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【家族の烙印】 #696
私の夫は小学校で教師をしていた
私たちは大学の同級生で大学を卒業と同時に結婚した
子供も娘と息子もでき下の子が保育園に通い始めた時に家計を支える為に以前勤めていた会社にパートに行くようになった
慌ただしく日々は過ぎていき娘は高校生息子は中学生になった
裕福な家族では無いけれど
それなりに楽しい生活だった
そんな幸せを切り裂く出来事が起こった
夫が逮捕された
犯した罪は教え子に対する性的虐待
頭が真っ白になった
うちの夫に限ってそんな事はあり得ない
ニュースでもデカデカと実名で報道された
私たち家族は一気に地獄へと叩き落とされた
パート先の会社からは少しの間は仕事を休むようにと連絡があった
娘と息子の学校からも同様の連絡があった
家の外には報道関係者らしき人が数人
家のベルこそ押してくる人はいなかったが近所迷惑になる
ただ出て行って帰るよう言ったところで逆にカメラとマイクが向けられるに違いない
そう思うと怖くて出る事ができない
カーテンは全て閉め切り見えないようにした
テレビをつけたら自分の家が映っていた
プライバシーも何も無い
数日で報道関係の人は居なくなったが何処で調べたのか知り合いなのか知らない人なのか
固定電話も携帯電話も鳴りっぱなしだったので固定電話の線は抜き携帯電話も電話帳以外の電話の着信拒否
SNSもフォロワー以外閲覧禁止に変更
娘と息子には気をつけるようには伝えたが強制はしなかった
娘はパパっ子だったので部屋にこもったまま出てこない
息子はデリケートな年齢だから心配したが意外と冷静でむしろ私や姉の事を心配してくれた
犯罪者になった父に対しても配慮のある言葉を並べる
私自身は夫に対して怒りしか無かったが息子の言葉でやや冷静さを取り戻した
しかし大変だったのはそれからだった
パート先の会社は解雇された
理由は当然ながら夫が原因である
娘は高校に行ったら酷いイジメにあって行くのをやめてしまった
担任の先生にも相談したらしいがあまり取り合ってくれなかった
改めて私が学校へ電話すると担任の先生から言われたのは娘さんが来られる事で風紀が乱れるので学校としては困っていると言われた
何を言っているのか
情けなくて反論する気持ちにもならず電話を切った
酷過ぎる娘は関係ないのに
息子は最初から登校は諦めており中学の転校を色々ネットで調べている
私は極力外出は控えわずかばかりの貯金を切り崩しをしながら数ヶ月生活をしている
義理の両親からさ謝罪をされたが私たち同様に関係ないので不憫に思った
私の母は実家に帰ってこないかとも言われたが私たちが帰ることによって迷惑をかけてしまうのは目に見えていたほで遠慮した
正直この数ヶ月間で私は精神的にすっかり追い詰められてしまい出口など無いのだと落胆していた
そんな時に息子からノートパソコンの画面を見せられた
加害者家族のサポートをしてくれる団体のホームページだった
いちばん若い息子が一番しっかりしている
私は相談窓口に電話した
今までの思いやこれからの心配事も話せる事は全部話した
全部受け止めてくれた
そこで焦点となったのは日本人の感覚の事だった
日本は連帯責任の風潮があり犯罪者そのものと犯罪者家族も反省し謝罪しないと許してもらえず
謝罪の仕方が気に入らないと叩く
昔と違い今はインターネットやSNSがあるのでプライバシーを侵害され易いしそのスピードも速い
ただ担当して下さった人が言うには自分たちで溜め込み過ぎない事と既に数ヶ月が過ぎており事件を忘れた人の方が覚えている人より多いので心配し過ぎない事
それから可能なら引っ越しとSNSを続けるのであれば今のアカウントは凍結して新たに作る
メールアドレスやできれば携帯電話も新しい電話番号で買い替える事をススメル
それでも攻撃してくる人が居るならば民事訴訟も検討しサポートもして下さる
電話を切って身体がスッと軽くなったような気がした
連帯責任この言葉は本当にその通りだなと思った
確かに昔観たニュースで殺人犯のお父さんに取材した時の映像で
「俺は息子を信じてるしやっていないと思っている
もうええやろ帰れ帰れ」
凄く不機嫌な態度のお父さんの映像を観てなんだかイラッてした自分を思い出した
私自身も事件前は同じような考え方だった
今は違う犯罪者の家族には連帯責任は無いしむしろ支援が必要である
後で知ったが私が相談したような犯罪者家族の支援組織は日本にまだ3カ所しか無いという事だった
日本人は犯罪者家族の支援の必要性を感じていない
ほな!