いになるのである…毎日出張してはるの?

公文書偽造?

 これらの行為は、公文書偽造なのではないかという指摘もある。私は法律の専門家ではないが、法律の条文を参照して考えてみる(条文はWikipediaから)。

第155条
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前2項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

 教育委員会に提出することは行使にあたる。勤怠管理票には押印署名の必要がないため、1項と2項には該当しないだろう。一部の管理職(教育委員会に提出する前に超過勤務80時間未満に改ざんした教頭など)は3項に抵触するとおもわれる。

第156条
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前2条の例による。

 当番教員の書く学校日誌(要押印)の最終退勤時刻に嘘書いたら懲役ということか。

第158条
第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

 告発されたら、日本中の公立学校教員が懲役か罰金食らってしまうぞ!?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?