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『ドロステのはてで僕ら』

脚本  上田誠 氏、監督  山口淳太 氏の2020年公開『ドロステのはてで僕ら』

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ドロステ効果とは…再帰的な画像のもたらす効果のこと。あるイメージの中にそれ自身の小さなイメージが、その小さなイメージの中にはさらに小さなイメージが、その中にも…と画像の解像度が許す限り果てしなく描かれる。

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練りこまれた脚本と綿密なタイムテーブルによる「時間SF映画」。まさに”時間に殴られる”ような大作だった。私は名前しか知らなかった、「ヨーロッパ企画」の作品を初めて鑑賞したのだが、この作品でこの劇団にとても魅了された。

私が驚いたのはまず撮影機材がスマホのカメラであることだ。まるで自分もその場にいるかのような、登場人物としての視点がカメラワークとして感じた。

そして、さらに驚いたのは綿密に組まれたタイムテーブルによるコンマ秒にも及ぶような緻密な時間関係であること。この作品は”2分差”という時間が重なり合って様々な出来事自体も折り重なって進む物語であり、少しでもずれてしまえばすべてが崩れてしまう。奇跡のような作品だ。またその緻密で複雑なこの作品をたった7日間で撮影をしたというのに驚きを隠せない(しかも18時から翌6時までと時間制限付きときた、、、)

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~あらすじ~
 ある日仕事を終えたカフェの店長カトウは部屋でギターを弾こうとするが、ピックがどこにも見当たらない。するとどこからか声がするのだ。その声は自室のモニターからの声だった。映っているのは1階にあるカフェにいる”自分”であり、その”自分”はどうやら自分に声をかけているようなのである。

「よう。オレは未来の俺なんだって。2分後の俺なんだって。」

 ”自分”の話によるとどうやら1階にあるカフェのテレビと2階の自室のモニターが「2分」の時差でつながっているようなのである。そんな2分後の”自分”にピックの位置を教えてもらったカトウは「このことを自分自身に教えてやれよ」と”自分”に促されるままカフェのある1階へと降りる。一階につきカフェのテレビを見るとそこには2分前の””自分””がピックを探している。
カトウは未来の”自分”に引っ張られるように声をかけた。

「よう。オレは未来の俺なんだって。2分後の俺なんだって。」

 カフェの店員のアヤ、そして常連客のコミヤ、オザワ、タナベはこの「タイムテレビ」の登場に驚きを隠せないようだ。さらにオザワのヒラメキにより、2階にあるカトウの部屋の「2分後を映す」モニターを一階のカフェに持ってきて「2分前を映す」テレビと鏡合わせでおくことで2分後、そのまた2分後と…先の未来を映すことが可能になる。そう「ドロステ効果」を利用する。というわけだ。そんな「タイムテレビ」もとい「ドロステレビ」を中心に事態が急速に展開し、とんでもないこととなってしまう…

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序盤にも書いたように本当に”時間に殴られる”という表現がぴったりの作品でとっても面白い作品だ。ちょくちょく挟まれる小ネタも面白く、出演している役者たちの演技が素晴らしかった。ぜひともドロステ効果による「時間の暴力」を劇場で体験してほしい。


映画『ドロステのはてで僕らは』公式ホームページ_ヨーロッパ企画
http://www.europe-kikaku.com/droste/

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