『竜とそばかすの姫』
2021年公開細田守監督『竜とそばかすの姫』。『美女と野獣』+『サマーウォーズ』な世界観。特に『美女と野獣』の要素がとても強く感じた。
監督自身も『美女と野獣』に大きく影響をうけているようで自分の原点のような作品であるそうだ。野獣を描いたアニメーターのグレン・キーン氏に監督は会っているようで今作の主人公”ベル”のキャラクターデザインを担当しているジン・キム氏との出会いもグレン氏の影響が大きい。(『竜とそばかすの姫』パンフレットより)ジン・キム氏は『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ベイマックス』など超有名ディズニー作品にてキャラクターデザインを担当している。
映画館で見るべき映画。ストーリーの整合性云々は別として楽曲を聴くだけでも映画館に行く価値がある。仮想世界”U”と映画館の音響、そして楽曲が素晴らしい調和をもたらしている。特にmillennium paradeによる「U」はスネアからのリズミカルな始まり方とボカロのような電子的なサウンドが超カッコいい。そして何より中村佳穂氏のパワフルな歌声と繊細な息遣いがまさに”歌姫”だった。「U」以外も「歌よ」「心のそばに」など心をつかまれる楽曲の数々だ。
~あらすじ~
高知県の片田舎に住む女子高生”すず”。小さいころに母親を亡くし、その出来事から大好きだった歌が歌えなくなってしまい心を閉ざしてしまう。ある日、友人に誘われたのは全世界で50億人以上があつまる仮想世界「U」。すずは”Bell”という名前、アバターで「U」の世界へ。仮想世界「U」では自然に歌を歌うことができた"すず"。”すず”に「U」の世界を案内した親友”ヒロちゃん”のプロデュースにより”Bell”は「U」の世界で圧倒的な人気を持つ歌姫となる。”Bell”の姿でライブをしていたそのとき、ライブのステージに何者かが乱入してきた。その名は”竜”。彼は突然「U」に現れ、闘技場を荒らしていた。「U」の世界で忌み嫌われる彼は皆に追われ、ライブ会場に逃げてきたのだ。”竜”と”Bell”の出会いが2人の人生、そして「U」の世界を大きく変える。
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以下ネタバレ注意
今作の脚本にかなり賛否両論があったようだ。”竜”こと”恵”が父親に暴力を受け、その生放送をみた”すず”はその場所を特定し一人で夜行バスに乗り現地に向かう。実際に”恵”に会い、彼らの父親がやってくるが”すず”の気迫に圧倒され逃げていく。ここで問題になっていたのは一人で夜行バスに乗って高知から東京に向かったことにある。その場には学生だけではなかった。母親代わりのような存在であっただろう合唱隊のおばちゃんたちがいた。彼らは止める側の存在であるはずだ。母親の死の現場に置き換えると彼女らはただの”傍観者”である。キャラクターとして存在する必要性があまりない。
という話をネットで見て確かになるほどと思ってしまう。何かもう少し作品の描きようはあっただろう。まあこの話は置いておいても曲が大好きなのでぜひ見てほしい。そしてあなた自身の目であなた自身の頭で考えてみてほしい。