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【いつも4人】 #942



僕の両親は僕の事を誰よりも愛してくれていた
下に妹や弟も居るが自分でもえこ贔屓なんじゃ無いだろうと思うほどに愛されていた

でもだからと言って下の2人がヤキモチを焼いたりもしない
むしろ2人ともお兄ちゃん子だった
とてと幸せだった

でも大学の時に必要になった戸籍謄本を取った時に自分が養子である事を知った

僕はよその子だった
お父さんとお母さんは本当のお父さんとお母さんでは無くて
妹も弟も本当の妹や弟では無い
という僕の方がニセモノで他の皆んなが本当の家族だった

皆んなが優しかったのは僕以外の皆んなが僕が養子なのを知っていて
それで気を遣っていたんだ
きっとそうだ

僕は無茶苦茶落ち込んだ
僕は何処の子?
誰の子?
本当のお父さんとお母さんは何処に居てるの?
どうして僕を手放したの?

悲し過ぎる

人間を物みたいに捨てるなんて


なんか家に帰りにくい

でも帰る場所はあそこしか無い


なんだかモジモジとコンビニや公園で時間を潰して
夕方遅くに家に帰った

お母さんは遅かったのねぇとちょっと心配しつつ安心しつつ話しかけてきた
お父さんはまだ帰っていない
妹や弟はテレビを観ている


僕がお風呂から上がってきた頃にお父さんが帰ってきた

家族5人でいつものように晩ご飯を食べた
皆んな楽しそうに今日の出来事なんかを話している
まるで遠くの方で話しているかの如く

口数が少ない僕にお父さんは覗き込むようにして話しかけてきた

「おまえ熱でもあるのか?」

「別に無いよ」

「そうかぁ
じゃあ今日はどうしてそんなに元気が無いんだ?
何か嫌な事でもあったのか?
もしあったら話してみなよ」

「うう〜んとぉ
えっとぉ…



実は大学で必要な書類があって
それと一緒に戸籍謄本も出さないといけないんだよ
で今日戸籍謄本を取ってきたんだ」

「うん
それで?」

「それでって
何か察しない?」

「養子の話か?」

「えらくアッサリ言うねぇ」

「えっ
何年か前に話したじゃん」

「聞いてないよ」

「言ったよ」

「だから聞いてないって」

「お母さぁ〜ん
ヤスシに養子の話
何年か前にしたよなぁ」

「うんしたわよ
それがどうかしたの?」

「えっ?
お母さんまで
おかしいよ
僕今日まで知らなかったよ
聞いてないってば
本当にマジで」


「おかしいなぁ…
あの夜の事は今でも鮮明に覚えているよ

お前の本当のお父さんとお母さんの事もちゃーんと話したぞ

そしたらお前は泣き出してな

そりゃそーだよ
俺だってそんな事になっていたなんて知ったらショックで寝込んじまうよ

でもなちゃんと事情を話して
どうしてうちの家に来たのかも話したし
どれだけお父さんやお母さんがお前の事を愛しているかも話したぞ

お前はよその子じゃない
ちゃんとうちの子だ

大丈夫だ」

「でも覚えて無いんだよ」

「お父さん
もしかしたら
ショックで忘れてしまったのかもしれないわよ

もう一度話してあげたら」


「よし分かった
分かったぞ

じゃあなもう一度話するから
よーく聞いてくれ

お父さんたちが大学の同級生だったのは知ってるよな」

「うん」

「でなまだその頃はお付き合いをしていたんだよ
結婚は卒業してからだから
で同じように同級生の仲良しな友達も同じようにカップルが居たんだよ
4人皆んな仲良くてなぁ
しょっちゅう遊びに行ったり旅行に行ったりと4人一緒に居たんだよ

結婚式もな実は合同でしたんだよ

家もすぐ近くに住んでお互いの家を行き来してたんだ

でなその親友カップルに赤ちゃんが出来たんだ
盛り上がったよ

子供が出来たら4人で4人の子供を育てよう
だから子供たち全員が全員の子供だって

お父さんたちも楽しみにしてたんだよ

でもな
お前の本当のお母さんはちょっとだけ身体が弱かったんだよ
ほんのちょっとだけ
だから3人はそんなに心配してなかったのさ

でも可哀想に
本当のお母さんはお前を産んだ次の日に天国に行っちまったんだ

俺たち夫婦は悲しんだよ
身体の一部をもぎ取られた気持ちになった
それと共にお前の本当のお父さんの事も凄く気にかけたんだが
間に合わなかった

フラフラとな通過の電車にホームから落っこちて死んじまったんだ

もう俺たちは泣いても泣いても足りないくらい泣いたさ

でな
親友2人の両親に頼み込んだのよ
この子は俺たちで育てさせてくれって

最初は難色を示していたんだけどな
1人のお父さんがそんなに言うんだったら
お願いしようって言ってくれたんだよ

ほら時々遊びにくる佐野のおじいちゃん居るだろ
あれがお前のおじいちゃんだ

結局皆んな賛成してくれてな
うちの子になったんだ

元々4人皆んなで育てようって言ってたし
生まれてくる子は俺たち夫婦の子でもあるって2人で言ってたのさ

だから最初から本当の息子なんだよ

かけがえのない2人が生んでくれた
かけがえのないヤスシ
お父さんもお母さんもお前を愛して愛して止まないぞ」

「そうだったんだぁ」

「お前ホントに覚えてないの?」

「うん」

「そーとーショックだったんだな
そりゃそうだわな
でもさっきも言った通り
最初から息子だと思ってたから
形こそ養子って書いてるし
確かに血は繋がってないけど
心はずっと繋がってるつもりでいる
今もな
なぁお母さん」

「当たり前よ
本当に4人の最初の子だったからね

あなたは私たちの大切な子供よ
堂々としていたら良い」

「ありがとう
でもまだちょっと
頭が混乱しているよ」

「大丈夫だ
泣きたかったらいっぱい泣け
悩むなら納得するまで悩め
でも間違いなくうちの子だかろな
それだけは分かってくれ」

「うん
ありがとう」



今回はもう記憶は飛ばなかった
ただ普通に戻るまで1年以上はかかった

今は大丈夫
僕のお父さんとお母さんは今のお父さんとお母さん
本当のお父さんとお母さんもお父さんとお母さん

今はむしろ幸せなんだなと思えるようになってきたよ



ありがとう
お父さんとお父さんとお母さんとお母さん
そして妹と弟



ほな!

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