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AI・XR技術の発展により未来の教育はどう変わる?

私は現在教育関係の仕事に就いていますが、「AIが発展すればこのような仕事は10年後、20年後には無くなる(少なくとも減っていく)だろうな」と感じています。
Googleの猫認識からChatGPTまで。さらにはOculus RiftからApple Vision Proまで。昨今のAI・XR技術の隆盛を見聞きしながら、未来の教育はどう変わっていくのだろうかとここのところ漠然と考えていたが、それらの考え(妄想?)をまとめるために文章にすることにしました。

先に断っておくと、きっと私と似たようなことを考えた人はごまんといるはずです。実際「AI XR 教育」で検索すると、この記事に似た内容のページをいくつか見つけられます。けれど、構想は頭の中に留めておくよりも世の中に発信したほうが実現が早まるし、ここに書くようなことがらについての議論が世間で少しでも活発に行われるようになって欲しいと願っているので、ここに私の考えを残しておこうと思います。

前置きはこのくらいにして本題に移りましょう。
私が想像する、AI・XR技術の発展により到来する未来の教育を考える上で重要なポイントは以下の3つです。

  1. AIエージェントと学ぶことで、教師が(完全にではないにしても)要らなくなる

  2. XR(VR・AR)環境で学ぶことで、学校に通う必要が無くなる

  3. 学ぶことと働くことがシームレスに繋がる

以下それぞれについて説明していきます。


1. AIエージェントと学ぶ

ここで言うAIエージェントとは、ユヴァル・ノア・ハラリが『ホモ・デウス』で示したような、執事、またはコンシェルジュのように働く人工知能のことです。主人(パートナー)がどのようなことに関心を持ち、どのような才能に長け、何を欲しているのかを日頃の対話やアクティビティから判断し、それに応じたサービスを提供する。今の技術発展の速度から考えれば、このようなサービスは遠くない未来に実現するはずです。このようなAIエージェントが教育に関わる未来では、どのような変化が起こるでしょうか?

対話型で学べるようになる

まず思い浮かぶ変化は、情報の伝達形態が多対一の講義型ではなく一対一の対話型になるということです。ご存知の通り、小学校から大学まで、講義型の授業の場合は講義→家庭学習→テスト→次の講義…というサイクルを繰り返して知識や技術を身に着けていきます。そしていつ何を学ぶかはカリキュラムで定められているため、期間内に知識や技術を身に着けられなかった人は、「勉強ができない」と判断されます。しかし、AIエージェントとの対話型の学習ならば、新しい知識や技術を知る→分かる→できるまで、いくらでも時間をかけて、手取り足取り付き合ってもらえるでしょう。また、情報端末さえあればいつでもどこでも学習することができるようになるため、「学校に通う」ということすら必要無くなるかもしれません。

学びがパーソナライズされる

AIエージェントと一対一の対話型で学ぶスタイルでは、学ぶ内容が個々人で別々のものになるでしょう。カリキュラムを組んで一律に教え込むシステムは、学校制度の都合上仕方なく存在しているものなので、その必要が無くなればすぐに無くなるはずです(と私は思っています)。最低限の読み書きはすべての学習者ができる必要があるでしょうが、それ以降すべての学習はAIエージェントがリコメンドしてくれる自分好みのものになるでしょう。
人間、興味のあることには夢中になれるものです。夢中になって何か一つのことを極めたならば、次に学ぶ分野が全く違うものであったとしても、得意なことに当てはめて要領よく学ぶことができるでしょう。
「天才とは、蝶を追っていつの間にか山頂に登っている少年である」という言葉がありますが、凡人にできないのは蝶を追うことではなく、蝶を探すことです。生涯のうちに自分が追いたい蝶を見つけられる人が稀なだけで、本当は皆何かの天才なのだと思います。AIエージェントが学びをパーソナライズする未来では、皆が自分の追いたい蝶を見つけられるかもしれません。

学びの幅が広がる

学問であれば小学校レベルから大学院レベルまで、あらゆる分野の知を学ぶことができるようになるでしょう。また、人間が学習するのは何も学問だけではありません。趣味やスポーツ、作法に至るまで、ありとあらゆるものがAIエージェントに教わる対象になり得ます(AIエージェントがあらゆる分野を網羅するまでにはそれなりに時間がかかるでしょうが、できなくはないでしょう)。

2. XR(VR・AR)環境で学ぶ

次はXR技術が発展することで起こりうる教育の変化を考えていきます。

AIエージェントが仮想空間を生成する

3Dモデルを生成するAIは既に登場し始めていますが、いずれは複雑な仮想空間を丸ごと生成するAIも実現するはずです。前項で登場したAIエージェントが仮想空間を作成する能力を持てば、学びたいことがらに合わせて仮想空間を生成することができるようになるでしょう。
仮想空間であれば、立体的な視覚情報以外にも、聴覚情報や触覚情報(さらに技術が発達すれば嗅覚や味覚情報まで)を好きなタイミングで提示することができます。また、仮想空間内にはインタラクティブなオブジェクトも配置できるので、手を動かして学ぶということもできるはずです。

「体で学ぶ」ことができる

バットやラケットの振り方や泳ぎ方など、スポーツを行う際の体の使い方は、教科書を読んだり、動画を見たりしてもなかなか学ぶことができないものです。しかし、仮想空間には手も足もトラッキングすることで没入させることができるので、自分の体を動かしながら学ぶことができるようになるでしょう。

3. 学ぶことと働くことがシームレスに繋がる

学んだ内容や、熟達度によって仕事が来るようになる

AIエージェントとXR環境によって、大学レベル・プロレベルの知識やスキルが身につけば、その知識やスキルを見込まれて仕事を受けることができるようになっていくでしょう(第一次産業や第二次産業は別かもしれませんが)。
AIエージェントと学ぶ環境では、学習の進捗度と年齢は関係なくなるため、場合によっては小学生や中学生ぐらいの年齢の子どもでも、得意なスキルを社会に役立てているかもしれません。

世界中の人と、気軽に協働できる

AIエージェントとの学習が普及していけば、誰がどんなスキルをどのレベルで身に着けているかが可視化されていき、AIエージェントを通して世界中の仕事の発注・受注をマッチングすることができるようにもなるかもしれません。大きな案件であれば、AIエージェントが自動で仕事を分割し、世界中の人に仕事を割り当てるということも可能でしょう。
仕事のマッチングが実現すれば、「企業に所属して給料を得る」という働き方を選ばずとも、安定した生活を営むことができる人が増えていくでしょう。

4. AI・XR技術を使った教育で生じる可能性のある課題

集団行動や非言語コミュニケーションを行う能力の発達が遅れる可能性がある

AIエージェントとのXR環境での学習では、他者とのオンラインコミュニケーションこそあれど、対面で複数の人と会う機会は必然的に減ることになります。そのため、今まで学校に通うことで養われていた、多様な人格を持つ人々と集団行動する力やコミュニケーションをとる力が養われなくなる可能性があります。そのため、近所の学習者と対面でコミュニケーションする施設として学校は形を変えて残るかもしれません。

シミュレーションは実物には敵わない

XR環境があれば様々な場面をシミュレーションすることができますが、それはあくまでシミュレーションであり、現実の場面とは情報量の多寡が異なります。そのため、画一的な教育の場としての役割を終えた学校(校舎)は、実物を扱うための作業場・実験施設として再利用されていくかもしれません。

5.おわりに

ここまで長々と読んでいただき、ありがとうございました。
私の思い描く未来の教育はざっとこのような感じですが、皆さんの思い描くものと似ていたでしょうか?それとも違っていたでしょうか?
この記事が未来の教育についての議論のきっかけになれば幸いです。

***2024 1/25追記***
最近公開されたアクセンチュアの「テクノロジービジョン2024」でも、AIエージェントや空間コンピューティングについて触れられており、自分の考えはそこまで見当違いではないかも…と感じました。

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