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【昏睡】 #929


クリスマスも終わり 
年末になり
世の中はもうお正月モードだ

しかし
そんな事は僕の知ったこっちゃ無い
僕は周りの人の声は聞こえても
僕は喋れないし
表情も変えられないし
目を開けられないし
カラダを起こすことも
動かすことも何も一切出来ないんだ

ようするに
僕は一般的に植物人間と呼ばれている状態で
カラダ中に管が通り
人工呼吸がつけられ 
死なないように保たれている

こんな状態で延命措置をする必要が果たしてあるのだろうか
僕には分からない

僕の妻や息子たちはどちらかと言うと
僕が早くくたばった方が嬉しいと思う
特別ボーナスが入るわけだから

特別ボーナスというのは僕の遺産を相続すると言うことだ

こんな訳の分からない状態で生きながらえ
毎日膨大な料金が発生しているより
さっさと死んでくれた方が日々のお金の浪費も止まるし
生命保険という素晴らしいお金も入ってくる
そして先に述べた財産分与もある訳だ

僕もそれで良いと思う
こんな事を考えたりしていても
言えない訳だしこの先の奇跡なんて先ずはあり得ない

下手に昏睡状態から目覚めたとして
85歳の僕にどれだけの体力が残っているのか
筋力は落ちリハビリに耐える事など到底無理だろう
せいぜい頑張って車椅子だろう
下の方も自分で管理ができずオムツ生活になるに違いない

そんな事までして生き延びる必要があるのか?


目が覚めた瞬間にカラダが20代に戻っていて
好きなように生きていけるのであれば
それは是非ともよろしくお願いします
だがそんなSFみたいな話は無い

全く持って無い

だから僕はもう良いんだよ

でも声も出ないしカラダも動かないもんだから
それを伝えようにも伝えられない

後は妻や息子の判断を待つしか無い
さっさと延命措置なんて止めてしまえばいいのに
何をそんなに時間をかけているのだ


そう思い込んでいる彼は
交通事故に合い
意識を失い
救急車が到着して
病院に搬送され
次の日に亡くなる迄の数時間の事なのに
自分の中では自分は富豪で妻や息子たちに見守られて何ヶ月も経っているように感じている
彼はまだ20代だ
彼女もいなければ結婚もしていないし
当然だが息子なんて存在も無い

多分
頭の打ちどころが悪かったのだろう



ほな!

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