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【明日だらけの俺たち】 #590


「アニキ俺っもうダメっす」

「バカかお前は」

「どうしてっすか
死んじゃったんですよ」

「生きてたら
いつかは死んじまうんだ」

「だって 
俺…」

「あのなぁ
コイツは元々弱ってたんだよ
仕方ないだろ」

「そんなぁ
一所懸命に世話してたのにぃ」

「しょうがないだろ
そいつ
名前なんだっけ?
公園の隅っこかなんかに
埋めてやれよ

可愛がってたんだろ」

「可愛いがってたけど
俺1人では無理っす
手伝って下さいよ」

「嫌だよ
俺そいつ苦手なんだよ」

「死んじまってるから良いじゃ無いっすか

ってか
最初はアニキも可愛いって言ってたじゃないっすか」

「可愛い?

それはオマエが可愛いか?可愛い?
ってしつこく聞いてきたから
しょうがなしに言っただけだよ」

「ええっ〜」

「ええっじゃないよ
とにかく
ソイツどっか埋めてきてくれ

俺は手伝わないからな」


「もう良いっす
分かりましたよ

僕1人でやりますよ
その代わり
アニキのクルマ貸してもらえませんか」

「なんでクルマがいるんだよ」

「そりゃいるでしょ
貸して下さいよぉ

なんでそんなに薄情なんすか」

「なんだとコラッ」

「なっ殴らないで下さい
痛いっす
やめて下さい

分かりました
分かりましたから
殴るのはやめて下さい」

「チッ
さっさと
ソレとどっか行け」




結局
俺はレンタカーを借りて
じいさんが持っていた山まで来た

ココは個人の山だから
誰も入ってこない

ヤスは1人でソレを運び
山中に埋めた

これで一安心だ




ある日
親父から電話があって
じいさんの山を売ったから
まとまった金が入ったから
オマエにも分けてやるから

連絡があった

どうしてこのタイミングで

高速道路を通すらしく
NEXCOに高値で売れたらしい

ヤスは焦った
あの場所は掘り起こされたく無い


「アニキ
俺ヤバいっすよ」

「何が」

「この間
埋めた山
俺んちの山で大丈夫だと思ってたんすよ」

「で?」

「それを親父がNEXCOに売っぱらっちまったんですよ」

「で?」

「で?じゃ無いっすよ
ヤバいじゃないっすか
掘り起こされたらヤバいっすよ」

「なんで?」

「ええええっ‼︎
なんでって死体を掘り起こされたら
ヤバいじゃないっかっ」

「そうかぁ?」

「そうかってぇ
本当アニキって
いっつも薄情っすよね」

「そんな事ないだろー
こんなにも可愛がってやってるのに」

「可愛い?」

「そうだけど何か?」

「嘘だぁ
普通可愛いかったら
もうちょっと舎弟の俺の願い
いっつも聞いてくれないじゃないっすか」

「そうでも無いけどなぁ
俺が薄情なのは
ソレの件だけだ」


なんて冷たいアニキなんだ
もうアニキの舎弟辞めちまおうかなぁ


ヤスの親父さんが売った山は
数年かけて
高速道路とトンネルが掘られたが
ヤスが埋めたソレとは別の場所であったため
ソレが掘り起こされる事は無かった



ヤスは相変わらずアニキの元に居る

「アニキー
トマトと牛乳買ってきましたよ」

「おおっ
その辺に置いといてくれ」


そして
また毎日
俺たちには
明日がやって来る






ほな!

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