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熱性けいれんの、本当の怖さ

週末、子どもの体温が37.4度から急激に上昇し、熱性けいれんを起こしたため救急車を呼びました。直前まで普通に話していたのに、急に大きく手を伸ばし、ガクガク震えだした娘を見て「救急車ーーーーー!!」と2階にいた夫に向かって叫びました。

インフルエンザも流行しており、救急外来でも熱性けいれんの子どもが増えているとのことです。不必要に怖がらせるつもりはありませんが、万が一のときに備えて、子育て中のみなさんへ、実体験を交えた熱性けいれんの重要ポイントと本当のリスクについてお伝えしたいと思います。

熱性けいれんが初めての場合は、即救急車呼ぶことをおすすめします。

書籍やインターネットでは「5分経過してから救急車を呼ぶか判断」とか「熱性けいれんなら、ほとんどの場合自然に収まる」と書いてありますが、そもそも発作が始まった時点ではいつ痙攣が収まるか予測はできません。
例えば、5分経過してから「痙攣が止まらない」と焦って通報しても、そこから救急車の到着まで最低でも15分はかかると考えたほうがいいと思います。

実際、今回も119番が混み合っており、まず電話がなかなか繋がらない。さらに家は練馬ですが救急車が周辺におらず、赤羽の方から向かうとのことで時間がかかるため、消防車が先に到着しました。(救急車がすぐ来れない場合、まず消防車が来ることがあります)

消防車の到着から7分ほど経ってやっと救急車が到着。消防隊の方から救急隊へ引き継ぎを行い、病院を決めて、渋滞の合間をすり抜け赤信号をかっ飛ばしても、病院到着まで結局40分以上かかりました。都内で病院が比較的近くにある場合でそのくらいかかるので、お住まいの地域や周辺の医療環境によって状況は異なりますが、手遅れになるリスクを考えると、すぐに救急車を呼ぶべきだと私は考えます。

救急外来の小児科医の先生方も「初めての痙攣の場合は、躊躇せずに救急車を呼んでください」とおっしゃっています。

左右対称か非対称かで原因が判断できる場合があるので、動画を撮っておく。

発作時には子どもの状態に驚いて親がパニックになりがちで、後から医師に「どんな痙攣でしたか?」と聞かれても正確に答えられないものです。もし救急車を呼ぶ人と撮影する人の2人以上いる場合は、子どもを横向きにして気道を確保した上で、動画を撮影しておくと、救急隊や医師への説明がスムーズになります。それでも動揺している状態では、カメラを起動してから動画への切り替え方はわからなくなるし、手は震えるし、当たり前に出来ることができなくなります。(痙攣を10回ほど経験しても、未だに毎回パニックになります。)

救急車を呼んだあとに、「すぐに病院へ行く準備をしなければ」と焦るかもしれませんが、実際には救急車はすぐには出発しません。状況の聞き取り、酸素飽和度の測定、病歴の確認などを救急隊と行ってから受け入れ先の病院を決定し、やっと搬送が始まります。そのため、必要な荷物を準備をする時間は十分にありますので、発作中はできるだけ冷静に子どもの近くで状況を観察するようにしてください。

熱性けいれんでは死なないから。と甘く考えないほうがいい。

私自身、子供の頃に3回熱性けいれんを起こしています。姉も同様だったので、痙攣しやすい体質なのだと思います。
この経験があったため、娘が1歳のときに高熱が出て初めて痙攣した際、「これは熱性けいれんだから少し様子を見よう。救急車を呼ぶほどではないはず。」と考えてしまいました。しかし、5分経っても収まらず、その時点で救急車を呼びました。結果的に、娘の場合はただの熱性けいれんではなく、痙攣重積型二相性脳症という病気でした。

搬送先の救急病院の小児の脳神経専門医でさえ、当初は「なかなか止まりにくいけど、重めの熱性けいれんでしょうね」と判断していました。しかし、痙攣止めの点滴をしても症状は収まらず、1時間ほど経って「ここでは対応できないため、ICUのある病院に移送します」と緊迫した様子で先生も救急車に同乗し、大学病院へ向かいました。結局、このあと痙攣は7時間以上も続きました。

ただの熱性けいれんだったら、「良かった」でいい。

結局、娘はICUに入り、急性期には「命は助かったとしても寝たきりになる可能性が高く、意思疎通も難しくなるかもしれない」と告げられました。7時間、待合室で待機した後、ようやく会えた娘は、体中管だらけで意識のない状態でした。それが3日続きました。

後日撮影したMRIとアイソトープ検査で前頭葉の一部が真っ白に壊死してしまっていることが確認できました。何らかの菌かウイルスが脳に悪さをして脳症を引き起こし、痙攣を起こしたと考えられますが血液検査や髄液検査も行っても、結局原因となるものが何だったのかはわかりませんでした。

幸いにも一命を取り留め、ICUでの10日間と小児科での1ヶ月の入院を経て日常生活に戻ることができましたが、後遺症として「症候性てんかん」と「軽度知的障害」が残りました。それまで1歳で歩き始め、発達もよく、「ママ〜」「おいち」など話し始めていた娘が、座ることもできず表情も乏しい状態まで発達が後退してしまいました。

急性脳症により命を落とす子どもや、重度の後遺症が残る子どももいます。数%という確率は低く聞こえますが、実際にその数%に該当してしまうと、誰にでも起こり得ることだと痛感させられます。

娘は小学校2年生になり支援級に毎日元気に通っています。ただ、やはり今回のように熱で痙攣発作が出やすかったり、疲れや寝不足、ストレスが溜まったり、薬の飲み忘れなどでもてんかん発作で急に痙攣が起きるので、いつも無理させないように気をつけ、ちょっとでも体調が悪かったら旅行の予定もキャンセルするなど万が一を考えて行動しています。これまで、ぼーっとするだけの小さな発作も含めると10回ほど起きていて、そのうち大きい発作のときは救急車を呼んで救急で病院へ行っています。

さいごに

痙攣の原因は専門医でさえ判断が難しいのですから、はじめての痙攣で素人の親が「これは熱性けいれんだ」と判断することなど到底できません。熱性けいれんそのものは命に関わらないものの、その痙攣が本当に熱性けいれんなのかどうかは素人が一瞬の判断で見分けられないということを理解しているだけでも、救急車を呼ぶ勇気になると思います。


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