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【フィクション公務員】 #939


市民から電話がかかってきた
異臭がすると
駆けつけてみると古い木造のアパートの一室で腐乱した死体が見つかった

死体は検死解剖したら
手で首を絞められたような跡があった

私は上司にそれを伝えた
すると

「あの男には身寄りはあるのか?」

「いえ調べましたが
近所付き合いも無いですし
身寄りも見つかりませんでした」

「そうか
では自殺で処理しとけ」

「えっ?」

「いいんだよ
仕事が増えるだけだ
こんなのにいちいち付き合ってられるか
分かったな」

「はぁ…」


こうしてこの亡くなった男は自殺で処理された


その頃
市役所では身元を探している女性が来ていた

「あのぉ
ちょっとお尋ねしたいのですがぁ
こちらの市に山田ヤスシという人間は在住でしょうか?
もし居れば住民票を発行してもらいたいのですが…」

「どう言ったご関係の方でしょうか」

「家族の者なのですが」

「一緒にお住まいなのですか?」

「いえ数年前から行くへが分からなくなってて
警察にもお願いしているのですが
私たち家族も独自にこうして探しているのです」

「ご一緒にお住まいで無い場合は委任状が必要ですね
ご本人様からの」

「えっ!

だから あのぉ
その本人を私たちは探しておりまして」

「ご本人の委任状が無いのであればやはり難しいですね
申し訳ないですけれど」

「はぁ…」


女性は諦めて帰ってしまった


この女性の父が先程の亡くなった男性で
しかも今追い払われた市に住んでいた

では捜索願いが出されていた警察署では?

書類は作成したものの情報が寄せられるのを待っているだけで
聞き込み調査などはされていなかった

言い分としては
こんな事でいちいち人を動員して動かしていたらいくら時間があっても足りない


遺体は身元不明のまま焼かれ
引き取り手が無しと判断され
無縁仏として埋葬された

もうこうなると娘さんの手がかりは無くなった
そして犯人逮捕にも繋がらなくなった


娘さんは今でも諦めず
お父さんの写真が印刷されたビラを駅前などで配布して
情報を収集している



ほな!

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