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【クリスマス・パーティー】 #925


児童養護施設に今年もクリスマスがやって来た
毎年近くの老人ホームからおじいちゃんやおばあちゃんが
サンタやトナカイに扮して子供たちにプレゼントを持って来る

プレゼントと言ってもお店なんかに売っているゲーム機とかお人形とかでは無い

おじいちゃんやおばあちゃんがボケ防止も兼ねて手作りした木のおもちゃや編みぐるみが配られた

小さな子供たちは素直に喜んでくれるんだけども
小学生の高学年から中学生辺りの子供たちはやっぱり微妙な空気が流れたりする

ちゃんとありがとうとは言ってくれるんだけどね

コレが高校生辺りになるともうプレゼントをもらう側にはならなくて
おじいちゃんおばあちゃんと子供たちが円滑に交流できるよう施設の先生と一緒にお手伝いしている

此処の施設の子供たちはホントに素直な子供たちばかりだ

でもこの施設も10年前までは結構問題児が多くて先生たちも手を焼いていた

そもそもその頃の理事たちに問題があり子供たちに対するケアも先生に対するケアもあまり考えていなかった
県庁からの天下りで理事長をやっていた人で職務には興味が無かったようだ

問題児に対しても突き放した態度を取るし
それに手を焼いている先生にも職務を押し付け自分は理事室にこもりっきりで
何処に電話してるのか電話ばかりしている
その殆どがゴルフの話だった


ある時に我慢の限界だった先生が県議会議員に現状を伝え相談した
この県議会議員は若いがやり手でお父さんも昔は市長を経験された家で
町では一目置かれた存在だった

彼は正義感の強い真っ直ぐな人だったので問題視して議会に上げてくれた
議会に上げる前にはキチンと目配せしており
同じような考え方の議員を抱き込み加勢してもらった

その結果
児童養護施設に査察が入り日々の日報や電話の履歴調査や先生の聞き取りなどをした結果
理事長は解任された

今後は天下りの温床にならないよう県庁とも相談して
公募による理事長を募集した

それで選ばれたのが今の理事長だ
彼はとにかく熱心で
以前は一般企業に勤めていたが
その前は色んな国々に行っており
海外協力隊でアフリカで活動していた経験も買われて就任した


先生にも子供たちにも耳を傾け
何が気に食わないのか
どうなれば環境が改善するのか
皆んなの意見を聞き話し合った

荒れてる子供たちも最初こそ話し合いをエスケープしたりしてたが
彼の執念に根負けして
同じ席に着き同じ目線で話し合った

彼は出来る事は全て応えられるよう約束し努力した
しかし出来ない事に関しては理由をキチンと説明して納得してもらった

最後まで話し合われたのは門限についてだ
年齢に合わせてできるだけ譲歩したカタチで門限無しではなく門限は守ってもらうよう説得した

少年非行を防ぐ為の理事長からのお願いだった
愛のある人だったので彼女彼らを守りたかったのだ

これまでももちろんあったが守られなかった門限では無く
守れる門限を目指した
理由も話した
とても時間がかかったが
日々の生活の中で新しい理事長の信用度が上がっていき
それならばってリーダー格の男の子が理事長に門限の件について納得したと伝えられた

コレが新しい施設の始まりだった

今でもその子たちは時々施設を訪れている


今日もそうだ
大切なクリスマスのイベントだから
彼らがいつも皆んなの為にケーキを買って来てくれる

今や恒例行事のようになっている


何処かの町の何処かの児童養護施設と老人ホームのおじいちゃんおばあちゃんと卒業生のお話

メリークリスマス



ほな!

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